↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
120/120

120 第6章第20話 強さの裏で

 “いや~上手かったですね、サードの守備! 野町(のまち)は、サードライン際ぎりぎりのショートバウンドのゴロを見事にキャッチして、すぐにファーストに送りました!”

 “……それよりも、今のはピッチャーの北白山(きたしらやま)が上手かったんですよ!”


 “え? それは、どういうことですか? 亀岡(かめおか)さん”

 “北白山は、カナリアがファールを狙ってバットコントロールをしているのを見破ったんです。だから、ジャイロボールの回転数を上げたんでしょうな”


 “そうなんですか? ボールのスピードがいつもより少し遅かったから、力を抜いたのかと思ったんです。つまり、北白山もチェンジアップでも覚えたのかなあってね”

 “あれが、チェンジアップ? まさか……あれだけ全力で投げたボールは、チェンジアップじゃなくて、ハイパワーアップですよ! あのボールは、速さじゃなくて、回転を増したんです”


 “ホントですか? それにしても亀岡さんは、すごいですね。見ただけで回転数が分かるんですか?”

 “そうじゃないですよ、私だって見ただけでは分かりませんよ。ただね、戻ってきたカナリアが、多澤(おおさわ)からバットを受け取り、とても驚いていましたよね。たぶん、あれはバットにものすごい跡が残っていたんだと思います。あのスピードでバットに跡を残せるのは、回転しかありませんからね”


 “なるほど……あ! 今、球場の計測器の表示が出ました。ボールの回転数のところだけ数値は表示されていなかったんですが、……おっと! これは、すごい数値です。通常、150キロを出す剛速球のピッチャーでも、2700回転ぐらいですが、な、なんと、北白山の今のボールの回転数は、3989回転でした!”

 “す、すごいですね~……でも、この回転数を出す投げ方だと、体にはけっこうな無理がかかるんじゃないかと思いますよ……毎回、これを投げるのは無理でしょうね”




 2番のバッターは、セカンドを守っている滝山(たきやま)だった。珠子は、1球目にジャイロボールを投げた。力は、中くらいのリンゴだったが、滝山はあっさりとファールしてしまった。


「(こりゃ、オンライズの選手は、ジャイロボールのファールの仕方を練習してきたな。バットを折ったり、こちらの意図したフライを打たせたりするのは、やっぱり無理か……)」


「(え? 多澤さん、栗じゃないの?……ツッパリボールで、カボチャなの?)」


 多澤が出したサインは、力を込めたフォークボールだった。しかも、構えた場所は、やっぱり低めだ。



 “あ、滝山、打ちました……が、ショートゴロです。……これで、2アウト”

 “やっぱり、強いジャイロボールは投げませんね。あれは、フォークボールです。しかも、空振りを誘うものではなく、微妙にバットの中心を避けるような変化の少ないものでしたね”


 “それは、どんな意図があったんですか? 亀岡さん”

 “それは、きっと、ゴロを打たせるためでしょう。空振りをとるより、ボール数が少なくて済みますからね。北白山の体力温存も考えているんじゃないでしょうか”



 “次は、3番、キャッチャーの大島(おおしま)です。……あ、1球目を打った……これは、ファーストへのゴロになった。ファースト喜代宮(きよみや)、キャッチして自分でそのままベースを踏んだ。これで、3アウト、チェンジになりました”

 “これも、フォークでしたね……。惜しかったですね、ここで一人でもランナーが出れば、次は4番の甘野(あまの)との対決だったのに”


 “そうですね。打率10割の甘野との対決は、次の2回へと持ち越しです。まあ、これも一つ楽しみな対決になります”




「ふぅー。大丈夫か、タマ子ちゃん?」

「え? 何がです?」

「すまん、テツ子、タマ子ちゃんの右手を見てやってくれないか?」


 ベンチに戻った多澤は、ベンチに座るなり、すぐに珠子(たまこ)の様子を確認するように徹子に頼んだ。




(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。