表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒の魔女  作者: kuma383
49/50

~暗黒の魔女~ 三章・宴の終わり 「46.幻惑の森」

オリバーと仲間たちは禁じられた洞窟に向け、樹海の焼跡を進んでいました。辺りはひっそりと静まり返っています。

オリバーと仲間たち、そしてフラレシア王国軍の小隊は禁じられた洞窟に向かい、樹海の焼跡を進んでいました。途中、はぐれ魔獣と何度か戦うことはありましたが、それ以外は順調に足を進められています。



「ふう…。かなり歩いたな。エミリー、禁じられた洞窟までは、あとどのくらいかかる?」



オリバーはエミリーにたずねました。



「もう少し行くと、わたくしたちの狩人小屋があった場所に着きます。ですから、順調に歩を進めることができたのであれば、一日半ほどで着くかと思います。」



「そうか…。ありがとう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



しかし、しばらく歩くと、不思議なことが起こりました。オリバーの表情には緊張が走りました。



「…そろそろシャロンが罠を張りに来たようだな。」



焼跡はまだまだ続くはずなのに、突然木々が生い茂り始めたのです。



「引き返すんですか、先生。」



ペーターがききましたが、オリバーは首を振りました。



「もうここまで来れば、どの道を行ったって一緒だ。それならこのまま突っ込んだ方がずっといい。さあ、行こう。」



オリバーの言葉に仲間たちは頷き、歩みを進めて森の中へと入って行きました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



森の中に入ってから、オリバーを護るように囲んでいるフラレシア王国の兵士たちは辺りをひっきりなしに警戒していましたが、特に異変を感じることはありません。



「油断するな!何もない時が、一番警戒すべきだからな…。」



レイモンは兵士たちに呼びかけます。そんなレイモンを、レオンが気づかっています。



「大丈夫か、レイモン。気を張りすぎてるんじゃねぇのか?」



しかし、レイモンは笑って答えました。



「心配はご無用ですよ、レオン先生。私もハングリアの訓練場にいた時よりもずっと経験を積んで強くなりましたから。魔獣相手ならば、先生にだって劣らない自信がありますよ。」



レイモンの言葉に、レオンは少しだけ表情を和らげました。



「まったく、大きな口を叩くところだけは昔とまったく変わっちゃいねぇな。そうやって腕を過信しているおめぇこそ、気をつけねぇとならねぇんじゃねぇのか?」



レイモンは頭をかきました。



「はは、やっぱり先生には敵わないようですね。」



そんな二人のやり取りをきいて、イザベルはオリバーにおかしそうな口調で言いました。



「レオンさんとレイモンさんのやり取りを見ていると、まるでオリバーさんとハンスさんやペーターさんのやり取りを見ている気持ちになりますね。」



「はは、そうかい?まあ、レイモンはレオンにとって、大切な教え子だから、きっと弟子のような存在なんだろう。それに、今回のことでレオンは多くの弟子を亡くしたんだ。その中で生き残っていたレイモンに対する気持ちは、やはり強いものがあるんだろうな。」



オリバーがしみじみと言ったその時でした。突然アリスが声にならない叫び声をあげました。



「お姉さま?いったい何があったのですか?」



エミリーは心配そうにアリスの顔を覗き込みました。アリスはあんぐりと口を開けたまま、ある一点を指差しました。エミリーはその方向を見て、びっくりしました。



「あれは…焼け落ちたはずのわたくしたちの狩人小屋!」



しかし、オリバーは怪訝そうな表情をしています。二人が差す方向には何も見えていないからです。



「二人とも、何を言っているんだ?何も見えないじゃないか。」



しかし、今度は他の仲間たちも次々と混乱したような声をあげました。



「くそっ、いったいどういうことだ!俺にはハングリアの訓練場が見える…。」



そう言ったのはレオンです。



「僕には…オーベルクの市が見えます。」



ロジェも顔を真っ青にして言いました。フラレシア王国兵も次々と叫び出します。



「あれは…祖国の家だ!」



「もう3年も帰っていない、俺の家だ!」



「妻や子どもたちが…。」



ここにきて、オリバーはこれがシャロンの罠なのだと気づきました。



「くそっ、みんな、目を閉じるんだ!これはシャロンの罠…くそっ、俺にも故郷の家が見える…。」



驚くべきことに、彼らは自分が見えているものの方へ、自分の意思とは逆にどんどん引き寄せられているのでした。オリバーも、自分の家が見えている方向に向かってどんどん足を進めてしまっていました。そして自分の足が止まった瞬間、目の前にあった家は消え、その代わりに一人の人物がそこに立っていました。



「レジオン…。」



前回の戦いのときに葬り去った、オリバーの因縁の敵、闇の魔術師レジオンの姿がそこにあったのです。オリバーは他の仲間たちの様子をうかがいました。皆、武器を構え、どこかを睨みつけています。



「なるほど…。それぞれで幻覚と戦え、ということなのか…。」



オリバーがつぶやいた瞬間、レジオンはオリバーに向かって魔術を飛ばしてきました。オリバーはその魔術を体の真ん中で受け止めてしまいました。彼の体を苦痛が襲います。



「くっ…。幻とはいえ、威力は本物と変わらず、か…。」



オリバーは腹を決め、レジオンと真っ向から対峙しました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



他の仲間たちも、オリバーと同じように幻覚との戦いを開始しました。そんな中、ローズは辺りを不思議そうな表情で見渡していました。



「みんな…何をしているのかわからない…。」



「あなたもですか、ローズさん。」



ローズがサッと振り返ると、そこにはモニカがいました。



「モニカ…。何も異変は起きていないの?」



モニカは深刻な表情で頷きました。



「ええ…。きっと皆さんはシャロンが作りだした幻覚と戦っているんだと思います。パトリックさんには、どうやらロジェのお父さんである、シリル・カリエールが見えているようです。イザベルさんは、以前戦った、悪の宮廷魔術師のレイと…。」



ローズは少し考えこみました。



「つまり…みんなは自分の因縁の相手と戦っているみたい…。でも、私にだって因縁の相手はいる…。例えば、ギル大臣…。例えば、レイ…。でも私には何も見えない…。」



「私にも何も見えません。これはいったいどういうことなんでしょう…。」



モニカが首をかしげた時、頭の上の方から声が聞こえてきました。



「それはこういうことですよ!『裂殺!』」



その声に、モニカは反射的に頭上に防御の魔力線を張りました。頭上からの光は魔力線に当たって跳ね返りました。モニカは愕然としたような表情で言いました。



「あなたは…シャロン!」



シャロンは空中に浮かんで、ローズとモニカを見降ろしていました。



「私の殺意を凝縮した魔術を跳ね返すとは…やはりモニカ・クラウス、私の前から消すしかない。」



シャロンはつぶやきました。モニカはシャロンに向かって声を張り上げました。



「これはいったいどういうことなのか、説明してください!」



するとシャロンは不敵に笑って言いました。



「あなたがさっき言っていた通りですよ。ローゼンハインたちは私のつくりだした幻覚と戦っているのです。この森自体、私が作りだした幻覚。そう、私は完全に魔力を取り戻した。禁じられた洞窟の魔力を吸収し、私は完全に復活した。…いいえ、以前よりもずっと強大な力を手に入れた!」



シャロンは高らかに宣言しました。ローズはシャロンを睨みつけながら、言いました。



「教えてほしい…。どうして私とモニカには、幻覚が見えていないのか…。」



すると、シャロンの眼光が一気に鋭くなりました。



「もちろん、私がじかに手を下して抹殺するため。魔神憑きのローズ・ミニエーに、私と同等の魔力を持つモニカ・クラウス。まさしく私の因縁の相手。あなた方を葬り去らなければ、私はいつまでも羽ばたくことはできない。」



シャロンは目をぎらつかせています。ローズは自分の肩を三回叩きました。



「アンドレアス…。出てきて…。」



すぐにもやもやしたアンドレアスが姿を現しました。シャロンはより一層声を震わせました。



「魔神・アンドレアス…。私はあなたのことも調べ上げましたよ。あなたは魔神の中でも特に強い力を持っているようですね。遥かな太古、あなたはとある神官の願いによって、一瞬のうちに大陸を海の底に沈めた。最近では大嵐を起こして、ある国に攻め込んでいた大量の軍船を沈めたそうですね。」



アンドレアスは、重々しい声で言いました。



「確かに、私がその気になれば、例えばこの樹海を一瞬のうちにそっくり焼き尽くすこともできる。だが、私はとりついた者に闇の魔術を使うことは禁じられている。そのため、そなたが思っている程の力を見せつけることはないだろう。」



アンドレアスがあまりに正直に言ったため、ローズとモニカは顔を見合わせ、肩をすくめました。しかし、アンドレアスは、だが、と続けました。



「だが、そのようなものを使わずとも、この二人と力を合わせさえすれば、そなたを倒すこともできる。」



その言葉に、ローズとモニカはパッと表情を明るくしました。アンドレアスは二人に言いました。



「命をかけた戦いの前に、そんな表情を見せるとは、そなたたちもまだまだ若すぎるようだな。とにかく、魔力線で魔術を跳ね返すことには多大な魔力を必要としてしまう。シャロンからの攻撃の防御は私に任せて、そなたたちは思う存分攻撃を仕掛けるのだ。さあ、行け!」



アンドレアスの言葉に二人は頷くと、シャロンに向かって同時に声を張り上げました。



「ファイアーストーム!」



シャロンはとっさに防御の魔力線を張りましたが、炎の勢いの強さに、魔力線はその炎を抑えきれませんでした。シャロンの奇妙な衣装に火がつきます。



「くっ、こざかしい!『裂殺!』」



シャロンは負けじと反撃しますが、アンドレアスが魔力線の代わりを務めているため、魔術はローズたちには届きません。アンドレアスは二人を励まします。



「私のことを心配する必要はない。さあ、存分に戦うのだ!」



気持ちの奮い立った二人は、果敢にシャロンに攻撃を仕掛けました。その表情は、とても嬉々としたものでした。

オリバーたちはシャロンのつくりあげた幻影と戦い始めました。一方、シャロンに因縁の相手と思われているローズとモニカは、アンドレアスと力を合わせてシャロンと戦うことになりました。



次話では仲間たちがあるいは幻影と、あるいはシャロン自身と戦い続けます。しかし、相手はとても強く、傷つく仲間たちも増えるようです。どうぞお楽しみに!



ちなみにアンドレアスの能力については後で完全にわかることにはなりますが、実際のところ、かなり強大な力を持っています。魔神の中でもかなりの術の使い手です。



では次話をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ