第17話
白と黒が、完全に“重なった”。
統合。
その言葉が、世界そのものの法則として成立し始める。
「……おいおい」
凪の声は乾いていた。
「冗談だろこれ」
視界が二重になる。
自分の体が、自分じゃないようにズレて見える。
弥國の姿も、メフィストの存在も、一瞬だけ“同じ場所に重なる”。
弥國が低く言う。
「凪」
「何だよ!」
「動くな」
「さっきからそれしか言わねぇな!」
「今動くと“統合される”」
「統合って何とだよ!」
その瞬間。
複製凪が一歩踏み出す。
その足音に合わせて。
世界が“同期”する。
(統合率:37%)
凪の頭に、数字が流れ込む。
「……は?」
「今の何だ」
メフィストが静かに言う。
「霧が“選んでいる”」
「だから何をだよ!」
メフィストは凪を見ない。
ただ、崩れゆく世界を見ている。
「残す構造と、消す構造だ」
弥國が短く言う。
「お前は残る側だ」
「なんで分かんだよ!」
「弱点がないからだ」
凪は一瞬黙る。
「それ褒めてんのか?」
「違う」
その時だった。
白の空間に、もう一つの“凪”が増える。
また一人。
同じ顔。
同じ声。
だが、違う。
「統合対象、追加」
「増えてるんだが!?」
凪が叫ぶ。
複製凪たちは、静かに周囲を歩き始める。
まるで確認作業のように。
メフィストが呟く。
「これは戦闘ではない」
「再構築だ」
弥國が銃を構える。
「凪」
「何だ!」
「“運命支配”を使え」
「何にだよ!」
弥國の視線は複製体群へ向く。
「“統合されない未来”」
凪の息が止まる。
「……そんなの作れんのかよ」
「お前ならできる」
短く、断定。
その言葉が、逆に重い。
凪は歯を食いしばる。
視界内。
複製体。
霧。
崩れかけた世界。
「……ふざけんなよ」
小さく呟く。
(運命干渉)
世界が、ほんの一瞬だけ止まる。
凪の視界に未来が流れる。
・統合される世界
・完全に上書きされる自分
・消える弥國とメフィスト
そして。
「……これしかねぇのか」
凪は一歩踏み出す。
「弥國!」
「撃て!」
バンッ!!
雷撃弾。
狙いは複製凪ではない。
その“統合の起点”そのもの。
空間が裂ける。
白と黒が、初めて明確に“拒絶”を示す。
統合率:37% → 0%
世界が悲鳴を上げる。
そして。
霧が、初めて“沈黙”した。




