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05 第1章第4話 監督の期待

「こんにちは。私は、皆厳徹子(かいげん てつこ)です。これからよろしくお願いします」


 珠子の目の前にいるのは、ソファーに座る姿も綺麗な美人だった。髪はショートカット、いかにもスポーツ選手を思わせるヘアスタイルだった。メガネがより理知的な感じを醸し出している。上下、球団カラーと同じ水色のジャージを着ていた。


「『カイゲン』って、いかにもって感じがするだろ、タマちゃん」

「いかにもってなんですか、監督」


「あははは、ごめんごめん。だってさ『みんな』に『きびしい』って書くんだよ。ね、タマちゃん、厳しそうでしょ?」

「はあ~……(『カイゲン』って、そう書くんだ。いやあ~見た目だけで、もう充分厳しそうだなって思ったんだけど……)えっと、プロの人って、やっぱり厳しいんですよね……」


「何言ってんの、タマちゃん。そんなに厳しいことばかり言ってたら、ファンから嫌われちゃうよ。なんせ、プロ野球はファンの人たちにたくさん野球を見てもらわないとダメなんだからね。強いだけじゃダメなの! ちゃんと楽しませなくっちゃね!」

「監督は、いつもそんなことばかり言ってるから試合に勝てないんです。私は、試合に負けたくないので、自分に厳しくしてただけです」


「あ、タマちゃんは知ってるかな? テッちゃんはね、プロ野球選手だったんだよ。今は、引退して球団のお仕事してるんだけどね……いいピッチャーだったんだ」

「よしてください、監督。もう、昔のことです」


「そうじゃないよ、テッちゃん。もう、女性のプロ野球選手が登場して10年ぐらいたつけど、なかなか1軍には定着しないんだ。でもね、ファンは期待してるんだよ。女性がね、バッタバッタと男性のプロ野球選手を倒していくのをね。そういう意味で、僕はテッちゃんに期待してたんだ」


「本当にもうやめてください、新城監督(しんじょうかんとく)……」


 徹子は、少しムキになって監督の話を遮った。珠子は知らなかったが、その昔、短い期間ではあったが、徹子は確実に1軍で活躍し将来を期待されていた。



「……分かったよ、もう何も言わない。でもね、テッちゃん、君の技術を生かせる子が現れたと思ったんだ。僕には分かる。彼女こそ、このプロ野球を盛り上げてくれる子なんだって。……だから、テッちゃん、お願いだ。君のすべてを、このタマちゃんに教えて欲しい!」


 新城監督は、隣に座っている徹子に向かって頭を下げた。真剣に、一切のふざけた感じは出さなかった。



「(なんか、あたし、物凄いこと頼まれているような気がする)……」


 監督が頭を下げて頼みごとをしているのは、目の前の皆厳徹子なのだが、徹子に何かを伝えさせようとしている相手が、珠子なのである。彼女は、途轍(とてつ)もないことを引き受けたような気がして、自然と表情もこわばってきた。




(つづく)


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