第十七話 死闘
あれから三十分ぐらい経っただろうか。
いまだにプト村の周りの魔物は減る事なくヴァントに襲いかかる。ヴァントは精霊化もしないで約百匹以上の魔物は討伐している。ヴァントはそろそろ限界に近づいていた。村の中にいるソイ爺に応援を頼んだが地面の中に魔物がいてそれを討伐しているらしく、誰も助けに来れない状況だった。
「くそ...一向に減る様子がないな...」
ヴァントは苦虫を噛み潰した顔をする。ヴァントの実力は賢者の中でも戦闘が得意の分類に入る。Aランクの魔物なら簡単にで倒すことができる。だが、魔物の群れとなると話が違ってくる。単体だけなら魔力を少し多くして撃てば簡単に倒すことができるが、群れともなると魔力を温存しながら戦うことになる。そうするとAランクの魔物でも簡単に倒すことはできなくなる。精霊化を使えば倒すことは容易だが、もし全て倒すことができずに精霊化が解けてしまったら、確実にヴァントは命を落としてしまう。そうなるとプト村の周りには土で作られた壁はあるが、守る人はいなくなり、プト村は壊滅してしまうのは時間の問題だった。
ヴァントは上級魔法を連続して撃ち続ける。村に被害が出ないように調節はしているが、通常の力が思う存分発揮できていなかった。ヴァントは肩で大きな息をしている。上級魔法を連続で撃って一気に魔力が減って疲れている。背後から魔物が襲いかかってきたが、反応できずに攻撃を喰らってしまった。
「ぐあっ!」
目が赤く大きな熊に鋭い爪で肩を切り裂かれた。ヴァントの右肩から血がすごい勢いで血が垂れる。大量に出血したせいで目の前がぼやける。その隙をついて魔物達は一斉にヴァントに襲いかかる。
ヴァントは死を覚悟した。
その時、上空から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「水凍の雨!」
ヴァントに襲い掛かろうとしていた魔物達は雨にあたりその場に凍りついていた。その人はヴァントの目の前に降りてきた。ぼやける目で見てみると、そこにはナイル村にいるはずのレインだった。
「お前...どうして...」
「ナイル村の魔物はアイちゃん一人で倒しちゃったから、私が暇でね。それにこっちのほうが量が多かったからアイちゃんにナイル村は任せてこっちにきたんだ」
「そうか...それならよかった...」
「そんなことよりヴァントがそんなにやられるなんて久しぶりに見たかも」
「うるせーよ。こっちはずっとAランクだらけの魔物を倒してんだよ。疲れるに決まってんだろ!」
「はいはい。それよりまだ戦えるの?」
レインはヴァントを挑発するかのように笑いながら聞いた。
「ったりめーだろ!お前がいるならあれやってもいいだろ」
「そうだね〜じゃあやりますか」
ヴァントは肩の傷を押さえながらレインと声が重なった。
「「精霊召喚!!」」
二人の前には五歳ぐらいの子供姿をした精霊が立っていた。
『なんだよヴァント〜。傷だらけじゃねーか〜。オイラが認めてやったんだから最強でいろよ〜』
「今はピンチなんだ。話ならあとでだ!」
『レインちゃんひっさしぶりだね!元気そうでよかった!』
「スイちゃんも元気そうだね。それよりも一緒に戦ってくれる?」
『いいよ〜』
「「精霊化!!」」
二人の前にいた精霊はいなくなり、ヴァントには緑色のローブが、レインには青色のローブに変わっていた。
「さて、行くか!」
ヴァントが魔物達に腕を払うと強風が出て、風に当たった魔物達は風の刃で切り刻まれて行った。
「相変わらず派手だね〜」
そう言ってレインはプト村に被害が出ないように雨を降らせた。ヴァントはやばいと思い二つの魔力障壁を出して自分に当たらないようにした。雨に当たった魔物達は先ほどのように凍ることはなかった。だが、次第に魔物の動きが悪くなっていき、その場に倒れてしまった。倒れた魔物を見てみると体中の水分が抜けたようにカラカラの干物みたいだった。
「死の雨。私のオリジナル魔法の効果はすごいでしょ!って誰も聞いていないか」
レインは地面に倒れている魔物を見ながらボソッと呟いた。五分ほど戦っていると魔物の数は急激に減りあと少しで全滅できそうだった。
「これならすぐに終わりそうだな」
「そうだね。じゃあ後は任せるよ」
レインは精霊化を解いた。ヴァントは残りの魔物を倒し終わると自動的に精霊化が解かれた。ヴァントはその場に倒れ込んだ。レインが慌てて近くに寄る。ヴァントは魔力切れと大量の出血で危険な状態だった。レインは持っていた魔力回復する薬をヴァントに飲ませた。ヴァントは起き上がれるほどの魔力を回復した。
「はぁ...死ぬかと思った」
「私が来てなかったら確実に死んでたね。このお礼は高くつくよ」
「お前マジで言ってんの?」
「当たり前じゃん!私はあなたの命の恩人だよ?それぐらいして貰わないと」
ヴァントは何も言い返す言葉が出ず、渋々了承した。ヴァント達は目の前の魔物達だけ倒していた。プト村の中にも魔物がいたことを思い出しすぐにプト村の中を確認した。すると魔物の死体が山積みとなっておりその上でソイルは寝ていた。
「ソイ爺...何をやってるんだ?」
「ん?あぁお主達全部片付いたのか?」
「全部倒したけど、なんでソイ爺は寝てるの?」
「いや、こっちも終わったから助けに行こうとしたら、お主達が精霊化をしたもんじゃから助けに行く必要がなくてな。それで寝ていたんじゃ」
ヴァントはそれを聞いてプルプルと震えている。
「人が死にそうなのになんで寝れるんだよ!どんな神経してんだ?」
「仕方ないじゃろ!賢者なんて引退してるんじゃからワシの勝手じゃろうが!」
ヴァントとソイルがあーだこうだ言っているのを聞きながらレインは魔力探知で周りの状況を確認していた。すると少し離れたところに大きな魔力が二つあり、魔人とケントの魔力だと思われた。
「ヴァント、ソイ爺、ケント君が魔人と戦ってるから助けに行かないと!」
「ふむ、それならワシが行こう。ちょうどケントがどんな戦いをしているのか前から興味があったからな」
ソイルはケントが戦っている方へと走って行った。
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