43 地図の示す先は……
「あっ、地図の動きが止まったよ」
ノリスがバンパイヤゴーストを倒した余韻に浸る間も無く、俺らは移動する地図を追いかけていたが、ようやく動きが止まったみたいだ。
地図からはまとっていた光が消え、地面に落ちていった。
「ここが目的の場所?」
これまでの森の中と何も変わりない、目立ったものもなく、人影も見当たらない場所だ。
本当にここが目的地なのか?
キエルに騙されたんじゃ……
「ここにヤマトおにいちゃんが来るのかな?」
「でもなんでらこんな何もない場所を……? ねぇシュトロイドホリーク=バロン、他の場所と匂いとか違いは感じる?」
「ガゥゥ……」
チキンベアは申し訳なさそうに首を傾げた。
どうやら何も感じられなかったらしい。
ここで、待っていろってことでいいのか……?
「ここの周辺をもう少し探してみるか……」
もしかしたら、本当にヤマトが来るのかもしれない……
あてのない捜索が始まった……
ただでさえ暗くて先も見えづらい場所で、何を探せばいいのかも正直わからない。
何ならキエルにもう一度ここで何をすればいいのか聞いた方が早いんじゃないか。
「この森、デコボコだったり、大っきい木の枝がジャマで歩きづらいね……」
「ヤマトおにぃちゃんなんでこんな所にいるんだろね」
「薄暗くて嫌な場所だね……、またモンスターに襲われそう」
「そしたらまたノリスおねぇちゃんが倒してね!」
「ノリスおねぇちゃんかっこよかった!」
フランとセリルはバンパイヤゴーストを一撃で見えなくなるまで吹き飛ばしたノリスの強さに感動していた。
「私もまさか、あんなことできるなんて思ってなかったんだけどね……」
ノリスがこんな力を手に入れるなんて、正直意外だった。
チキンベアには能力の向上はなかったみたいだったけど、よく考えれば、テイマーが強くなったところで、テイムしたモンスターがそれに合わせて強くなるわけじゃないもんな……
ノリス自身も驚いてたけど、強くなってくれたのは今後の事も考えると有難いことだ。
それにしてもノリスのテイムしたモンスターじゃなくて、ノリス本人が戦力の頭数になるなんて、変な感じだ……
「あれ、フラン? フラン〜!」
セリルがフランを探しあちこちを見渡している。
「えっ、フランはほんのついさっきまで、そこにいたはずだよな?」
特に目を離していた訳じゃない、連れていかれたにしても人の気配とかも何もしなかったぞ……
「あれ、シュトロイドホリーク=バロンもいなくなってる」
ノリスか何度も呼びかけるがチキンベアの返事がない。
チキンベアまで、いなくなった……
まさか、ヤマト……!?
「気をつけろ、狙われてるのかもしれない!」
「待って! ロジカおにぃちゃん、ちょっとこっち来て」
なにかあったのか?
俺とノリスはセリルのいるところまで行ってみた。
「ここ、空間が歪んでる……」
セリルが指をさす場所をよく見ると、その空間の空気が蜃気楼のようにゆらゆらと揺れている。
人の大きさくらいのサイズはある、空間の歪みだ。
フランとチキンベアはこれに飲まれたのか?
セリルが木の棒をその空間に近づけると、空間に触れた木の棒は消えた。
「なにこれ」
セリルは驚き、木の棒を引き戻すと、木の棒は元のサイズに戻った。
「この歪みは別の場所に繋がってるのか?」
キエルはここを伝えようとした……?
「キエルって人が信頼できる人なら行ってみるべきだよね」
「うん、キエルさんはいい人だけど……どこに繋がってるんだろ……」
この先にヤマトがいるのかもってことか、いきなり戦闘になるかもしれない……
「フランと、シュトロイドホリーク=バロンが心配だ、急ごう」
まずは顔を入れて様子を見てみるか……
歪んだ空間に顔を入れてみた。
顔を入れた瞬間に太陽の光が差し込んできた。
眩しい……
「ロジカおにいちゃん!」
「ガウ!」
フランとチキンベアの声だ。
目が慣れてきた。
「えっ……街?」
知らない街だ……
舗装された道に、家が立ち並んでいる。
それぞれに手入れが施されていて、現在も生活をしていそうな雰囲気だ。
森の中に見えない街がある……?
なんだこれ……
驚いていたら、全身街の中に入ってしまった。
「ここ、どうなってるんだろうね……なんでこんな場所に街があるんだろう」
森の奥にこんな場所があったなんて、知らなかった……
「普通の街? 何ここ?」
「フラン達もいた、よかった」
ノリスとフランもこっちに入ってきたみたいだ。
理由はわからないけど、ここに街がある事はわかった。
「ノリスも聞いた事ないよな? こんな所に街があるなんて」
「うん、知らない、初めて見たよこんなところ」
距離だけで言えば俺が今まで住んでた街からさほど離れてない場所にあるはずのところなのに、聞いた事ないぞ……
「誰か来るよ!」
俺らのいるすぐ近くにある家のドアが開いた。
隠れる場所もない、ドアが開き中から人影が現れる。
「!?」
家のドアから出てきたのはモンスターだった。
リザードマンだ、Dクラスのモンスターだ。
人間と同じように家に住んで生活してるのか?
いきなり鉢合わせたが、こいつは襲ってくるのか!?
「おっ、なんだ迷い人か?」
……拍子抜けするくらい穏やかな話ぶりでリザードマンは俺らに話しかけてきた。
闘いになるような感じではなさそうだな……
「お、俺達は人を探しに来たんだ」
リザードマンは何の不思議もなさそうに俺らと会話を続け出した。
「そう言う奴たまーに、いるんだよなぁ、お前ら人間だろ? ここに人間はほとんどいないぞ」
人間はほとんどいない……
言ってる本人がまずリザードマンだからな、説得力はあるな。
よく見ると街のあちこちに住人がいるが、確かにみんなモンスターだ。
だが、みんな俺達人間を見ても気にもせず、普通に通り過ぎたり、無視していく。
「なんだここ……?」
「キエルさんに聴いたことあるよ、この世界のあちこちモンスターばかりが住んでる街があるって」
そんな場所がこんな近くにあったなんて……
ここは、モンスターが住んでいる街だってことか。




