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1話 悪魔族、生まれ変わる

今日は後5話投稿します。

次回投稿予定時間:10時30分ごろ

魔王


 現代では魔族の国をまとめ上げる者達の称号。それは魔族が1度は目指す強さの到達点。もし貴方が生きたいと思うのなら絶対に戦ってはならない。なぜなら魔王は残忍かつ凶悪な化け物、生きて帰ってきた者は勇者を除いて誰も存在しない。昔は──


《フレイルくん、そろそろ仕事に戻らないと》


「はいはい、分かったよ」


本を閉じ魔力を込めて燃やし尽くす。それは即座に燃え尽き城のテラスに吹く風がどこかに連れていく。

俺が魔王になるまでに沢山の事があったな……






「知らないベットだ」


それが俺の、最初の言葉だった。

目の前のベットはすべすべしていて光沢がある。とても気持ち良くてこの小さな手で何度も触りたくなる。これがベットだなんて持ち主は相当金持ちなのだろう。大きさもキングサイズくらいはありそうだ。


……触れない訳にはいかないな? 俺の手こんなに小さかったっけ? さっき出した声は少なくとも自分の声じゃなかったし。


「あー、あー」


明らかに俺の声ではないな、こんな子供みたいな声は出せない。となると、あれかな? この状況から察するに


「転生、だよね?」


おそらく転生してしまったのだろう。どうして、とは思わなくもない。でもこうやって人生をやり直せるのはよかっ──


「この体動かしにくっ!」


転生したこの体は俺の言う事を聞いてくれなかった。人の体ってどう動かすんだっけ? えっと、右腕はこうすれば、動かないんですね分かりました。じゃあこれなら──




「やっと、起き上がれた……」


色々と試行錯誤していたら結構時間がかかってしまった。無理矢理だったから汗をかいたな。こういう時は窓を開けて風にでも当たりたい。そうそうこんな感じに……あれ? 今背中から風が来たよね? でも後ろはベットの──


「はね……羽!?」


この体には似合わない黒い羽が背中から生えていた。羽って人にある部位だっけ、いやないな。って事は人間に転生した訳じゃなさそう。見た感じコウモリっぽいけど、コウモリって腕と羽の部分合体してたよね? だとするとなんなんだろう、 悪魔とか? それと涼しいのはいいんだけど──


「どうやって止めるんだろう?」


その羽は止まる事を知らない様だ。なんだこれ、羽なんて1度も使った事ないから無意識に動いているのかな? とりあえず止めよう……全然止まらない、えぇ? おかしいな、背中に力を入れているんだけど──


「痛っ!」


羽の付け根あたりに筋肉痛の様な痛みが走った。その痛みで動きも止まるかと思ったが更に速度が上がっていく。


「痛っ、痛い痛いっ、どうやって止めるのこれ痛っ!」


痛みでまともに頭が回らない。あーもうどうして考えなしに力を入れたんだ! 入れなければこんな目に合ってないのに!


「っっっっっ!」


羽が取れそうな痛みが俺の体を丸めてしまう。そんな状況下で視界に見慣れない物が一瞬だけ見えた。


「……まさか」


痛みをこらえながらゆっくりと視線を動かすと黒い尻尾が生えていた。嫌な予感がする、ただでさえ羽なんて使い慣れて──


「〜〜〜っ! なんで尻尾まで痛い痛い痛い!」


予感は当たった、尻尾も勝手に動き始めてしまったのだ……とりあえず体から力を抜いてみよう。余計な力がなければなんとかなるかもしれない。


「──と、止まった、かな?」


目が覚めていきなり散々な目にあった。ただ最初にやるべき事は定まったな。これだけはやらないと一生苦労するからね。


「羽と尻尾、練習しよう」


また暴れられても困るからな、まだ痛いけど。





「出来ちゃった……」


思い通りに動かせるようになった。考えていたより早く出来たし結構才能があるのかな……正直ベットからして想像はしていたけどさ


「落ち着かないな、この部屋」


豪華絢爛(ごうかけんらん)、この部屋を表すのにはその一言で充分だ。どう考えても金持ちの家、貴族とか大商人とかの家だろう。多分貴族の家だと俺は思っている。おそらくだけど俺は悪魔に転生した。個人的に悪魔には爵位のイメージがある。ソロモン72柱の悪魔に王や公爵といった階級があるっていう単純な考えだけど。


この世界の悪魔が俺の知っている悪魔と同じかっていう疑問は残るけど今考えても仕方がない。だって分からないし……大分痛みも引いてきたな、少しだけ探索してみるか。とりあえずあの鏡で姿を──


「いや、まぁ悪魔っぽいしあるよね」


俺の頭には立派な2本の角が生えていた。角はこめかみから後頭部にかけて伸びている。頭との間は手の平が入るくらいの隙間があった。


頭には刺さらなそうかな? 伸び過ぎて頭に突き刺さって死ぬなんて嫌だ。改めて鏡を見ると映っていたのは俺ではない灰色の角に黒い羽と尻尾が生えている悪魔の子供。


「綺麗な顔だなぁ」


悪魔だからか顔立ちは非常に整っていた、まだ幼いので可愛いよりではあるが。目もルビーの様に輝いているのでとても綺麗。ただ髪色が若干ピンクの混ざった赤なのがな、あまり好きではない。まぁもう一度人生を送れるんだしこれくらいは受け入れよう。


「本当に転生したんだな、俺」


転生前は──あれ? 思い出せない、前世の人生が何も。まるでその様な物は最初からなかったみたいな、関係のない記憶ならいくらでも残っているのに……というか俺って本当に転生したのか? 転生した認識を埋め込まれて転生したとか言われても今なら信じられるぞ。


「……今考えても仕方がないか」


もし今頑張って過去を思い出せたとしても現状が変わる事はない。なら今は前を向いていた方が良いと思った。記憶は思い出したいと感じた時に考えればいいしね。少なくとも今はこの体で生きる事の方が大切だ。


幸い金銭面では苦労する事はないだろう。この世界の技術力がどれくらいか分からないが現代並みだとは現時点だと思えない。そんな世界での生活には慣れる必要があるだろう。そこでお金だ、お金があれば多少なりとも良い生活は出来るし慣れやすいと思う。


「……誰か来る」


直感的にそう感じた直後、足音が聞こえてきた。誰だろう、家族かな? それとも使用人とか? そんな俺の考えがまとまる前にドアが叩かれ、ゆっくりと開く。その足音の人物はメイドさんだった。


同じ悪魔で見た目からして大人だ。髪色は紫で顔はそこそこ整っている。彼女は食事の乗ったワゴンと一緒に入ってきて何も言わずに扉を閉める。こういうのって入る前に声をかけるイメージだったんだけど、気付いていないのかな? とりあえず話しかけてみよう、もしかしたらそれで気付いてくれるかもしれないし。


「あの、すいません」


「えっ!?」


よかった、気付いてなかっただけか。そう思ったけどメイドさんの様子がおかしい。まるであり得ない物を見ている様な顔だ。もしかして何か変な事でもした?


「その──」


「まっ、魔王様ー! フレイル様が──」


彼女は大慌てで部屋を出ていってしまった。魔王と俺はどんな関係なのかとか聞きたかったけど仕方がない。名前は分かったしね。


「フレイル、フレイルね」


その響きがなんだか懐かしい気がした。この体の記憶もなさそうから気のせいかもしれないけど。ただ彼女の声は聞き取れたからこの世界の言語についての知識はありそうだ。聞き取れるだけでとてもありがたい、今から前世となんの繋がりもない他言語を覚えられる気がしないし。


「……良い匂い、何が入っているんだろう」


匂いにつられてワゴンの方に注目がいく。ただ俺の興味はすぐにワゴンの方に吸い寄せられていた。


「浮いてる、よね」


それは重力に逆らってプカプカと浮いていた。多分魔法ってやつのおかげなのかな? 見た感じ浮く為の装置とかは付いていなさそうだし。


魔法かぁ、俺も使えるのかな? 使えたら楽しいんだろうなぁ。悪魔っぽいし闇属性とか使えそう。それで光属性に弱いみたいな。そもそもそんな属性があるのかも分からないけどね。


「……フレイル?」


知らない声に俺は顔を上げた。目線の先には容姿が俺とよく似た少女。小さいけど年上ではありそうだ、何故だか分からないけど。そのせいなのか少女の存在感は不思議と大きく感じていた。そんな彼女と目が合うと目をキラキラと輝かせながら──


「フレイル、起きたのね! よかったぁ……」


……この子は一体誰なんだろう? 直感は年上だと思ったけれど見た目だけは年下に見える。だけどここは異世界だ、前の常識では判断出来ない。反応からして母親とか? うーん、正直「誰ですか?」って聞きたい。聞きたいけど結構傷ついちゃうよな、言われたら。


「……どうしたの? フレイル」


少女の目が段々と困惑した様な目に変わっていく。このまま何も反応しない訳にもいかないし……こうなったらもう聞くしかないか。


「あの……」


少女の表情がぱぁっと明るくなった。聞き辛いけど……聞く以外の選択肢はないだろう。そして俺はこの選択が誤りであったと、すぐに気付いた。


「誰ですか?」


「……え」


少女の目から光が段々と消えてゆく。生気も抜けてしまい、後ろに倒れそうになる。彼女が倒れない様に俺は腕を伸ばし、支えようとしたが──


「重っ!?」


想像の4倍くらい重かった。ただなんとか踏ん張って倒れない様に支えられてはいる。こんな子がここまで重いのか……もしかして角か? 重い理由って。骨の塊だし納得は出来るけど俺のは重いって思わないんだよな。


「……母親だよね、この人」


真っ白に燃え尽きているし、多分合っていると思う。流石に後で何かしてあげた方が良さそうだな。何もせずに放置したら気の毒だ。


「とりあえずベットに……上がらないな」


俺の筋力ではどうにも出来なさそうだ。手を離すのもあれだし、あのメイドさんを待ってみよう。来るまでに力尽きなければいいけど。




案外、メイドさんはすぐに戻ってきた。少し息が切れているし相当探し回っていたんだろう。呼吸を整えてから、メイドさんは話し始めた。


「フレイル様、お加減は──」


顔を上げた瞬間、メイドさんの顔が青ざめていく。まぁ予想通りというか、何というか……


「まっ、魔王様ぁ!?」


──魔王?

この作品の後書きには出来る限り4コマ風の会話を載せます。

"本編では出来ない事を"というコンセプトなので興味があればぜひ読んでいってください!。

本編にはあまり関係しないので興味がないなら飛ばしてOKです。


1話 メイリアの魔王様探し


メイリア「魔王様っ! ……ここにもいませんね」


カムイ「どうした、メイリア」


メ「あっ!? 旦那様! フレイル様が意識を!」


カ「……そうか、俺も道具を片付けたら行こう」


メ「承知いたしました、では私は魔王様を探しに──」


カ「イアは俺が探す、代わりにフレイルの世話を頼んだぞ」


メ「承知いたしました」


カ「……嫌な予感が──」


メ「まっ、魔王様ぁ!?」


カ「……」

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