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私の物語を奪った偽ヒロインへ――本物の結末を教えてあげる  作者: 橋守 六花


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22/24

番外編 看病は聖女が来るまで

今日は一話のみアップします。

「い、い、いま、アイビー様が、せい、せい、聖女様を、つれて参りますのでー」

「落ち着けサキ、医者もそこまで酷くないといっている、俺たちにできる事は看病すうことだけだ」


 リラが風邪をひいてしまった、結婚式の日付も決まり、慌ただしい日々の中疲労が溜まってしまったのかもしれない。

 医者の判断ではそこまで深刻ではないというものの、苦しそうに顔を歪めながら寝ている姿は見ていられない。

 とはいえ、慌てていてもどうしようもない、スズナに治療を依頼するべく、アイビーをルーシュ国へ派遣中だ。


「幸い今日の公務は終わっている、このまま俺が看病するから、サキは起きた時に、食べられそうなものを準備しておいてくれ」

「いえ、デルフィ様に移ると行けませんので、看病は私が」

「いや、言い方が悪かった……どうかリラの側にいさせてくれ」


 その懇願にサキはハッとした、リラを溺愛するデルフィが不安なわけがない。


「……かしこまりました、デルフィ様も無理なされないでください」


 そう言ってサキは部屋を出て行く、デルフィはリラを見つめながらぽそりと呟いた。


「……いたいの、いたいの、飛んでいけ」


 幼少期に病弱だったデルフィに、リラがずっと唱えてくれていた呪文。

 デルフィは能力者でもないし、その呪文で病気が治るわけではない。

 しかし、リラの呪文で幼い頃に心の支えになったのは事実、


「いたいの、いたいの、飛んでいけ」


 子供をあやすように、頭をなでながら呪文を唱えていると、眠っているリラの呼吸が荒くなっていく。


「うっ、うぅ」

「リラ? 苦しいのか?」


 病状が悪化したのかと不安になるが、リラの口から漏れるのは。


「リラ、は、ここです…私、が、リラっ……本物のっ」

「っ」


 うなされる言葉にデルフィの心が締め付けられる、リラが見ている夢は。


(俺がマリーを婚約者にしたときの夢だ)


 全て解決してから、二人仲良く穏やかに暮らしていたが、そう簡単に傷は消えないだろう。

 デルフィは騙されていたとはいえ、その当時リラにとっては加害者だった。


「リラ、リラ……」


 名前を呼びながらリラの手をにぎると、少し息が整ったような気がした。


「リラ、もう大丈夫、もう間違えないから……俺の愛するリラは、君だけだ」


 優しく声をかけてぎゅっと手を握る、そして祈るように呪文を唱える。


「いたいの、いたいの、飛んでいけ……いたいの、いたいの、飛んでいけ――」

「デルフィ、ありがとう」


 その声に顔を上げると、リラが目を覚まし、優しく微笑んでいる。


「リラ!」

「心配かけてごめんなさい、デルフィ」

「謝ることではないだろう、まだ体調は治っていないんだから」


 確かに目を覚ましているが、まだ汗をかき呼吸は荒い。


「デルフィの呪文で、すぐ元気になれそう」

「いや、俺にそんな能力はないさ」

「でも私には、とても良く効く薬だわ」


 早く元気になってほしい気持ちと、いとおしい気持ちがふくれあがる。

 そして心に、棘のように刺さる罪悪感。


「俺が、愛しているのは、リラだけだ」

「え?」

「もう、誰かと間違えたりしない……ずっと側にいる」

「デルフィ…」


 その言葉に頷き、リラも嬉しそうに。


「はい、私も同じ気持ちです」


 と答える。

 つながれている手、見つめ合う二人。

 言葉はなくとも気持ちは同じだと、今なら断言できる。

 その証拠にどちらともなくお互いの距離が縮み……。


――シュン


「リラ様-、デルフィ様に風邪移りますよー」

「あー、瞬間移動の場所、間違えたー」


 のんびりとしたスズナの突っ込みと、こうなることが分かっていたようなアイビーの白々しい台詞。

 突然現れた二人に思わず飛び退き、顔を真っ赤にさせながら、デルフィはベッドを離れる。


「えー、こほん、ルーシュ国の聖女よ、どうか、リラ王女を助けてほしい」

「この状況でかしこまるのは、無理があるかと」


 アイビーの突っ込みに、口をへの字にして黙るデルフィ。

 ますます熱が上がってしまうリラは、汗がかなり噴き出している。


「えー、このままだと恥ずかしさで、症状が悪くなりそうなので、すぐ治しますね。

 あと、デルフィ様も風邪が移らないように予防接種しましょう」

「へー、そんなことも出来るんですか」

「私も知らなかったのですが、イリスが旅立つ前に教えてくれたんですよ」


 アイビーの質問に嬉しそうに答えるスズナの会話に、何もしゃべれないリラとデルフィ。

 お互いをちらちら見ては、顔を真っ赤にさせる二人だった。


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