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『銀河遺産の管理人(システム・アドミ) 〜拾った宇宙船AIのオーバーテクノロジーで、枯れ果てた日本を世界最強の技術国家へ作り替える〜』  作者: seri


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第4話:不落の島、エネルギー革命(中編)

日本中の電球が「核融合」の光を宿したその時、如月重工本社のロビーは、もはや戦場と化していた。

 だが、混乱する群衆をかき分け、まるでそこだけスポットライトが当たっているかのように優雅に歩く一人の女性がいた。


アリス・ブランシュ。

 燃えるような金髪をなびかせ、身体のラインを強調するタイトな深紅のドレスに身を包んだ彼女は、受付の警備員に微笑みかけるだけで、厳重なセキュリティを魔法のように無効化していく。


「――お邪魔するわね、日本の『若き王様』」


執務室の重厚なドアが、ノックもなしに開かれた。

 凪が瞬時に和也の前に立ち、隠し持っていた特殊合金のタクティカルペンを構える。だが、アリスは怯むどころか、妖艶な流し目を和也に送った。


「怖い顔をしないで。私はただ、世界で最も『熱い』男の顔を拝みに来ただけの、か弱いフリーライターよ」


「……凪さん、下げていい。エリス、彼女の正体は?」


『マスター。フリーライターというのは99%の嘘ですね。彼女の本籍はフランスですが、欧州連合(EU)の統合諜報機関、および複数の多国籍企業の「調整役」を務める超一流のスパイです。……ついでに言えば、そのドレスの裏地には、貴方の脳波を読み取る微弱なセンサーが仕込まれていますね』


エリスが冷淡に暴露すると、アリスは「あら」と小さく唇を噛んで、茶目っ気たっぷりにウインクした。


「お利口なAIね。でも、機械に頼りすぎる男は、女の本当の熱量を見誤るわよ?」


アリスは凪の制止をすり抜けるような滑らかな動きで、和也のデスクに歩み寄った。彼女からは、高価な香水の香りと、どこか危険な硝煙の匂いが漂ってくる。


「佐藤和也。貴方が今日やったことは、世界を救う『聖業』なんかじゃない。これは、既存の世界システムに対する最悪の『テロ』よ。中東の王族は激怒し、欧米のエネルギーメジャーは貴方を消すために、すでに暗殺チームを送り出しているわ」


「知ってるよ。だから、先にスイッチを押したんだ」


和也は動じず、アリスの瞳を真正面から見据えた。


「敵が準備を整える前に、世界を『戻れない場所』まで進めてしまえばいい。エネルギーが無料になった世界で、誰がわざわざ石油のために戦争をする?」


「……ふふ、理想論ね。でも、嫌いじゃないわ」


アリスは和也のネクタイに指をかけ、至近距離まで顔を近づけた。吐息が触れるほどの距離。怜奈が背後で「……っ、ちょっと!」と声を荒らげるが、アリスは構わずに囁く。


「ねえ、和也。その技術、私と一緒に『正しく』管理しない? 私なら、貴方を世界の影の支配者にだってしてあげられる。貴方に必要なのは、泥臭い開発室じゃなくて、私のような『耳』と『唇』よ」


『マスター。彼女、右手の爪に高濃度の麻酔薬を塗布しています。……どうしますか? 今すぐその指を重力でへし折りますか?』


(待て、エリス。……彼女は、ただの敵じゃない)


和也はアリスの手首を掴み、その妖艶な微笑みをはねのけた。


「アリス。あんたが誰に雇われていようが関係ない。……俺を誘惑するより、俺がこれから作る『新しい地球』の特等席を予約する方が、あんたにとっても得なはずだ」


「……!」


アリスの瞳に、初めてスパイとしての冷徹な計算ではない、純粋な「驚き」が走った。


「面白いわね……。私の誘惑が効かない男なんて、ベルリンの老スパイ以来だわ。……いいでしょう。佐藤和也、貴方がどこまで本気で世界を壊すつもりか、一番近くで『取材』させてもらうわ。……断っても無駄よ? 私は一度狙った獲物は、骨までしゃぶる主義なの」


こうして、欧州最強のスパイまでもが、監視という名目で和也の周囲に陣取ることになった。

 だが、アリスの警告は現実のものとなる。


『マスター。レーダーに反応。……太平洋上、および日本海側から、所属不明のステルス爆撃機が多数、日本の領空へ侵入しようとしています。……どうやら、言葉での交渉はここまでのようですね』


「……ああ。エリス、日本の『盾』がどれほど強固か、世界に見せつけてやろうぜ」


和也の目が、エンジニアから「統治者」のそれへと変わった。

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