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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 二章・オットー様の覚悟 「20.忍び寄る気配」

オリバーたちはノーザリン地方の村で魔獣の掃討に成功しました。しかし「無感の呪い」をかけられているヨウフェイは自分が怪我をしたことに気づかず、倒れてしまいました。アリスたちはヨウフェイを馬に乗せ、自分たちの狩人小屋を目指しました。

アリスたちは一足先に昔住んでいた狩人小屋(かりゅうどごや)に帰ってきました。アリスがペーターに声をかけました。



「ペーター、ヨウフェイを()ろすのを手伝ってはくれぬか。そっと降ろすのだぞ。」



「あ、うん。待ってて。」



ペーターはアリスに手を貸し、ヨウフェイをカトリーヌから降ろしました。



「お姉さま、わたくしは馬たちに(えさ)をやっておきます。」



エミリーはそう言って馬たちを納屋(なや)の方へ連れて行きました。



「うむ、(たの)んだ。イザベルもチュンフェイも、()れらの狩人小屋(かりゅうどごや)に入るのだ。最近はこの樹海(じゅかい)物騒(ぶっそう)なのだ、中に入った方がよい。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



まだ眠っているヨウフェイは、木のベッドにそっと降ろされました。



「ヨウフェイはまだ目を覚まさぬのか?」



アリスが心配そうにイザベルに言いました。



「少しずつながらも出血量(しゅっけつりょう)はとても多いものでした。まだしばらくかかるかもしれませんね…。」



イザベルは静かに答えました。



「そうか…。それではヨウフェイが目を覚ますまでの間、()れらは()りに行くとしよう。オリバーたちはきっと(はら)()かしてここにやってくるだろうからな。」



アリスはそう言ってエミリーを呼びに小屋の外に出て行きました。



(わたし)も少しこの小屋の周りを歩いてお薬に使えそうな薬草(やくそう)を探してきます。ペーターさん、チュンフェイさん、留守番(るすばん)をよろしくお願いしますね。」



イザベルも小屋の外に出て行き、家の中にはペーターとチュンフェイが残されました。チュンフェイは心配そうに眠っているヨウフェイを見ています。



「ヨウフェイ…、早く目を覚ますといいな。」



ペーターも心配そうに言います。チュンフェイはため息をつきました。



「『無感(むかん)(のろ)い』なんて、シャロンのやつ面倒(めんどう)なことしてくれるよなぁ…。でも大丈夫だよ、イザベルさんはすぐに良くなるって言ってた。イザベルさんが大丈夫って言えば大丈夫さ。まずはチュンフェイも座って休めよ。」



ペーターが言うと、チュンフェイは少し笑顔を見せて木の椅子(いす)に座りました。ペーターは一瞬ドキリとしました。



(チュンフェイ…ちょっとキツイ印象(いんしょう)があったけど、笑顔をよく見るとかわいいな…)



すると、チュンフェイも(だま)ってペーターを見ています。



(うう…、何を考えているのかわからない…)



その時、イザベルが扉を開けて中に入ってきました。



「うーん、このお家の周りには薬草(やくそう)は見当たりませんでしたね…。あら?」



部屋の中ではペーターとチュンフェイが見つめあっています。



「…あ、イザベルさん。早かったですね。」



ペーターが声をかけると、イザベルはいたずらっぽく笑って言いました。



「あらあら…。(わたし)はお邪魔虫(じゃまむし)のようですね。それでは失礼します。」



「えっ、ええーっ!?いやいや、待ってくださいよ、イザベルさん!誤解(ごかい)ですって!」



「うふふ、冗談(じょうだん)ですよ。」



(あわ)てるペーターを見て、イザベルはとてもおかしそうにしています。



「イザベルさん…、何だか性格(せいかく)が変わりましたか?」



ペーターが弱ったように言うと、イザベルも苦笑いしました。



「何と言っても、同居人(どうきょにん)があの人ですからね…。多少なりとも変わりますよ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



その(ころ)…、



「はくしょん!」



「うおぅ!何だよ、ビアンカ。風邪(かぜ)か?」



ビアンカの横にいたマチルドが大げさに顔をしかめました。



「むー…。何だろう…。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方、アリスとエミリーは大きな鹿(しか)仕留(しと)めていました。



「うむ、これだけの大きさであればしばらく(しょく)には困らぬであろう。()(にく)もたくさん作れそうだ。」



「そうですね、お姉さま。…あうっ。」



エミリーは顔をゆがめました。アリスは心配そうにエミリーに声をかけました。



「どうしたのだ、エミリー?…この前の(きず)(いた)むのか?」



「っ…、大したことはありません。イザベルさんにしっかりと治してもらったわけですから。」



エミリーは笑って言いましたが、アリスはそれで安心できないようです。



「そうか?…うむ、心配でならぬ…。」



「もう、お姉さま。(わたくし)はもう幼子(おさなご)ではありません。そこまで心配していただかなくても…。」



「うむ…。()れにも妹離れしなければならぬという意識(いしき)はあるのだが…、いざとなるとやはり気にかかってしまって仕方がないのだ…。」



「お姉さまったら…。気にしていただけているということは確かに嬉しいのですが…。」



エミリーは少し困ったような笑顔をしています。その時です、二人の近くの(しげ)みがガサリと音をたてました。



「む?獲物(えもの)がすぐそこにいるようだ。行くぞエミリー!」



「はいっ、お姉さま!」



二人は獲物(えもの)を追うために再びカトリーヌとアンヌを走らせました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方、オリバーたちはアリスたちの狩人小屋(かりゅうどごや)を目指して樹海(じゅかい)の中の街道(かいどう)を歩いていました。オリバーはつぶやきました。



「以前はこの道はいつどこで魔獣(まじゅう)が出てくるかわからなかったが、前に(きん)じられた洞窟(どうくつ)(ふう)じたことによって魔獣(まじゅう)消滅(しょうめつ)した、はずだったんだが…。」



「でも、シャロンのせいであたしたちがボロボロになっちゃってるんだよね。」



ビアンカが(ふく)れて言いました。ついさっきもオリバーたちは不意打(ふいう)ちしてきた魔獣(まじゅう)退治(たいじ)したばかりなのです。



「アリスとエミリーは悲しむだろうなぁ…。」



レオンも残念そうな顔をしています。



「とにかく早く二人の狩人小屋(かりゅうどごや)に行って合流(ごうりゅう)しないとね。どうもこの樹海(じゅかい)にとどまるのは危険な気がしてきたよ。」



パトリックも(きび)しい顔をしています。オリバーがマチルドにたずねました。



「マチルド、二人の狩人小屋(かりゅうどごや)まであとどのくらいか覚えてるか?」



「うーん…、あたいはあの二人みたく何も見ずに森を歩くことはできねぇけどよ…、多分もうちょっとかかると思うぜー?」



「そうか、ありがとう。よし、みんな急ごう。」



オリバーたちは(あゆ)みを早めました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方アリスとエミリーは獲物(えもの)のシカを()()めていました。



「よし!とどめをさすのだ、エミリー!」



「はいっ!お姉さま!」



エミリーは言葉を返すと、()をつがえました。しかし、()(はな)とうとした瞬間…、



「あらっ?」



突然シカが大きな叫び声をあげたかと思うと、地面にドサッと倒れこみました。エミリーは(おこ)りました。



「お姉さま!(わたくし)()とうとしておりましたのに…、危険です!()りの時は意志疎通(いしそつう)をしっかりしなければならないと教えてくださったのはお姉さまではありませんか!」



しかし、アリスは怪訝(けげん)そうにしています。



()れは何も知らぬぞ?()れは何もしていない。見るのだ。()など刺さっていないではないか。」



エミリーが倒れたシカを見ると、確かに()は刺さっていません。それどころか、傷跡(きずあと)一つ見当たりません。



(きず)もつけずに相手を倒すなんて…、まさか、魔術(まじゅつ)!」



エミリーがハッとして顔を上げた瞬間、倒れていたシカが突然起き上がり、エミリーの方に向かってきました。



「エミリー!」



アリスは顔を真っ青にしましたが、エミリーは落ち着いていました。



「こざかしい!」



エミリーが(はな)った()はシカの頭を貫通(かんつう)しました。



「だ、大丈夫かエミリー!」



アリスがエミリーに駆け寄りました。



「…二度同じ(てつ)()みません。」



エミリーは得意げに言いました。するとその瞬間、二人の周りの木々が突然燃えだしました。



「…どうやらのんびりもしていられぬようだ。エミリー!狩人小屋(かりゅうどごや)まで退()くぞ!」



「はいっ、お姉さま!」



二人はカトリーヌとアンヌに飛び乗ると、ものすごい(いきお)いで追ってくる(ほのお)から逃げました。

いち早く魔術の気配を察したアリスとエミリーは樹海の危機を悟り、すぐに狩人小屋に引き返すことにしました。シャロンの魔の手はすぐそこに迫ってきているようです。



次話では魔術による炎から逃げながら、アリスたちはオリバーたちと合流します。そしてシャロンも再びオリバーたちの前に姿をあらわします。どうぞお楽しみに!



ちなみに今回魔獣が出現した村からアリスたちの狩人小屋までは普通に歩くと半日ほどかかってしまうような距離があります。村が樹海の東の端の方にあるのに対し、狩人小屋は真ん中からやや西寄りにあるのです。



では次話をお楽しみに!

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