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観察

俺達はゆっくりと移動を始め、マルの兵士達がいる場所に移動を始めた。

しかし、道中で見失ってしまい、位置を把握できなかった。

仕方ない、合流は不可能か、でも、出来る限り接近した。


「はぁ、見失ったか」

「すみません」

「いや、気にすんな」


まぁ、致命的な失敗というわけじゃないし、問題は無いだろう。

敵にバレるよりはマシだろう。


「うぅ・・・・頭痛い」

「あ、起きたか」


さっきまで意識を失っていたマルが目を覚ました。

結構目が覚めるのに時間が掛ったな。


「あ! お父さんとお母さんは!?」

「悪い、見失った」

「そんな!」

「でも、無事なのは確かだ、そこは断言できる」

「はぁ、良かったぁ」


完全に見失ったとは言え、撤退したのは確定だからな

それなら、襲撃は食らわないことだろう、向こうも

下手に追撃を仕掛けて戦力を削ぐなんて愚策は取らないだろう。

それに、日も落ちてきて暗いし、この状態だと奇襲も食らう可能性が高くなるだろうしな。


「今回はここで休憩としよう」

「そうですね、少し身を隠して休みましょう」


俺達は大きな木が生えている場所に移動して、テントを張った。

都合良く大きな木があって助かったな、ここなら向こう側から見えにくいだろう。

元々、山の中で張ってるわけだから見えにくいが、念の為にな。


「それじゃあ、料理とかの準備は頼む、俺は情報収集してるから」


俺は狙撃銃を出し、アルルにそう告げた。


「分かりました」


あいつの了承の言葉を聞き、スコープを除いて敵国の方を除いた。

位置が動いたからか、結構鮮明に敵の基地が分かる。

上手くやれば狙撃できるかも知れないな、場合によっては撃ってみるか。


「さて」


基地の方を見てみると、多数の兵士達が広場にならんでいる。

何かの召集なのかも知れないな、とりあえず暗視にして倍率も上げて観察してみるか。


「良いか、いつ襲撃が来るか分からない以上、警戒は怠るな」

「は!」

「分かっているな? 貴様らに休む暇など無いのだ、寝ずに食わずに警戒を続けろ」

「そんな! いくら何でも!」

「意見は許さぬ、休む暇など無いと自覚せよ」

「く!」


うーむ、随分と厳しい指揮官様だね、普通にそれは効率が悪そうだけどな。

兵士達の士気も確実に落ちるし、忠誠心も絶対に落ちることだろう。

集中力だって絶対に下がるし、どう考えてもマイナス方面が強い。

ただ、1つ気になっていることとして、この間に魔道兵が動いていないことだ。


「しかし、何故我々に休みはないのですか?」

「警戒の範囲が広いのだ、魔道兵も子供が操る兵器、今はフル稼働しすぎて動いていないな

 全く、あの程度の活動で魔力切れなど、所詮は敗国の兵士だ、故に貴様らには働いて貰う」

「ち、クソガキめ、役に立たねぇな、所詮はガキか」


・・・・魔道兵を見張りに配備、多分あそこだけじゃなく複数だったんだろうな。

それを何時間もの間稼働させていた、だから魔力切れか。

無理をさせすぎた結果、最高の戦力を失う、あげく自分達の落ち度をその子に押し付ける

駄目だな、指揮系統がまるでなってない、部下の状況を把握してないと言う事か。

まぁ、俺も人の事を言える立場じゃないけどな、冷静さが欠けると見れなくなるし。


「・・・・ふーむ」


しかし、この状況でマルの国の兵士達が襲撃を仕掛ければ有利になりそうだな・・・・

いや、あいつらの考えからしてみて、そんな事になれば魔道兵を扱っている

マルの友達を無理矢理動かし、命を削って戦わせる何て手を取りそうだな。

そうなれば、最悪の場合その子は死ぬ、兵士としてはその方が良いんだけどな

相手方の最高戦力の一角が崩れるんだからな・・・・だが、人間としてはあり得ない。

無理矢理操られている女の子を過労死させる何て手を打つわけにはいかないし。


「・・・・・・」


俺はそんなことを思いながら、会話の続きを聞くことにした。


「さて貴様ら、散開だ、休む暇は無いぞ、もし仮に休んでいるような愚か者を見付けたら

 報告するように、報告した場合、その物には褒美を与える」

「え!?」

「そして、報告された者は・・・・処刑だ、以上」


横暴だな、確実に恐怖で部下達を拘束するヤバいタイプだ。

確かにそう言う手を取れば兵士達は指示に従うだろうが

忠誠心などは出て来ないだろうな、反感の気持ちしか出て来ないに決まってる。

こんなんじゃ、いつか滅ぶだろうが、短期的には効果的か。

そもそも、催眠術系の魔法を扱える奴が居るんだしな。


「横暴すぎる」

「いや、そもそもこれは・・・・むしろ好都合だな」

「何処だよ」

「馬鹿な奴だ、これはチャンスさ」

「だから、何処がだよ!」

「耳を貸せ」

「あ?」

「これは、気に入らない奴を・・・・」

「は! そうだな!」


うーむ、なんて言ったんだ? だが、聞えた所から考えてみて、陥れるかな。

気に入らない奴がサボっていると嘘報告すれば、そいつが処刑される訳だからな。

しかし、そんな発想が出てくるとは、かなり荒れてるな。


「ふーむ、やっぱり恐怖政治の反動という感じか」

「何か言いましたか?」

「あ、いや、何でも無い」


まぁ、こちらとしては敵の戦力がそれで減るわけだから別に良いんだがな。

完全にあのやり方の反動だから、確実に自業自得としか言えない。

だが、兵士達には落ち度はないが・・・・まぁ、あれだ、運が悪かったという事か。

それから、全体に指示を与えていた男は兵士達が解散したところを見た後

後ろの方の建物に移動していった、よし、あの男を追いかけてみるか。


「ん?」


あの男が建物に入った直後、なにやら小さく黒いローブを羽織った感じの緑髪の人が見えた気がする。

しかし、すぐに建物の中に入っていき、その姿を正確に捉えることは出来なかった。

だが、追いかけていると2階のガラス辺りに2人の姿が見えた。

やはり、一瞬だけ見えた姿は当たっていて、小さな身長で黒いローブに身を包んでいる

髪の毛の色も緑色だった、もしかしたら、あの小さい子が催眠術の魔法を操ってる奴か。

もし、ここで俺が引き金を引き、あの子を撃ち抜けば催眠術が解除されるはずだ。

だが、相手は子供・・・・いや、やるしか無い! ここで動揺していて多大な被害が出るくらいなら

心を鬼にしてでもあの子を撃ち殺す! 俺は覚悟を決めて、引き金に指を伸ばした。


「あら?」

「つ!」


俺が引き金を引こうとした直後、女の子がこちらの方に顔を向けた。

俺はその一瞬で反射的に身を隠した、そして、その一瞬に見えた顔は幼く一気に殺意が削がれた。

あんな子が催眠術の魔法で色んな奴らを操ってるのか? うぐぅ、分からん。

とりあえず、どうしてこっちを見てきたのか知らないと、俺は僅かに狙撃銃を出した。


「どうした?」

「いえ、なにやら変な気配がしたので」

「何処からだ?」

「あの木です」

「・・・・ふ、馬鹿か、そんな距離で何が出来る、気にしすぎだ」

「そうですか、殺気の様な物を感じたんですが・・・・自意識過剰すぎましたか」

「そうだ」


どうやら、あの子はかなり堪が鋭いらしい、殺気なんて物を感じるなんて。

だが、警戒はそこまでしてないはず、今のうちに狙撃を・・・・ちぃ。

折角のチャンスを逃した、2人はガラスがない方にまで移動していった。

さっきの会話を聞いてたときに撃てば良かったか。


「リオさん、先ほど変な動きをしましたけど、どうしてですか?」

「あぁ、敵の基地を見てたんだが、妙に堪が鋭い奴が居てな焦って隠れたんだ」

「かなりの距離ですよ? 動いている相手を見付けるならまだしも、動いていない

 リオさんの位置に気が付く程の観察能力なんて」

「いや、バレたわけじゃない、ただ堪が鋭くてな

 と言うか、お前ならこの距離でも何か動いたら分かるのか?」

「はい、これ位の距離なら派手に動いてたりする相手だったら」

「夜だぞ?」

「まぁ、夜は難しいですね、流石に双眼鏡がないと」


だが、結構暗いのに双眼鏡があれば見ることが出来るとかヤバすぎだろ。

俺だって倍率上げて、かつ暗視スコープじゃないと分からないのに。


「相変わらず、化け物みたいに目が良いよな」

「視力は私の最大の武器ですからね、それに、眼力を鍛えればもしかしたら服も透けて!」

「見えるわけ無いだろう、幼稚な発想しやがって、子供か?」

「こ、子供に幼稚と言われるなんて、まぁ、リオさんなら問題ありませんね」


まぁ、子供だし、実際子供に幼稚と言われたら相当だって事だしな。

ただ、俺は見た目だけだし、普通に幼稚と言うけど。


「とりあえず、眼力を鍛えたところで服は透けない、と言うかそれは妄想が視野に影響しただけだ

 そんな風になったら、確実に脳に障害が出てるって事だな」

「そんな、夢も希望もないことを言わなくても」

「そんなくだらない物に夢と希望を抱くな」


やはりこいつの発想は幼稚で行動とかは変態親父だな。


「いやぁ、容赦の無い否定ですね、まぁ良いです、ご飯の準備もある程度完成したので

 こちらに来て休んでてくださいね、今日も動きっぱなしでしたし」

「そうだな」


俺はアルルが張ってくれているテントに入り、休む事にした。

それにしても、あの女の子、能力が未知数で厄介だな。

かなりの勘の鋭さ、どんな魔法を扱うかは不明、恐らく催眠系だが

問題はどうやって催眠術に掛けるのかだ。

もしも接近した相手を指定して催眠術に掛けれるとしたら

接近しただけで操られる、だとすると撃破できるのは遠距離攻撃のみと言う事になる。

だが、普通はそんな攻撃手段はない、もしこの推測通りに催眠術を掛ける奴だとすると

この催眠術系の魔法は最強レベルの魔法と言う事になるか。


「・・・・うーむ」


俺はこの推測を忘れないために、軽く紙にメモを書いた。

これを忘れてしまうと、下手に突っ込んで催眠術を食らう

何てことになりそうだしな。


「はい、ご飯が出来ましたよ」

「あぁ、出来たか」


それにしても、本来は偵察の為だけに来た筈なんだが、なんで殲滅しようと思ってるのかね。

まぁ、それしか選択肢がないからなんだけどな、マルの両親が来てるって言うのに

それを無視して撤退、何てしたらマルに殺されそうだし。

俺はそんなことを思いながら、アルルの作った飯を食った。


「おい、この鶏肉みたいな肉は何だ? 鶏なんて捕まえたか?」

「あぁ、それは蛙のお肉ですよ」

「な!?」

「美味しいでしょう?」

「か、かか、蛙のお肉って!」

「蛙のお肉は鶏肉の味、美味しければ良いじゃ無いですか、お腹も壊しませんよ」

「まぁ、美味しいのは認めるがな」

「サバイバルで贅沢言わないでくださいね」


まぁ、サバイバルだし仕方ないな・・・・むしろ食えるんだしありがたいと感謝するべきか。

さて、本格的に行動を始めるのは明日だな、マルの両親達がどう動くか・・・・そこが重要だな。

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