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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 一章・王国の危機 「8.パカロンのお城」

夕方、オリバーはローズの魔術の訓練を終え、買い物をした後で宿の中に帰ってきました。ローズが少し元気がないところをみると、あまりうまくいかなかったようです。

夕方、オリバーはローズの訓練(くんれん)を終えた後に買い物を()ませ、宿の中へ入ってきました。



「あ、先生。お疲れ様です。」



ハンスがオリバーに声をかけました。



「ああ、ただいま。アリスたちはまだ帰ってきてないか?」



「そうですねぇ…。帰ってませんね。」



ラルフが首をかしげました。



「ローズの魔術(まじゅつ)はどうだったんですか?」



ペーターがたずねると、ローズは(だま)ってうつむきました。マチルドがニヤニヤしながら言いました。



「いやもう、笑ったぜ!何だか知らないけど、間違(まちが)って魔獣(まじゅう)召喚(しょうかん)しちまったんだよ。あたいがとっさに短剣(たんけん)で倒してなかったら、みんな死んでたね。」



ローズが(だま)ってマチルドを蹴飛(けと)ばしました。



「こ、こいつーっ!」



ローズとマチルドはいつものようにつかみ合いを始めました。オリバーは苦笑いしました。



「はは、こうなったらもう収拾(しゅうしゅう)はつかないな。俺はエミリーの様子を見てくるよ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーは階段(かいだん)を上り、エミリーの部屋の扉をノックしました。



「エミリー、調子(ちょうし)はどうだ?」



「はい、苦しみの(なみ)もしばらく前から起こってきません…。(ねつ)も下がったようです。」



エミリーの声はいくらか()れやかです。



「声も元気そうだ。よかったな。さっき市場(いちば)でいい野菜を手に入れてきたんだ。アリスもそろそろイザベルのところから帰ってくるはずだし、もし可能であれば下に来て料理を作るのを手伝ってくれないか?」



「はい、わかりました。」



エミリーが扉を開けて出て来ました。蒼白(そうはく)な顔ではありますが、元気そうです。



「皆さんに迷惑(めいわく)をかけてしまいましたから、今晩は(わたくし)(うで)によりをかけて料理をつくるとしましょう。」



「はは、無理はするなよ。」



「心配はご無用ですよ。…あまりオリバーさんに親切(しんせつ)にしてもらうと、お姉さまやローズさんに嫉妬(しっと)されそうですね…。」



「ん?何だって?」



「いえ、気にしないでください。(ひと)(ごと)です。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



エミリーがキッチンに立つと、ローズが心配そうにエミリーを見てその作業(さぎょう)を手伝いに行きました。



「ローズが手伝うと、キッチンが黒焦(くろこ)げになりそうッス。」



ペーターがニヤニヤしながら言いましたが、ハンスは心配していないようです。



「ローズは大丈夫さ。俺が料理を教えこんだからな。だいたい、ペーターだってあんまり人のこと言えないじゃないか。いったい何個の(なべ)台無(だいな)しにした?」



「姉さんも料理ぜんぜんだめヨ。」



突然二人の会話にヨウフェイが()()んできました。



「うわっ、ヨウフェイか…。へえっ、そうなの?」



「いつも料理が真っ黒になってたネ。」



近くで話を聞いていたチュンフェイは顔を真っ赤にしていました。



「…まあ、ヨウフェイ今ならどんなまずい料理も食べれるネ。」



「そうなの?旅の生活で(した)()れちゃったのか?」



何気なくハンスがたずねましたが、ヨウフェイは少し(さみ)しそうに笑って言いました。



「…ヨウフェイ、全部の感覚(かんかく)がないヨ。味もわからないヨ。」



「あ、う…、」



チュンフェイがハンスとペーターを(にら)みつけています。二人は目を白黒させてチュンフェイに(あやま)りました。



「ごめん、そうだったな…。」



「気にしないヨ。さあ、オマエらも狩人姉(かりゅうどねえ)さん手伝ってくるネ!」



ヨウフェイに追い立てられ、ハンスとペーターは立ち上がってキッチンに向かいました。オリバーはその様子を見て微笑(ほほえ)みました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがてキッチンからいい(にお)いがしてきました。そしてローズたちが湯気(ゆげ)を立てたお皿を持ってきました。



「おお、シチューか!」



オリバーはお皿をのぞき込んで思わず(うれ)しそうに叫びました。



「ええ、味には自信がありますよ。」



エミリーも自信たっぷりです。



「早く食おうぜ!何たってローズの訓練(くんれん)に付き合ってたら疲れたからな。」



マチルドが言いましたが、オリバーは苦笑いしています。



「お前はひたすらゲラゲラ笑ってただけだろ…。まあでも、確かにみんな疲れただろうからな。先に食べててくれ。俺はアリスたちが帰ってきてから食べるよ。」



(わたくし)もそうしましょう、と言いたいところですが、昨日から何も口にしていませんから空腹(くうふく)をこらえられそうにありません…。では先に食べさせてもらうとします。」



エミリーが食べ始めたのをきっかけに、みんな夕食を食べはじめました。みんなとてもおいしそうに食べています。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがて、外で馬のいななきが聞こえました。すかさずエミリーがつぶやきました。



「…カトリーヌの声ですね…。お姉さまが帰ってきたようですね。」



「エミリーちゃんはすごいなあ、鳴き声だけでどの馬かわかるなんて。僕には到底(とうてい)わからないや。」



ラルフが感心したように言いました。しかしエミリーは首をかしげました。



「ですが知らない声も聞こえます…もう一頭いるようです。」



「パトリックさんのフランソワじゃないの?」



ハンスが言いましたが、オリバーが首を振りました。



「いや、フランソワはここの納屋(なや)(つな)いであるだろ?」



「第一、フランソワの鳴き声ならわかるしね。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがてアリスが中に入ってきました。



「エミリー!もう大丈夫なのか?」



アリスは心配そうにエミリーの元へ()()りました。



「ご心配をおかけしました、お姉さま。」



「おお、エミリー!大丈夫か?イザベルから話を聞いたぜ?」



「まだ顔が(あお)いようだね。もう一度イザベルに()てもらったらいいよ。」



「元気になって何よりです!」



パトリックとレオン、モニカも続けて入ってきました。そしてその後ろから…、



「ほお、美味(うま)そうなシチューだな。」



ヴォルフが入ってきました。これまでの兵隊の格好(かっこう)ではなく、王家の家臣(かしん)が着る立派(りっぱ)な服を着ていました。それでオリバーもエミリーも納得(なっとく)したようです。



「なるほど、もう一頭の馬はヴォルフのものだったのか。どうしたんだ、ヴォルフ。」



「すまんが、すぐにパカロンにきてほしいんだ。」



「パカロンに?」



「そうだ。ヘルガ女王様やオットー様がお前に会って話を聞きたいとおっしゃっている。」



「…そうだな、いずれ報告(ほうこく)には行かなければならないと思っていたし…。よし、みんなも(めし)を食べ終わったことだし…、ペーター、馬を出してお前もついて来い。」



「はい、わかりました。」



「それと…、ローズもついてきてくれ。ヘルガ女王様に顔を見せないとな。ハンスは万が一に(そな)えてここに残っていてくれ。」



「わかりました。」



「じゃあ、行こうか。」



オリバーはすぐさま出発しようと立ち上がりましたが、ローズが(そで)を引っ張って引き止めました。



「待って…。先生がまだ何も食べてない…。」



「それはそうだが…、王家からの呼び出しだ、すぐに向かわなければならないさ。」



「いや、そのくらいは大丈夫だろう。どっちにしろ夜通(よどお)し馬に乗らなきゃならないんだ、腹は()たしておけよ。」



ヴォルフは笑っています。



「そうか?悪いな。」



オリバーは大きな皿にたくさん入ったシチューをあっという間に(たい)らげました。



「ふう…。よし、俺はヴォルフの馬に乗る。ローズはペーターの馬に乗せてもらえ。」



留守(るす)は任せておけ。」



アリスが胸を張りました。



「イザベルたちとは連絡(れんらく)(みつ)にとるんだぞ。いざとなったらパトリックやアリスの指示(しじ)(したが)ってくれ。」



オリバーはヴォルフの馬にまたがりました。ペーターとローズもすぐに準備(じゅんび)(ととの)えました。



「じゃあ行くぞ!明日の朝にはパカロンにつけるだろう。」



ヴォルフは馬を走らせました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



()れる馬の背で、オリバーはヴォルフと話しました。



「ダナラスフォルスの状況はどうだったんだ?」



「ああ、壊滅(かいめつ)だな。建物はほとんどが(くず)れ、ところどころに取り残された動死体(どうしたい)が歩いている。」



「そんなにひどいのか…。じゃあまずはその動死体(どうしたい)退治(たいじ)から始めるとしよう…。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



夜明(よあ)けとともに、パカロンのお城の高い建物が見えてきました。ヴォルフがそれを指さして言いました。



「見ろよ、あの強固(きょうこ)城壁(じょうへき)を。お前たちがいなくなってすぐに改築(かいちく)したんだ。立派(りっぱ)なもんだろ。」



「だが、あの立派(りっぱ)な城だって今回の状況(じょうきょう)じゃいつ(くず)れたっておかしくない。」



(いや)なことを言うなよ。まあ事実には違いないが…。」



「今回の相手は、ひょっとしたら一年半前のレイなんか比べ物にならないような強力な魔力(まりょく)を持った魔術師(まじゅつし)である可能性もあるんだ。」



「とは言っても、レイなんて結局ペテン《し》師みたいなものだったでしょう?プレグーやレジオンの方が魔術師(まじゅつし)としては上だったんじゃないですか?」



ペーターが言いました。



「ああ、少なくともレジオンに比べたら三流(さんりゅう)以下だな。ギル大臣は別格(べっかく)魔術師(まじゅつし)だったし…。だがシャロンというやつはレジオンやギル大臣をも凌駕(りょうが)している可能性がある。魔力(まりょく)のレベルとしては、モニカと同じくらいの可能性だってある。」



オリバーが言うと、ヴォルフは怪訝(けげん)そうな顔をしました。



「…ちょっと待て。じゃあなんだ、モニカには国を(ほろ)ぼすほどの魔力(まりょく)があるって言うのか?」



オリバーも怪訝(けげん)そうな顔を返しました。



「モニカの魔術(まじゅつ)暴発(ぼうはつ)するのは、(うち)()められた魔力(まりょく)が大きすぎてうまくコントロールができていないからだ。…まさかヴォルフ、モニカがいずれ国に(わざわ)いをもたらす、とでも考えているのか?」



ヴォルフは(だま)ったままです。オリバーは続けました。



「…なあ、いいか、ヴォルフ。極端(きょくたん)な言い方をするとな、俺だって行動によってはこの国を(ほろ)ぼせる。少なくとも俺たちは一年半前に国を動かしていたギル大臣たちを倒したんだからな。…あんたは俺たち全員、信用できないか?」



ヴォルフはまだ(だま)ったままです。



「…心配するなよ。もしあんたが俺たちを信用できなくなったとしても、今回の俺たちの行動は『衛兵(えいへい)のペーターの依頼(いらい)で俺たちが勝手にやっていること』だ。そう思っておいてくれ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



お城に着くと、ヴォルフは行き先だけをオリバーたちに教えると一人で立ち去ってしまいました。



「ヴォルフさん、本当に先生たちを信用できなくなっちゃったのかな…。」



ペーターが悲しげに言いました。



「はは、心配ないよ。ヴォルフだって前の戦いのとき、俺たちの仲間の一人としてサポートしてくれていたんだ。ちょっとムキになっただけだろう。」



(とはいえ、少し気にはなるな…)



その時、お城の召使(めしつかい)が近寄ってきました。



「オリバー・ローゼンハイン様ですね?」



「ああ、そうだが。」



「どうぞこちらへ。女王様がお待ちかねです。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちは立派(りっぱ)大広間(おおひろま)に通されました。玉座(ぎょくざ)の前で待っていると、このお城の(あるじ)、オットー様を先頭にリバー王国の女王様であるヘルガ女王様、それともう一人、(くらい)の高そうな男性が入ってきました。オリバーたちは(ひざまず)きました。



「ヘルガ女王様、大変お(ひさ)しゅうございます。」



ヘルが女王様はにっこり笑っておっしゃいました。



「そうでしたね、(わたし)が王位についたすぐ後にあなたたちは国を去ってしまいましたものね。…お久しぶりですわ、ローゼンハイン殿。ローズも元気そうで何よりです。



…こちらのお方はシーガルン国王陛下(こくおうへいか)のセザール・シャルパンティエ様です。」



「お(はつ)にお目にかかります、陛下(へいか)。」



「あなたがローゼンハイン殿か。フランツ殿より話は聞いていた。」



セザール様は笑顔でおっしゃいました。



「…ローゼンハイン殿、さっそくで悪いのだが、今の状況(じょうきょう)(くわ)しく聞かせてもらいたい。」



オットー様の言葉に、オリバーは話し始めました。



「は。動死体(どうしたい)大群(たいぐん)はシーガルンの首都(しゅと)、ハングリアを(おそ)って以降は動きを(ひそ)めております。果たして隣国(りんごく)へ移動したのか、もしくはまだ国内に(ひそ)んでいるのかは(いま)調査中(ちょうさちゅう)でございます。」



「なるほど…。ローゼンハイン殿のお考えでは、背後に強力な魔術(まじゅつ)(あつか)魔術師(まじゅつし)がいる、ということだそうだが…。」



「はい。ほぼ間違いはないでしょう。」



「ではなぜ我々(われわれ)の二つの王国が(おそ)われたのだ?」



セザール様からのご質問にオリバーは持論(じろん)()べました。



「…これはあくまで(わたし)推測(すいそく)ではございますが…、動死体(どうしたい)指揮(しき)していると思われるシャロンという魔術師(まじゅつし)目的(もくてき)を持って侵略(しんりゃく)をしているのではなく、ただ(たん)破壊(はかい)という行動を楽しんでいるように思われます。それも、人々が追いつめられるように。」



「どういうことですか?」



女王様は首をかしげられました。



「シャロンという魔術師(まじゅつし)東方世界(とうほうせかい)からあちこちの国を破壊(はかい)してここまでやってきているようです。その東方世界(とうほうせかい)魔術(まじゅつ)に、人間を魔獣(まじゅう)に変えてしまう魔術(まじゅつ)というものがあります。カラスの形をした(きず)をつけられ、そのカラスが口を開けると魔獣(まじゅつ)変性(へんせい)してしまう、というものです。(わたし)の仲間、エミリーもその魔術(まじゅつ)間接的(かんせつてき)にかけられました。何とか処置(しょち)が間に合い、今は静養(せいよう)させていますが…。」



「エミリー嬢が…。なるほど、人々を追いつめる、というのはそういうことか。」



オットー様が困ったような表情をお見せになりました。



「はい。リバー王国内で破壊(はかい)された都市(とし)を見ても、キンフィールドは首都(しゅと)ですし、ダナラスフォルスには人々が信仰(しんこう)を寄せている大神殿(だいしんでん)があります。より国民は混乱(こんらん)します。」



「ではハングリアが(おそ)われたのはどういうことだ?」



セザール様がおたずねになりました。



「シーガルンは豊かな国です。それに王族でいらっしゃるシャルパンティエ家は他国(たこく)の王家と比べて莫大(ばくだい)な量の財産(ざいさん)(かか)えていると聞きます。…(おそ)らく、繁栄(はんえい)しているこの二国を襲撃(しゅうげき)することによって、さらに他国(たこく)にも恐怖感(きょうふかん)(あた)える、ということを(ねら)ったのではないでしょうか。」



「いささか迷惑(めいわく)な話だな…。」



「ともかく(わたし)どもはリバー王国衛兵(えいへい)のペーター・ヘルマンより依頼(いらい)を受けました。この(たび)元凶(げんきょう)である魔術師(まじゅつし)シャロンの討伐(とうばつ)に向かわせていただきます。」



(わたし)たちからもぜひお願いします。多くのものは王宮で焼けてしまいましたが、何か必要なものがあれば遠慮(えんりょ)なくおっしゃってください。」



女王様がおっしゃいました。



「ありがとうございます。…それではさっそくオーベルクに戻り、ダナラスフォルスに残っているという動死体(どうしたい)駆逐(くちく)に向かいます。」



「よろしく(たの)む。あなた方には(たよ)りになってばかりだな…。」



オットー様も申し訳なさそうにおっしゃいました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちが城門(じょうもん)まで出てくると…、



「これは、クララ様…。リリーも。」



クララ様とリリーが待っていました。



「ヴォルフがあなた方に不快(ふかい)な思いをさせてしまったようですね…。本人になり()わってお()びします。」



クララ様がおっしゃいました。



「そんな、お気になさらずに。」



「しっかりと説教(せっきょう)しておくからね。…ヘルガ女王様とオットー様が、オリバーに(おく)(もの)があるって。」



リリーの言葉にオリバーはびっくりして聞き返しました。



(おく)(もの)?」



「あれだよ。」



リリーが指差した方を見ると、そこには立派な白馬(はくば)(つな)がれていました。



「すごい…。フランソワに負けないくらい真っ白だ…。」



ペーターもびっくりしたようです。



「このお城にいる馬の中で一番(すぐ)れた牡馬(ぼば)です。ローゼンハイン殿に差し上げるように、と…。」



「ありがとうございます、クララ様。ありがたく頂戴(ちょうだい)いたします。」



オリバーが白馬(はくば)の首をなでると、白馬(はくば)(うれ)しそうに体を(ふる)わせました。



「名前を付けなきゃな…。ローズ、何かいい名前はあるか?」



ローズはピクッと体を(ふる)わせましたが、しばらく考え込みました。その間にオリバーはペーターにたずねました。



「ちなみにペーター、お前の馬の名前を聞いていなかったな。」



「ああ、こいつはグスタフですよ。マティアス隊長(たいちょう)がつけたんです。もとはマティアス隊長(たいちょう)の馬でしたからね。」



「そうか、いい名前だな。」



すると、ローズが何かつぶやきました。



「…アール。」



「ん?」



「エドゥアール…。」



「エドゥアルトか。」



「エドゥアール…。」



「うん、いい名前だな。よし、今日からお前はエドゥアルトだ。」



「エドゥ…うん、それでもいい…。」



「ふふっ、お気に()されたようで何よりです。では道中(どうちゅう)お気をつけて…。」



クララ様が少しおかしそうにおっしゃいました。



「はっ。クララ様たちもどうかご用心(ようじん)を…。」



オリバーはエドゥアルトにまたがりました。ローズもちゃっかりと後ろに乗りました。ペーターもグスタフに乗り、彼らはもと来た道をオーベルクに向かって走り出しました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



人物紹介


~オットー・フランツ~

・「パカロン領主(りょうしゅ)

・35歳

・一人称は「()

・ロンドランド地方の古都(こと)、パカロンを(おさ)めている。かつて存在(そんざい)したロンドランド王国の王家の末裔(まつえい)無敵(むてき)とも(うた)われる騎馬軍団(きばぐんだん)(ひき)い、自身も馬に乗って戦う。一年半前の事件の(さい)のオリバーへの依頼主(いらいぬし)。ヘルガ女王様の後見人(こうけんにん)として政治を補佐(ほさ)している。温厚(おんこう)領民(りょうみん)からもとても(した)われているが、敵に対しては異常(いじょう)なまでの執念深(しゅうねんぶか)さを持つ。長年(ながねん)、身を隠し続けてギル大臣への反撃(はんげき)()をうかがっていたのもその性格(せいかく)のため。



~クララ・フランツ~

・「オットー(さま)(つま)

・32歳。

・一人称は「(わたし)

・オットー様の(つま)献身的(けんしんてき)にオットー様を支える。ギル大臣がクーデターを起こすまでは、市民(しみん)()じって国を偵察(ていさつ)する特殊伝令兵(とくしゅでんれいへい)だった。教育(きょういく)にも熱心(ねっしん)で、パカロンの街に学校を建てることをオットー様に進言(しんげん)したりした。身分(みぶん)は変わってしまったが、かつて同僚(どうりょう)だったヴォルフとリリーとはとても仲がいい。



~セザール・シャルパンティエ~

・「シーガルン国王(こくおう)

・30歳。

・一人称は「|私( わたし)」

・シーガルン王国の国王。ギル大臣によるシーガルン占領(せんりょう)の時にはやむなく国外(こくがい)亡命(ぼうめい)していた。国民からの人気は高い。まだ若く、自分のいいと思ったことを周囲に確認(かくにん)せずにすぐに実行(じっこう)(うつ)してしまう傾向(けいこう)がある。



*ヴォルフ・ザックス、リリー・ザックス、ヘルガ・ディートリヒは後のお話で紹介(しょうかい)します。

ヴォルフとぎくしゃくしてしまいながらも、オリバーたちはパカロン城で女王様たちとの謁見をすませます。思わぬ贈り物もあり、オリバーはとてもうれしそうです。



次話ではオリバーたちはオーベルクを目前にして、オーベルクが動死体の襲撃にあい、仲間たちが戦っていることを知ります。オリバーたちは現場へ急行します。どうぞお楽しみに!



ちなみに作中にもありましたが、シーガルン王家は他国の王家とは比べ物にならないほどの莫大な財産を持っています。王家はその財産を軍備にではなく文化育成につぎ込んでいるので、シーガルンの文化はとても発展していますが、反面攻め込まれるとそのもろさを露呈させてしまうのです。



では次話をお楽しみに!

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