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第一、 始

「ったく…… 一体何の音だよ」


黒埼は階段を下りながら独り言のようにつぶやく。

1年生の教室は4階にあるため、生徒玄関のある1階に着くまで多少時間がかかる。


「なんで俺一人なんだよ…… 太一も呼んで来ればよかったな」


一人で来たことを若干後悔しているらしい。


「俺も別に怖いの得意じゃないんだよ……」


そう言っている間に黒埼は1階に着いた。

玄関は角を曲がってすぐだ。



玄関を見た黒埼は衝撃を受けた。

しかしその衝撃を理解するまでに時間がかかった。




玄関のガラスが割れている。

翠堂高校の玄関は引き戸式のガラス扉が4つがあるが、外から見て左から2番目のガラスが割れている。

それもかなり大きく。まるで大型トラックが突っ込んだ後の様に。



「……なんで割れてるんだ……」


そう思うのが普通だろう。

いつも毎朝、放課後、当たり前のように通っている玄関がこの有様だ。



しかし、次に黒埼の視界に入ったのは普通ではない







手だ。





玄関にある下駄箱の陰から人の手がはみ出ている。


黒埼の動きが止まる。


「…………!」



理解できない。



「……」



しかし黒埼は手に近づいた。その手の正体を知るために。
























……人で良かった。……いや、よくない……。


















「……せっ、先生!!!」


















坂上英夫。1年4組の担任。血まみれだ。




「先生!? 先生!!!」


黒埼は後頭部から血を流して倒れている坂上に近づき、必死に声を掛ける。


「先生!! なにがあったんですか!!」


そのとき、虚ろな目が微かに生気を取り戻した。


「黒……さ……き……」


今にも消え入りそうな声で黒埼に言う。


「!! 先生!! どうしたんですか!!」


黒埼は必死に声を掛ける。先生の身になにがあったか、そしてこの状況を教えてほしい一心で。


「黒……埼……」


坂上は続けて口を開く。






「1人じゃ……ない……」





坂上は力を振り絞り、それを黒埼に伝えた。


「1……人?」


黒埼はその意味を問おうとしたが、それを言う前に坂上の目から生気が消えた。


「……せっ……先生!? 先生!?」







坂上は死んだ。

何者かに殺された。いや、それも分からない。


「先生! 先生!」


黒埼はまだ呼びかける。死なないでくれと言わんばかりに。











パキッ






「!?」




黒埼の坂上を呼ぶ声が止まる。

辺りに飛び散ったガラスを踏む音が聞こえる。


黒埼は後ろを振り返る。

その選択は正しかった。


















「ウガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」





振り返った瞬間、その大きな咆哮と共に黒埼の頭に何かが振り下ろされる。


「っ!!!!」


黒埼は神懸かり的な反射神経でこれを避けた。

黒埼に当たる筈だった振り下ろされた何かは、黒埼には当たらず床に叩き付けられ、大きな金属音がした。


「なっ……!」


チェーンソーだ。歯は回転していない。

黒埼は態勢を立て直して立ち上がる。


「だ……誰だよ……!」


その大きな咆哮を上げた者は、身長180cmあたり、全身黒尽くめの何かで覆われている。

咆哮の声の低さからして男だろうか。

しかし明らかに人間ではない何かを黒埼は感じた。


黒埼と男は数秒見つめ合った。

見つめ合ったまま、男はチェーンソーの歯を回し始めた。


大きな機械音が響く。




「アアアアアアア!!!」



男がチェーンソーを振りかぶりながら黒埼の方に向かってくる。

動作が大きいため、運動神経のいい黒埼はこれを避ける。


「うわっ!!」


チェーンソーがまた床に叩き付けられ、大きな音がする。

男は態勢を立て直し、また黒埼を仕留めようとする。


その時、黒埼は本能的に逃げるという選択肢をとった。



「くっ!」



黒埼は階段に向かって走り出した。

男も追いかけて来たようだが、バスケ部のスタミナを活かし、これを振り切る。




必死で走った黒埼は、気付くと3階の2年2組の教室の前にいた。



男は追いかけて来ていない。



「はぁ……はぁ……はぁ……」


恐怖を感じて必死で走ると誰でも息が上がるだろう。

乱れた呼吸を整えながら黒埼は頭を整理する――













第一、 終

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