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暗黒の魔女  作者: kuma383
19/50

~暗黒の魔女~ 二章・オットー様の覚悟 「18.そして宴が始まる」

オリバーと仲間たちはノーザリン地方に出現した魔獣を討伐するための旅に出ました。もう少しでノーザリン地方の中心都市レバリーに到着できそうです。

オリバーと仲間たちは降りしきる雨の中をノーザリン方面に向け街道(かいどう)を歩いていました。ハンスがオリバーに話しかけました。



「この辺りではまだ魔獣(まじゅう)痕跡(こんせき)は見られませんね。」



「ああ。(きん)じられた洞窟(どうくつ)封印(ふういん)されたままであるという以上、今出現している魔獣(まじゅう)は強力な合成魔獣(ごうせいまじゅう)である可能性が高い。どんなやつが出てくるかまったくわからないからな…。」



対応(たいおう)できるか心配ですね。」



「ああ、そうだな。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



歩き始めて三日目、雨はだいぶ降り方が弱まってきましたが、それでもまだ降り続いていました。荷物を持っていたロジェが仲間たちから徐々(じょじょ)(おく)れをとりはじめました。どんどん距離(きょり)(はな)れて行きます。



「ロジェ?どうしたの?もう少しでレバリーに着くよ?」



ビアンカが心配そうに声をかけると、ロジェは苦痛(くつう)に顔をゆがめながら言いました。



「足のマメがつぶれてしまいました…。すみません。僕は今までこんなに長く歩いたことがないので…。」



「だから旅は大変だと言ったのに…。」



レオンはため息をつきました。パトリックはそんなレオンを見て苦笑いしています。



「まあ、そう言ってやるなよ。」



「イザベル、薬を()ってやったらどうだ?」



「わかりました。ロジェさん、足を出してください。」



「すみません…。」



イザベルはロジェに薬を()ってあげました。



(わたし)も最初、すぐに歩けなくなっちゃったなぁ…。パトリックさんがフランソワに乗せてくれたけど…。」



モニカが言いました。



(わたし)(じゅつ)を自分にかけていなければ、とても歩けないでしょうね…。はい、これで終わりました。」



「ありがとうございます、イザベルさん。」



「とは言え、すぐに歩かせるわけにもいかないな。ロジェ、エドゥアルトに乗っていいぞ。」



「す、すみません…。」



ロジェはオリバーに言われたとおりにエドゥアルトに乗りました。しかし、エドゥアルトが三歩も歩かないうちにロジェはバランスを(くず)して落馬(らくば)してしまいました。



「うわあああっ!イテテテ…。」



「ハハハッ、しょうがないな。ローズ、お前もエドゥアルトに乗れ。ロジェはしっかりとローズにつかまっていろ。」



ローズはギョッとした顔をしました。そしてジロッとロジェを見ました。



「え?あ、あの…?」



「先生に言われたから仕方ない…。さっさと乗って…。」



ロジェは(おそ)(おそ)るローズの後ろに乗り、ローズの体につかまりました。



「ロジェのやつ、無事に今日を終えられるかな?」



ペーターが笑いながら言いました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがてオリバーたちはノーザリンの中心都市、レバリーに着きました。



「今日はここで一泊(いっぱく)しよう。どうやら魔獣(まじゅう)出現(しゅつげん)した村に着くにはもう少しかかるらしい。無理して歩けば着くだろうがもう日も暮れそうだし、ロジェの足もな…。」



「…足以上に、体全体が限界(げんかい)であるようだが…。」



アリスがロジェを見て言いました。エドゥアルトの上のロジェはなぜかボロボロでした。



「ハハッ、馬に乗るのも初めてだったか。今日はゆっくりと休まないとな。」



(いや、どう考えても…)



(馬に乗っただけであんなボロボロにはならないだろう…)



ロジェの前で、ローズはツンとすましていました。ロジェはただただローズを恐怖(きょうふ)眼差(まなざ)しで見ていました。



(明日からは足が(こわ)れても歩いてやる…絶対にだ)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちは宿の主人に魔獣(まじゅう)の話を聞きました。



「ここから少し北へ行った村に魔獣(まじゅう)出没(しゅつぼつ)しているという話を聞いたんだが…。」



「ええ、そうなんですよ、旅のお方。この分だといつこのレバリーにも魔獣(まじゅう)どもが(おそ)ってくるかわかりません。悪いことは言いません、すぐに引き返しなさった方がいい。北の隣国(りんごく)へ行くなら、遠回りにはなりますがシーガルンからでも行けますから。」



「おいおい、見くびるなよ。このお方をどなただと思っているんだ?一年半前にリバー王国を、ふごっ!?」



ビアンカが(あわ)ててロジェの口をふさぎました。



「一年半前に…何ですか?」



「えへへっ、一年半前にリバー王国を旅した時、一度も魔獣(まじゅう)(おそ)われなかったんだよ。」



「それはそれは…。一年半前というと、ギル大臣が(とう)牢獄(ろうごく)に閉じ込められた頃ですか…。…アルベール様が生きていらっしゃったら、魔獣(まじゅう)など蹴散(けち)らしてくれたかもしれないのに…。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



部屋に帰るとローズがふくれっ(つら)をしました。



「あんなこと言って、アルベール様がいらっしゃった頃は絶対に(うやま)っていない…。」



「まあ、そう言ってやるなよ。人間の心なんて、コロコロ変わるものだからね。」



パトリックが苦笑いして言いました。ローズはむくれたままです。



「そもそもヨウフェイ、その一年半前のことを(くわ)しく聞いていないネ。聞きたいヨ。」



ヨウフェイがオリバーに言いました。



「そうか?…ことの発端(ほったん)は俺がオットー様からの極秘(ごくひ)の手紙をもらったことだ。…。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちは()わる()わる一年半前の話をしました。話は夜遅くまで続いたのでまだ(わか)い仲間たちは途中で眠ってしまいました。



「…というわけなんだ。」



「オマエたち、なかなかすごいやつらネ。見くびっていたのが間違いだったヨ。」



「何だよ、まだ俺たちを(みと)めていなかったっていうのか。」



レオンが言いました。



冗談(じょうだん)ネ。こんな冗談(じょうだん)通用(つうよう)しないなんて、やっぱりオマエもバカなようだネ。」



「マチルドと一緒にするなよ…。」



「それに…老師(ラオシー)がそんな苦労(くろう)をしていたなんて知らなかったネ。ヨウフェイには姉さんがいるし、姉さんにはヨウフェイがいるヨ。でもラオシーは一人きりネ…。」



ヨウフェイはオリバーの横で丸くなって眠っているローズを見て言いました。



「ハハッ、とは言え、今のローズには行動を共に出来る仲間がたくさんいる。もちろんチュンフェイとヨウフェイも(ふく)めてだがな。」



オリバーはヨウフェイたちに言いながらローズの(かみ)()でました。ローズはくすぐったそうに口元をゆるめ、(さら)に体を丸くしました。



「まるで仔犬(こいぬ)のようだな。」



アリスが目を細めました。



「寝ている間くらいはつらさを(わす)れていられそうだね。」



パトリックも微笑(ほほえ)みながら言いました。



「時々うなされることもあるようだが、それでも最近はかなり()ってきているようだ。ゼロになることはないだろうが、少しでもつらさを忘れてほしいもんだな。



…さあ、もう夜も遅い。明日はいよいよ魔獣(まじゅう)出没(しゅつぼつ)している村に着くんだ。そろそろ眠って体力を温存(おんぞん)させておけ。」



オリバーの言葉に、まだ起きていた仲間たちもそれぞれの部屋に移動して眠りにつきました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



翌朝、オリバーは久しぶりに感じられる日差(ひざ)しと窓の外から聞こえる(さわ)ぎ声で目を覚ましました。



「何だ…?外が(さわ)がしいようだな…。ハンス、ペーター、起きろ。外の様子を見に行くぞ。」



オリバーたちが部屋から出ると、ちょうどビアンカたちも部屋から出てきました。



「おはよう、師匠(ししょう)。何だか外が(さわ)がしいね。」



「ああ、そうだな。今から様子を見に行こうと思う。」



(わたし)たちもそのつもりで出てきました。一緒に行きましょう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



宿の入り口では、宿の主人が(こし)を抜かしていました。アリスとエミリーが()()りました。



「ご主人!どうされたのですか?」



「ま、魔獣(まじゅう)が宿の前に…。」



宿の主人が指さした方を見ると、確かに宿の前に魔獣(まじゅう)が横たわっています。



「もう、もう終わりだ…。早くこのレバリーから、いや、リバー王国から逃げなくては…。」



顔面蒼白(がんめんそうはく)な宿の主人に、アリスがピシャリと言いました。



「落ち着くのだ、亭主(ていしゅ)。あの魔獣(まじゅう)息絶(いきた)えている。(あせ)って(さわ)ぎを大きくしてはならぬ。」



「は、はい…。」



宿の主人はよろよろと立ち上がると、魔獣(まじゅう)の方に(おそ)(おそ)る歩いて行きました。その瞬間、オリバーが叫びました。



「危ない!近寄(ちかよ)るな!」



オリバーが叫んだ瞬間、横たわっていた魔獣(まじゅう)は突然起き上がり、宿の主人の方を向きました。



「ヒッ!」



「下がれ!カースアタック!」



オリバーの指先から真っ黒い光が(はな)たれました。魔獣(まじゅう)(おそ)ろしい悲鳴(ひめい)を上げたかと思うと、今度こそ息絶(いきた)えました。



(きたな)真似(まね)しやがって…。」



「これもシャロンの仕業(しわざ)かな…。」



ハンスとペーターが(いか)りに(ふる)えています。宿の主人は目の前で()り広げられた光景(こうけい)を見て腰を抜かさんばかりに(おどろ)きました。



「あ、あなた様方はいったい…。」



オリバーは困ったようにため息をつきました。



「こうなってしまったからには(かく)すわけにはいかないな。俺はオリバー・ローゼンハインだ。ノーザリン一帯(いったい)出没(しゅつぼつ)している魔獣(まじゅう)調査(ちょうさ)にやって来た。」



「お、オリバー・ローゼンハイン様!?リバー王国を(すく)った、あの有名な!?」



「ああ、あまり大げさにしないでくれ。(さわ)がしくされると都合(つごう)が悪いんだ。…それより、この魔獣(まじゅう)だ。」



オリバーは注意深(ちゅういぶか)魔獣(まじゅう)に近寄りました。そして(けん)を抜くと、魔獣(まじゅう)()()してみました。



「どうですか?」



ラルフが心配そうに声をかけました。



「大丈夫だ、こいつは完全に息絶(いきた)えている。…だが、これがシャロンの()(がね)であることは間違いない。ほら、これを見ろ。」



オリバーは引き抜いた(けん)を仲間たちに見せました。レオンがそれを(のぞ)()みました。



「これは…こびりついた血が何かの記号(きごう)(えが)いているな。いや、これは文字…?チュンフェイたちの文字じゃねぇか?」



「何て書いてあるんだ?」



マチルドが首をかしげました。ヨウフェイが近寄って文字を読みました。



「『さあ、(うたげ)の始まりです』。…気に食わないやりかたネ。」



「どうやらシャロンも態勢(たいせい)(ととの)えたらしいな。よし、こうしてはいられない。みんな、北の村へ急ぐぞ!」

体勢を整えたシャロンが、今しもオリバーたちに牙をむこうとしています。オリバーたちは急いで魔獣が出現した村へ向かいます。



次話では魔獣に襲われた村にオリバーたちが到着し、そこで魔獣たちと戦うことになります。その戦いの中で、ひとつの問題が発生するようですが…?どうぞお楽しみに!



ちなみに宿の主人は当初オリバーのことに全く気づきませんでしたが、救国の主とはいえ、基本的にリバー王国の人々はほとんどオリバーの顔を知りません。それに、宿を予約する時はたいていハンスかイザベルの名前で予約するので、余計に気づかれなかったのです。



では次話をお楽しみに!

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