死後の世界(1)
全てを理解した。
ここに到達して分かった。
自分がやったことはとても無意味なことだった。
死ぬというのは無に返ることだ。
“自分”という生き物は、たくさんの“命”からできていた。
それは毎日、生まれて死んでいた。
細胞一つ一つが“魂”だったといってもいい。
細胞には、“再生系細胞”と“非再生系細胞”がある。
再生系細胞は、皮膚や内臓だ。
一定の周期で細胞は生まれ変わっている。
非再生系細胞は、心臓や神経や脳。
そこに“自我”つまり“心”がある。
たくさんの“命”の集まりが、生物。
そして死んだ“命”は、この“死後の世界”に集まってくる。
死後の世界は天国でも地獄でもない。
1次元の世界。
何かがあるか、何もないのか、それもわからない。
1つの世界。
すべての命が一つになった世界。
もともと誰の“命”だったのか、そういう区別は無い。
多数であり、一つであるもの。
現世にあるもので例えるなら。
この“死後の世界”は、“生命の海”。
生き物は、空のバケツ。
生命の海からそのバケツに水を入れると、生き物が“生きる”。
バケツから水を海に返すと、生き物が“死ぬ”。
そして重要なのは。
細胞の新陳代謝に合わせて、バケツの水は常に出たり入ったりしている。
水は再利用されている。
誰かのバケツに入っていた水が、自分のバケツに使われる。
そんなことをこの世界では生き物が生まれてから延々と続けられている。
つまり。
全ての生き物の“命”の根源は一つ。
生き物は全て同じ命を共有している。
自分と自分以外も同じ“命”。




