決行
両親にはさりげなく大学の馬鹿な奴という触れ込みでコウノの話題をした。
あまり大学の話はしたことがないから、記憶に残るだろう。
意外とうまくいかない。
毎日、42℃くらいの湯船に浸かって試している。
何度か試していて眠くなる条件があることが分かってきた。
浴槽内の温度と湯船の温度差が必要である。
差があまりないと眠くならないのだ。
その日の温度にも影響される。
やはり日中は冬とはいえ気温も高くなるから温度差が出にくい。
なるべく朝早いほうがよいが、早い時間はまだ両親がいる。
食事も抜いてはいけない。
食後1時間以内は血圧が下がるようなのでその間に入るほうが効果的だ。
飲酒するとさらによいが朝から飲酒は一緒に朝食をとっている手前難しいし、飲酒してお風呂は“自殺行為”だろう。
眠くなるような食材が常に冷蔵庫内にあるように“朝食べたいもの”をリクエストしている。
牛乳、チーズ、アーモンド、チョコレート、卵。
これらはトリプトファンが多く含まれた食材。
約1時間後には眠くなる。
あと、効果があるかどうかはわからないが、睡眠時間は短くしている。
挑戦を始めてから4日経った。
そして遂に今日。
すべての条件が完璧に揃った。
父は出張で前乗りのため、昨日からいない。
母はゴミ出しを兼ねて少し早めに出勤した。
寝ぼけ眼を装いながら母を見送ってから、食事の用意をする。
朝食後、お風呂に熱めのお湯を入れる。
温度は43℃。
浴槽のふたはきっちりと閉めて、浴室内に湯気がいかないように。
換気扇も回して、漏れ出た湯気も逃がす。
浴槽にお湯が満たされたことを知らせるチャイムが鳴る。
浴室が湯気で暖まる前に浴槽に飛び込む。
肩まで浸かり、目を閉じる。
そして遂に。
湯船で猛烈な睡魔に襲われる。
なるべく身体が勝手に浴槽を掴んだりしないように、手は組んだ。
睡魔に抵抗することなく全てを受け入れる。
このまま成功してほしい・・・。
でなければ、餅の丸呑みに挑戦することになるから・・・。
思考もできなくなってきた・・・。
次に目覚めたときはどの世界だろうか・・・。
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