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第十八話 罠

 王都でスタンピートが発生している頃、エレクはザルクが領地しているドレーク領の近くにいた。王都から南の方角に位置する領地だ。そこにはスタンピートの影響はなく平和な様子だった。

 エレクはその近くの森の中にある小さな村だった場所を訪れた。その場所はかつてエレクが育った村であり、魔人に襲われた村だった。エレクはその村の唯一の生き残りであり、襲った魔人に復讐するために力をつけていた。


 「お母さん、ただいま。まとまったお休みが取れたから久しぶりにきたよ」


 エレクはかつて家だった場所で座り込んで、両手を顔の前に合わせて拝んだ。


 「私、賢者を辞めることになったの。五年前、ユアン君っていうすごく強い子供がいるんだけど、魔人と戦ったときに腕を失っちゃってさ。でも、今のユアン君を見てると、賢者にふさわしいって思っちゃってさ、陛下に辞めることを言ったらソイ爺まで辞めることを言ってたみたいで二人の賢者が辞めることになったから王都では少し大騒ぎになって少し困ったよ。でも、ユアン君とケント君が新しい賢者になった姿を見てちょっと感動しちゃったんだ。あの子達なら任せられるって思ったんだ。長話しちゃったかな?また今度来たときに面白い話があったら話すね。またね」


 そう言ってエレクは立ち上がって元来た道を戻ろうとした。

 すると、元来た道の方から大きな魔力が近づいてくるのがわかった。エレクは戦闘態勢に入り、そいつの姿を見せるのを待つ。森の中から現れたのは魔人だった。


 「あ、あなたは......」




 ***



 ケントは魔人との戦いに苦戦していた。ケントが魔人に攻撃しようと近づいても地面を踏み込んだ瞬間に爆発する。


 「クソ...なんだよこれ」


 爆発に巻き込まれてもケントの魔力が多いおかげでほぼ無傷だった。


 「クックック、丸腰でお前と戦うわけないだろ。何もしないでお前と戦ったら必ず負けるに決まってんだろうが。せいぜい時間稼ぎをよろしくな」

 「時間稼ぎだと?」

 「あれ?言ってなかったか?この戦いは無駄ってことさ。俺を倒したところでスタンピートが止まるわけじゃない」

 「それじゃあ本当に倒さないといけないのは...」

 「そう。この国の中心部にある街、王都さ。王都にはプト村やナイル村に放った魔物が十数倍の魔物がすぐそこまで近づいている。お前らの国は今日地図から消えることになってるんだよ!」


 ケントはそれを聞いてニヤリと笑った。


 「十数倍の魔物が王都に近づいてる?笑わせんな。王都にはユアンっていう化け物がいることを忘れんな。魔物の千や二千、王都にいる残りの賢者たちと冒険者が簡単に片付けてくれる」

 「さぁそれはどうかな?王都には魔物だけじゃなくて魔人もいることを忘れんな」

 「魔人だと?...そういえば魔人にあったら聞かなきゃいけないことがあったな...お前カラーって組織を知ってるか?」

 

 魔人はケントの放った言葉に少し驚くが、すぐに相手を挑発するような言い方の戻る。


 「お前の口からその名前を聞くとはな。ああ、知ってるよ。俺もその一員だからな」

 「何!?」


 ケントに衝撃が走る。魔人はそもそも団体行動はしない。種族が違うし、魔人になっても強さを求めるために平気で魔人同士でやりあうことは少なくない。それが組織化しているとは聞いたが本当に存在していたとは思わなかった。


 「だけど、俺は名前をもらっちゃいねぇ」


 魔人はさっきの言葉に付け加えるように話を続けた。


 「俺がいる組織には属性ごとに名前がもらえるようになっている。俺の属性は火だが、赤というコードネームは貰っちゃいない。その名前を持っているのは組織の中でも一人だけ。その名前をもらうためには、コードネームを持ってる奴を殺すか、魔王様が直々に命令するかの二つだけだ」


 魔人の言うことに驚きを隠せなかった。


 「魔王だと...?」


 魔王は初代勇者が倒したとされている伝説の魔物だ。それが現代に復活したとは到底思えない。


 「あり得るわけないだろ!魔王?そんなものがいるはず....」

 

 ケントの言葉を遮るように魔人が割り込む。


 「いるから俺らが従ってるんだよ。コードネームを持っているやつは俺らと違って魔力が桁違いだ。なのにそいつらまで魔王様に従ってるんだ。ここまで言えばわかるだろ。魔王様はコードネームを持っている奴らよりも強いってことがな」


 こんな重要な情報をあっさりと吐くとは思えなかった。魔王が存在していること自体が怪しいと思ったケントだったが、本当だった場合一刻も早くこの情報を世界中に知らせなければ、全ての国は魔人たちに滅ぼされることになる。


 「それを聞いたら、すぐに終わらせないとな」

 「できるものならやってみな。そこら中に罠は仕掛けてある。お前の魔力なら怪我はしないと思うが俺のところにたどり着く頃にはもう時間はない」


 魔力探知で気配を探っても罠が仕掛けられているのかはわからなかったが、踏まなければいい話だった。

 ケントは風魔法を体に纏い、地面を蹴らず木を足場にして一気に魔人に近づき、魔人の腹部に思い一発を入れた。魔人はくの字に折れ曲がってそのまま後方へと吹っ飛ばされ、木にぶつかり停止した。

 木で停止した魔人を見てとどめの一撃を入れようと殴りかかろうとした瞬間、魔人はケントをものすごい形相で睨みつけた。


 「これで終わると思うなよ!!!!後数秒で俺の体が爆発するようにした。威力はこの付近を更地にできるほどの威力だ!!お前たちとプト村も全部ぶっ壊してやるよ!!!!!」


 攻撃態勢に入っていたケントはもう止めることはできなかった。


 今ここで攻撃しても結局爆発する。俺はユアンみたいにまだ結界魔法が使えない...くそ!どうする...考えろ!


 この状況でいい策は見つかる可能性は極めて低かった。魔人に攻撃しようとした瞬間、後方からしわがれた声が聞こえてきた。


 「そのまま行け!ケント!」

 

 ケントは振り向かずに魔人にとどめを刺した。数秒経っても爆発することなくしたいだけが残っていた。


 「ふぅ...間に合ったわい」


 後ろを振り向くとソイルがおでこの汗を拭っていた。


 「ソイ爺、来てたんだ」

 「来てたんだって... お主な、魔人が爆発しなかったのはわしのおかげじゃろうが!」

 「やっぱソイ爺の魔法なんだ」

 「わしの魔法の泥沼吸収(ドレイン)じゃよ。相手の魔力を吸い尽くす魔法じゃが、相当難しい魔法じゃったんだろうな。少し魔法を吸っただけで術式が簡単に壊れよった。この魔人がもっと力をつけていたらおそらくは...なんて考えたくないのぉ」


 ソイルは魔人が死んだことを確認して死体を魔法袋に入れた。


 「ソイ爺、さっきこの魔人から聞いた話なんだけど......」


 ケントはこの魔人から聞いた話を全てソイルに話した。話を聞いたソイルは落ち着きのない様子だった。


 「その話が本当なら世界は大変なことになる...それよりも王都に大量の魔物が来るならプト村やナイル村の警備は魔力に余裕のある賢者一人に任せて応援にいかなければ。魔人がいることが確定なら尚更急がねば」


 そう言ってソイルとケントはプト村へと全速力で向かった。プト村に着くと村は土の壁で覆われており魔物が入ってこれないようになっていた。

 壁の外にはレインとヴァントがいて、ソイルは急いでさっき話したことを二人に話した。話を聞いた二人は驚愕していた。


 「まさか、魔王が存在している...だと?」

 「それよりもこのスタンピートが魔人の仕業と考えると急いで王都に戻った方がいい。問題は誰が残るか」

 「プト村にはわしが残ろう。魔力も十分余っておるから大丈夫じゃろう。ナイル村はどうするんじゃ?」

 「ナイル村には私が残るわ。精霊化を使ったけど途中でやめたから空っぽってわけじゃないけどヴァントよりかはマシよ」

 「なんだよマシって!」

 「じゃあヴァント、ケント、アイの三人には王都に戻って手を貸す。レインはナイル村にいるアイと交代で良いな」

 「「「了解」」」


 ケント、ヴァント、レインはアイと合流するためにナイル村へと向かった。



 




 

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