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青団テーマ決定

「あ、あははー。話がズレちまったな……」


 筋肉ダルマ先輩の宇治金時解答により、かき氷論争はアホらしくなり終了した。

 筋肉ダルマ先輩は先程と同じく腕を組んで瞑想していた。


「――じゃあ……星野。何かある?」

「そうですね……『青』……」


 雫は手を顎に持っていき考える。


「――『地球』……とか?」

「おお! 壮大だな」


 ギャル先輩が『海』の横に『地球』を書く。


 ちなみに『かき氷』は論争になるので、平和の為に消されてしまった。


「うーん。ここまで『空』『海』『地球』か……。一貫性がある様な、ない様な……」

「改めて見ると、ここまで『自然』な物しか案が出てませんね」


 雫の言葉に「あー! 確かに」と妙に納得してしまい声が出てしまった。


「キャラクターなんかもいますもんねー」


 そんな朝倉くんの言葉に「――ドラちゃんとか……」と、未来からきたタヌキ型ロボットを五十嵐さんがボソリと言う。それにギャル先輩が「そーそー」と肯定しながら頷く。


「キャラクターもいるよな」

「――『高校野球』だな!」


 唐突に筋肉ダルマ先輩の声が教室内に響き渡る。

 また、脈略もない、意味不明な言動を放ち出す。


「ランプの魔人とかも青になるかな?」


 ギャル先輩は無かった事にして俺達に問いかける。


「あー。確かに青いですね」


 俺も無かった事にしたかったのですぐにギャル先輩に反応する。


「『高校野球』だ! 塩路!」

「――だーらっ! うるせっ!」


 流石に2発目はうざかったのか、つい反応を示してしまった。


「んだよ!? 何で『高校野球』なんだよ!?」

「『青』春だ!」

「却下」

「――なぜだ!? 高校野球といえば青春だろ!」

「高校野球だけじゃなくて、高校サッカーだって、高校バスケだって青春だろうが!」

「――確かに!」

「分かったなら、お前も別の事を何か考えろ!」

「――ふむ! ではこういうのはどうだろう!」


 筋肉ダルマ先輩は立ち上がりギャル先輩の隣に立つと俺達を見渡して説明をしてくれた。


「『昔々、ある所に浜辺でいじめられているドラちゃんがいました!』」


 いきなりどした!? 何が始まった!? 


 全員が急に始まった昔話に唖然としている中、そんなのはお構いなしに筋肉ダルマ先輩が続ける。


「『浜辺でサーフィンをしていた太郎はそれに気が付いてドラちゃんを助けます!』」


 何でサーフィンなんだろうか……。そもそも何でドラちゃんが浜辺でいじめられている? 百歩譲って浜辺でいじめられてるのはドラちゃんの相棒のメガネくんだろ。


「『助けてもらったドラちゃんはお礼に竜宮城へ案内して、そこでお姫様と出会い』――からの! 応援ダンス!」

「――なるほど、ストーリー仕立てですか……」

「面白そう……」


 先程の反応とはうってかわり、1、2年女子には案外受けが良さそうだ。


「でも、短い時間でそれを表現出来るか?」

「そういえば応援合戦って何分与えてもらえるんですか?」


 朝倉くんの質問にギャル先輩が答える。


「2分位かな」

「2分あれば出来そうな気もします」


 五十嵐さんが言う。


「五十嵐はやりたい派か?」

「――あ、その……」


 五十嵐さんは少し縮こまり小さく頷いた。その様子を見た雫が援護する様に言い放つ。


「私も五十嵐さんと同意見です。2分あれば表現出来るかと」

「――でも、そういうのってクラス全体でやる物ってイメージじゃない? 少人数でやるのって、やっぱ去年みたいな感じじゃない?」


 俺が言うと朝倉くんが「去年ってどんな感じだったんですか?」と聞く。


「去年って言うか、毎年だけど、太鼓と笛の音に合わせて声を出しながら振り付けってのが普通だな。時間ないし」

「――塩路! 俺達は何年だ!?」

「隣でいきなりうるせーよ!」

「俺達は3年だ!!」


 自問自答しだした。


「3年間! 同じ事の繰り返しで良いのか!?」

「――それ――」

「そうだな! ダメだな!」

「まだ、答えてねーよ」

「最後の体育祭! 目立たなきゃだめだろ! お前は見た目の割にそんなんでいいのか!?」

「見た目いじってくんなや!」


 そう言いながらギャル先輩は頭をかく。


「――まぁ? お前の言う事は分かるけどな……」

「なら! 目立つ為にも! 皆と同じ事をしたらダメだ! 違う事をしよう!」

「――みんなはそれで良いのか?」


 女子2人は速攻で頷いた。

 俺と朝倉くんは目を合わせて頷く。


「――よしっ! 決まりだな!」


 こうして、我が青団の『テーマ』が決定したのであった。




♦︎




 今年度、青団のテーマは筋肉ダルマ先輩の意見を参考に『竜宮城』という事で話が固まった。

 竜宮城は海の中にあるし、我が団の色にピッタリのイメージだと思われる。


 ストーリー仕立てなので今から配役を決める事になった。


「松井。お前ドラちゃんな」


 黒板に書かれた配役のドラちゃんの所をチョークで叩きながらギャル先輩が言う。


「どこまでもドア!」

「可愛くねーし! ちょっと道具の名前違うし!」


 どうやら筋肉ダルマ先輩はやる気みたいだ。


「――ほんじゃ姫さんは……。星野だな」

「――え?」


 いきなり言われて雫は目を丸くした。


「そうですね。星野先輩はお姫様って感じしますよ」


 朝倉くんの言葉に五十嵐さんもコクコクっと頷いた。


「――そ、そうかな? あはは……」


 後輩に言われて満更でもない表情を見せる。

 俺には分かる。コイツめっちゃ喜んでいると。


「――あ! でも……お姫様って事は……学ラン……」

「学ラン?」

「学ラン着てるお姫様ってありですよね!?」

「なしだろ」


 ギャル先輩が即答で雫を斬った。


「でも! 学ラン着たお姫様って目立つと思いませんか?」

「既に筋肉ダルマがドラちゃんやる時点で目立つから大丈夫だ」


 その意見に俺も賛同だった。


「確かに、この人数なら変わり種は1つで十分だろ? 多すぎたら悪目立ちになる」

「――で、でも……」

「去年は学ラン着てカッコいい星野だったんだから、今年は可愛い格好した星野が見てみたいな」

「――あ……えっと……」


 俺の言葉に雫が頬をかきながら困惑の表情を見せる。


「なんだよ……。お前ら付き合ってるのか?」

「はい?」

「そんなナチュラルな台詞をよくもまぁ恥ずかしげもなく言えるもんだ」

「恥ずかしい台詞でした?」

「自覚なく言ってる時点でお察しだよ」


 そう言ってギャル先輩は無い胸をドンと叩く。


「任せな! 星野にピッタリな可愛い衣装作ってやっから」


 あー、そういやこの人中学は手芸部だって言ってたな。

 というか、もう衣装係もナチュラルに決まったな。


「――じゃあ! 太郎役は堂路だな!」


 筋肉ダルマ先輩が提案してくる。


「え? 俺っすか?」

「そりゃ星野が姫さんなんだから」

「バッテリーだしな!」


 朝倉くんと五十嵐さんもコクコクと頷いている。

 どうやら勘違いされているらしい。それは正直どうでも良いのだけど……。


「ギャル先輩じゃなくて良いんですか?」

「おーおー。照れとる照れとる。照れるなって! 若いなー! かっかっかっ」


 ギャルというよりおばちゃんみたいな笑い方をしているな。


「いや、最後の体育祭なのにギャル先輩が主軸の役じゃなくて良いんすか?」

「あー……」

「大丈夫だ! 塩路はいじめっこAが似合う!」

「てめーが言うな!」


 ギャル先輩のツッコミの後に雫が申し訳なさそうに言った。


「そうですよね……。3年生は最後の体育祭だし。ギャル先輩がお姫様役で――」

「いや、ウチは良いよ。あんまり目立ち過ぎるのは好きじゃないし」

「その見た目で?」


 つい言葉に出してしまい「うるせっ」と言われてしまう。


「そもそも応援合戦に出たかっただけだから、どんな風になろうとも出れたら何でも良いんだよ」

「そうですか……」


 どこか役を譲りたがっている雫だが、ギャル先輩の言葉に素直に頷く。


「ほんじゃ朝倉と五十嵐もいじめっこと竜宮城の魚役で良いか?」


 2人は共に頷いた。


「じゃあ決まりだな。『浜辺でいじめられて、太郎に助けてもらい竜宮城へ招待するドラちゃん役』を松井。『そのドラちゃんを助けてお姫様と楽しい時間を過ごす太郎役』を堂路。『お姫様役』を星野。『いじめっこプラスそこら辺の魚役』をウチと朝倉と五十嵐。これで決定! いえーい!」


 ギャル先輩がパチパチと拍手をしたので、それに合わせて俺達も拍手する。


「よし! それじゃあ今回はここまでだな。次回は振り付けとか曲とか色々決めよう」


 こうして今年度、青団の『テーマ』が決定したのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 浦島太郎とドラえもんと応援団は混沌としすぎてる笑
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