捕食者現る
楽園の島にやって来たれなたち。しかし、そこにはいるはずのない謎のモンスターが潜んでいた。
襲撃を退けたれなたちはこの島の調査を開始する事に。
森と海岸、日がよく当たる綺麗な草原くらいしか目立ったものがない島。何かが隠れられそうな場所もないがそれ故によく探索するべき場所もあるのかもしれない。
「二手に分かれよう。俺、葵、ラオンは森。れな、れみ、ドクロちゃんは森の奥の草原に向かってくれ」
森の入り口で粉砕男の指示がかかり、れなたちは一斉に散っていく。
地面から生えた長い草をどかしながら調査を開始する粉砕男達を背に、れなたちは草原へと向かった。
まっすぐ走っていくれなたち。木々の隙間から差し込める日差しが、体に僅かな温もりを与えてくれる。
何とも平和な島だ。しかしこんな島ほど狙われやすい事はこれまでの経験上分かっていた。
草を蹴り飛ばしながら、森の奥の明るい光に飛び込んでいく。
「とりゃあああああああ!!」
敵が出た訳でもないのに飛び蹴りを繰り出しながら草原へ飛び出すハイテンションれな。ドクロとれみの入場は普通だ。
広がっていたのは色とりどりの花が並ぶ黄緑の草原。美しい平和な草原だ。
蝶や蜂が花に群がり、鳥達が地上に降りてくる。
天気が良い事もあり、こんな日にこんな場所でピクニックでもすればさぞ良い思い出になる事だろう。
…だが、やはり異変はあった。
「!」
三人が草原の真ん中あたりまで歩いた時、突如周囲に草と土砂が飛び散った!
地中から何かが出てきたのだ。
危険を感じた三人は同時に後ろに下がる!
三人の目の前に現れたのは、二人の戦士だった。
一人は虎縞模様の毛皮を羽織り、鋭い爪を持つ男、もう一人は鮫のような被り物に水色の長髪が特徴の女だった。
二人ともおかしな格好の只の人間に見えるが、今の動きから只者ではない事はすぐに伺えた。
「俺達の領域に現れるとは、貴様ら良い度胸だな!」
男は突然こちらに向かってきて爪を振り下ろす!
れなが蹴りを打ち込む事で衝撃を相殺したが、中々の力だった。
次に鮫女が鋭い牙を見せて飛びかかり、ドクロが両手から黒い光弾を撃って噛まれる前に撃ち落とす!
バランスを崩した二人に、れみがそれぞれ蹴りをお見舞いした!
膝をつく二人だが、この程度では倒れない。
「あんたたちは何者だ!?」
ドクロが問うと、二人は同時に向かってきて、打撃の嵐を叩き込んでくる!
れな姉妹も拳を使って反撃。虎男が大声で語る。
「俺達は捕食者!!お前達のような下等とは別次元の存在だ!」
捕食者…聞いた事のない名前を聞き、れな姉妹は警戒を更に固めて二人を睨む。
二人はこれ以上は語る気がないようだ。
「詳しく話を聞きたいところだけど、まずはこの島から出てってもらおうか」
れなが右手の平を向け、青い光を右手に纏いだす。
捕食者二人の目が、同時に見開いた。
「オメガキャノン!」
叫ぶれな。同時に右手からは青い破壊光線が放たれ、二人を一瞬にして飲み込み、空へと上っていく!
空中で大爆発し、周囲に青い光を拡散させる。
アンドロイドであるれなの必殺技、オメガキャノンが炸裂した。
空から落ち、地面に直撃する捕食者二人。
「出てけ!!」
れなのオメガキャノン、そしてストレートな言葉に圧倒されたのか、二人はすぐに背を向け、れなたちと同じように空を飛んで去っていった。
…平和になった草原地帯。
あのカブトムシも、あの二人の仕業だったのだろうか。
「捕食者か…戻って調べる必要があるな」
粉砕男の言葉に、一同は頷いた。
「くそ、あの島は良い隠れ場所だったのに」
二人の捕食者は、青い海の上を飛びながら、どこかを目指していた。
あの島を狙っていたようだ。人目につかない島だと油断していたようだが、れなたちという思わぬ襲撃者が現れ、やむを得ず撤退する事に。
今は元いた場所に戻る必要があるようだった。
そう、元いた場所に…。
「…!」
虎男が、空中で静止する。
鮫女も同じだ。
目の前から、突然何者かの殺気が襲ってきたのだ。
顔を見合わせる二人。
何もない青空が広がるばかりだが、確かに嫌なものを感じた。
「…やばい、逃げろ!」
二人は、この殺気の正体を知っていた。
直ぐ様振り返り、今通ったルートを戻ろうとしたのだが…。
突如、二人の鮮血が飛び散った。青い海面を、僅かに赤く染める。
胸から血を吹き出しながら落ちていく二人…。
…あとには、黄色く輝く目を持つ、緑の髪の男が、落ちていく二人を見下ろしていた。
…そして、先程れなたちがいた楽園の島にも、一つの小さな人影が潜んでいた。
れなたちはまだ、これから起こる戦いに気づいていないようだった。