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おやくそく

 夕暮れに自分の家と逆方向の電車に乗る違和感。そして降り慣れない駅に到着する。

 先程から二宮金二郎みたいに教科書と睨めっこしながら歩いていた瑠奈が改札を出てすぐのコンビニの前に立ち止まる。


「そうです。晩ご飯買っておかなくちゃ」

「あり? コンビニ飯なの?」


 お嬢様がコンビニ飯なんて何だかかなり意外だ。


「テスト期間中ですからね。普段はお手伝いさんの作り置きか完士君の手作り、私も作ったりするのですが、今日はお手伝いさんはお休みで今はテスト期間中ですので、その時間を勉強に当てています」

「なるほどね」

「ですので、今日の晩ご飯をここで調達しましょう。ふふ。知ってました? コンビニのご飯って意外と美味しいんですよ?」

「へぇ。そうなんか」


 普段食べる朝、昼、晩のご飯は全て雫の手料理だから、コンビニのご飯何て食べる機会がない。

 そもそもコンビニにあんまり行く機会がないな。

 帰ったらお菓子あるし、ジュースもあるし。


 ――雫には感謝しないとな……。


 そんな雫から返信がない。一応『完士の家に泊まるわー』と言っておいたが、あの頭の良い雫が気が付かない訳がないもんな……。返信ないの怖すぎるよ……。


「どうしました? 少し顔色がよろしくありませんよ?」

「い、いやいや。そんな事ないよ?」

「ふふ。そうですか。では、そんな所に突っ立ってないで晩ご飯買いに行きましょう」

「あ、ああ――」




♦︎




 お互いコンビニ袋をぶら下げて2回目の瑠奈の部屋へと入る。

 あれから全然時間が経過していないので、部屋の様子は相変わらず綺麗に片付いており、ザ・お嬢様といった部屋である。


「先に勉強して、飯食って勉強って感じにする?」


 コンビニ袋をテーブルに置かしてもらい、瑠奈に尋ねると「はい」と素直に頷いてくれる。


「それじゃあ早速始めるか」

「お願いします」


 何だか家庭教師と生徒みたいな感じがして、邪な事を考えてしまう。

 よく、企画物の大人のピンクビデオであるシュチュエーションだよな……。

 そういや、瑠奈って下ネタ苦手なんだっけ? いや……あれは雫の予想であって実際に見て聞いた訳じゃないから分からないよな。

 実際、脇をツンツンしても良いって言ってるんだからエロに対して耐性はあるだろう。

 ガードも何処か緩い感じだし「あ、手がクソつまらないギャグ並に滑った」とか適当なこと言っておっぱい触っても「仕方ないですね。生で触ります?」とか言ってくれそうな気がする。


「――時人君?」

「あ! はい!」


 焦った声が出てしまう。


「どうかしましたか?」

「い、いや、別に……」

「まさか――」


 瑠奈が不審な表情を見せてくる。

 もしかしてエロい事考えてるのバレたかな? 女性は男の視線すぐ分かるって言うもんな……。あーやべ……。ごめんなさい。でも瑠奈の身体がエロいのに見ないとか礼儀に反するでしょ?


「――私、相当まずいですか?」

「――へ?」

「時人君、難しい顔していたので……。このままじゃやっぱり赤点ですか?」

「い、いやいや! そんな事ないぞ! うん! イケるイケる! 頑張ろう!」

「本当ですか?」

「ホントホント! ほら! がんばるんば!」

「はい! 頑張ります!」


 ――っぶねー……。良かったー。バレてなくて。


 あかんあかん。瑠奈は純粋に勉強をしているんだ。教える側がこんなのでどうする。

 俺は心の中で気合いを入れ直して瑠奈の勉強を見てやる。




 ――ふと時計を見ると結構な時間が経過していた。少し休憩にするか悩んだが、瑠奈の集中力は切れていないのでこのままやっても良いな。


 そんな事を考えていると部屋のドアがノックされる音が聞こえた。


『お嬢様。失礼いたします』


 完士の声がドア越しから聞こえてきたので瑠奈はペンを置き「はーい」と返事をする。


 その返事を聞いて完士が執事の格好をして中に入って来た。


「お風呂の準備が出来ました。如何なさいますか?」

「お風呂?」


 瑠奈は首を傾げて時計を見ると「あー……」と声を出した。


「もうこんな時間なのですね。分かりました。入ります」

「かしこまり――ました」


 完士がチラリと俺を見てきた。睨んでる訳ではなく、注意深く俺を見ている様子である。


「時人君。先にお風呂先どうですか?」

「風呂? いや、良いよ。瑠奈が先に入りな」

「お客様が先に入るのが常識。私は後でいただきますので」

「いや、瑠奈めっちゃ集中してたし休憩がてらに先にどうぞ」


 そう言うと瑠奈が折れて「そうですか?」と立ち上がる。


「では、お先に失礼しますね」


 そう言って瑠奈は部屋を後にした。


「――で? 完士。お前は何で俺をそんなにジロジロと見ているんだ?」


 そう尋ねると「いやいやいや!」と怪しく手をブンブン振ってくる。


「滅相もない」

「怪しいな……」

「何も怪しくないっての。お前のメイドに脅迫されてもしもの事がないか見張れなんてそんな事――」


 わざとらしく白状してくる。


「――それ言って良いやつ?」

「まぁ……むしろ釘刺しとけみたいな?」

「お前と雫のヒエラルキーどうなってんだよ」

「あれには勝てない……お嬢様以上だ……。かと言ってお嬢様の命令は無視出来ないし……」

「お前の立ち位置哀れだな……」


 何とも可哀想な執事さんだこと。


「ホントな……。――あ、時人も風呂入るか?」

「いや、入りたいよ? 一緒に入りたいけど……お前……」

「違う違う! お嬢様と一緒なんて恐れ多い。客用のシャワールームがあるんだよ。お前別に風呂浸かるタイプじゃないだろ?」

「そうだな。スーパー銭湯は好きだけど、普段はシャワーで済ますな」

「だろ? 2人交代で風呂入ると時間かかるし、ササっと入って勉強した方が効率良いだろ?」

「それもそうだな。それじゃあそうさしてもらうわ」

「シャワールームは2階の突き当たりの部屋だから」

「あいよー」


 完士に場所を教えてもらい俺はシャワールームへ向かった。




 彼の言った通り、2階の突き当たりに分かりやすくシャワールームと書かれた部屋があったので鼻歌混じりでその扉を開く。


「――え?」


 部屋を開けると簡易的な脱衣所となっている。簡易的と言っても俺の今住んでいる家の脱衣所より何倍も広い。


 そこに生まれたままの姿で身体を拭いている美少女と目が合ってしまう。


 視線は自然と彼女のちょっと下にいってしまった。


「大きなメロンさんが2つ……」


 先っちょに可愛らしいサクランボが付いていて俺のバナナが熟してしまう。そんなバナナから変な液体も出た気がした。


「キャアアアアアア!」


 悲鳴と共に美少女は持っていたタオルを俺に向かって投げてくる。


 しかしながらタオルは俺の所まで届かず、手前に落ちてしまう。


 サービスタイムは終わらない。


「時人君のエッチ!! 出てって!!」


 そう言いながら身体を隠されてサービスタイムが終了した時に我に返る。


「ご、ごめんなさーい!」


 そしてシャワールームの扉を閉める。


「……」

「……」

「――何で!? 出て行ってくれないの!?」

「ち、違うんだ瑠奈! 俺は! まだお前の裸が見たいだけなのか!? そうなのか!?」


 自分でも訳分からない事を言うと瑠奈は涙目で叫んだ。


「早く! 出てって!」

「すみません!!」


 次こそはシャワールームを出て行った。




♦︎




 一体何分位正座をしているだろうか。

 あれから瑠奈の部屋に戻り怒涛のお説教が始まった。


 瑠奈は客である俺に気を使って普段使わないシャワールームを使用したらしい。それが仇となるとはな。


 しかし……そんな事してるより勉強した方が良いんじゃない? と口に出そうとするが、完璧に俺が悪いので反論は出来ない。

 だが、彼女の言葉は俺の脳内には侵入してこない。何故なら瑠奈のおっぱいが大き過ぎたからだ。あんなもんぶら下げてるのかよ……。あんなん俺のマイエンジェル達より余裕でデカいぞ。

 もし、瑠奈と付き合ったり結婚出来たらあれを好きに出来るのか……。ヤバイな。俺のバナナ止まらないな……。


「――聞いてるの!?」

「は、はひっ!」

「全く……。ダメなんだからね! 女の子の裸何か簡単に見たら! 分かった!?」

「申し訳ありませんでした」

「――はぁ。もう……。次は無いからね? 良い?」

「はい。分かりました」

「――じゃあ……勉強の続きしよ」

「保険の勉強?」


 あ、やべ……。俺は何を口走ってるんだ……。


「――は?」


 瑠奈が、あの瑠奈がブチ切れの表情をしてくる。珍しい。いつも表情だけは温厚な彼女のキレ顔。写メ撮りたい。


「い、いやいや! 数学だ! 数学の勉強しよう」

「はぁ……。よろしくお願いします」


 呆れた声を出されたが、俺達は切り替えて数学の勉強を始めた。

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