裏切りの館、再戦
――イベントフィールド――
ログインすると、リョウマと若葉さんが待っていた。
「おう、イゾウ。ちゃんと宿題したが?」
「ばっちりだよ。午前中頑張ってたからね」
珍しくやる気を出した僕は、朝から机に向かった。
毎日やる気が出ればいいんだけど、そうもいかない。
やる気スイッチが何処にあるのか分からないのだ。
出現位置はランダムだと思う。中々見つからないからね。
「あの、ごめんなさい! 私また逃げちゃった……」
「いいよ、気にしないで。またこうやって三人揃ったんだからいいじゃない」
「うむうむ。誤解も解けて元通りぜよ。わしらの絆はこれくらいじゃ壊れんき」
「それにしても中々手ごわそうだね。とりあえず歩きながら作戦を考えよう」
僕達は作戦を練りつつ、裏切りの館へと向かった。
「イゾウ様、リョウマ様、若葉様。本日は我が屋敷にお越しくださり、誠に感謝申し上げます」
館に入り、昨日と同じように話を聞いていく。
「無事クリアした暁には、ささやかな賞品もご用意しております。それでは皆様、それぞれのお足元にございます魔方陣の中へお入り下さい」
魔方陣に入る。僕は変わらす、武器使用不可。
若葉さんの方を見ると、やはりサイレントらしい。
両手をぶんぶん振っている。
「ふむ、やはり同じぜよ。スキルがつかえんき」
「仕組みは分からないけど、多分変わらないんだと思う。まぁ今回は大丈夫だよ、ね、若葉」
ビシっと親指を立てて、若葉さんが笑う。
今度こそクリアしてやる。
そう心に決めて、僕達はドアを開けた。
――食堂――
食堂に入り、席に着く。
やかましいNPCが現れ、僕達の前で立ち止まる。
「いい加減こいつの声も聞きとうないぜよ。うるさいおばはんじゃ」
「あはは。確かに、うるさいおばさんだ」
「パンとライス! あんた達はどっちにするの!?」
NPCの合図と共に、テーブルの上に二枚の皿が現れる。
リョウマと僕は普通にライスを選択。
若葉さんがこっちを見ながら、目の前のパンに指を指している。
「そっちは偽物じゃ。左ぜよ」
リョウマの言葉通り、左のライスに手を伸ばす。
「あら。あんた達分かってるじゃない。ああ良かった、これで楽出来るわ」
そういうとNPCは戻っていき。
どこからか鍵の開くような音が聞こえた。
「お、成功したが?」
「みたいだね、やっぱり若葉はサイレントだけじゃなかったんだ」
若葉さんにはサイレント以外に幻惑もかかっている。
話を聞いて、僕達はそう確信した。
それなら僕達の偽物が見えるのも納得だった。
「仕掛けさえ分かれば怖くないさ。さぁどんどん進もう!」
若葉さんが、手を突き上げて返事をする。
彼女の楽しそうな顔を見て安心した。
昨日みたいな寂しそうな顔、あまり見たくなかったから。
――図書室――
中に入ると、昨日と同じ様にNPCが現れた。
「おお、君達いい所に。いや、大事な本を失くしてしまってね。良かったら探すのを手伝ってくれないか?」
「自分で探せばよか」
「リョウマ昨日もそんな事言ってなかったか?」
「そうかもしれん。ところでここはどうするが?」
「ここはとりあえず探すのは若葉に任せて、僕らは後ろを着いていく感じにしようと思う」
多分僕とリョウマには本は探せない。
彼女だけしか見えないんじゃないか、僕はそう考えた。
「ふむふむ。じゃあとりあえず若葉頼むぜよ!」
敬礼する若葉さん。
ラジャー、みたいな感じなんだろうか。
声を出せないからジェスチャーを使う。
これもこれで中々可愛い。
「違う、違う、違う、やはり偽物だらけみたいぜよ」
若葉さんが次々と本を手に取る。
やはり彼女には光って見えるらしい。
リョウマの合図でそのまま床に捨てていく。
一緒に回る事で、いちいち見せに来る必要も無い。
僕達は次々と本を捨てていった。
「ううむ、見つからないぞイゾウ。何かやり方が違うんじゃないか?」
しばらく回るが、一向に見つかる気配が無い。
僕達は一度足を止め、少し考える。
「うーん。困ったな。どうすればいいんだろう」
その時、若葉さんが掌をポンと叩いた。
「お? 若葉何か思いついたが?」
首を縦に振ると、両手を広げて僕らに突き出した。
「待っててっていう事かな?」
うんうん、と頷き、彼女はどこかに行ってしまった。
しばらくして戻って来た若葉さんの手には、一冊の光る本。
「おお! それじゃそれじゃ! よう分かったのう若葉」
腰に手を当ててドヤ顔だ。
でも何で分かったんだろう。
手を叩くフリをして、若葉さんが何かを伝えようとしている。
そうか、そういう事か。
「これは偽の僕に叩かれた本だね?」
彼女が首を大きく縦に振る、やっぱりそうか。
「どういう事せよ?」
「偽者が本に触ってから発動するイベントなんだよ。多分それまでは絶対見つからないんだ」
「そういう事じゃったんか、意地の悪いイベントじゃのう」
確かに、こんなイベントとてもじゃないけど僕には思いつかない。
一体誰が考えたんだろう。
クリアした後で聞いてみようかな。
「次は鏡の間だけど、大丈夫?」
いよいよ次は問題の部屋だ。
僕が若葉さんに尋ねると。
大丈夫! 任せて! と言わんばかり。
彼女が力強く親指を立てる。
これなら大丈夫そうだ。
「偽者なんかガツンと金玉蹴飛ばしてやればいいぜよ!」
僕はたまに、リョウマの中の人が女だって事を忘れる。
初めて会った時だって、完全に男だと思ってたし。
あまり怒らせないようにしよう、ゲームでも、リアルでも。
股間を蹴飛ばす仕草をするリョウマを見て、僕はそう心に誓った。




