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「ぷっ…くくくくっ」
私のその言葉に、少年のおさまった笑いがまた生まれた。
いや、今笑ってるのは最初に笑った少年じゃなくて、その隣りに同じ顔をした少年がもう一人。
たぶん双子? かな。色違いの双子。新しく現れた少年。顔と背丈は一緒なんだけど、こちらは茶色の髪に、黒い瞳。赤い髪の人の、怖い雰囲気を与える表情と違って、こちらの人はやわらかく、優しい雰囲気の表情。
「ごめんね、驚いたでしょう?」
茶色の髪の人が私に近付いて来て手を差し延べた。私はその手をとり、立ち上がる。
「まったく、海都はぁ! いきなりTVの電源つけたら、彼女驚くに決まってるだろ?」
赤い髪の人に振り返り、叱る。相手は外方を向くと、フンっと鼻で笑った。
「うるせぇなぁ。そいつが前を陣取って邪魔だったから、追っ払っただけじゃねぇか」
「だからって、もっと他にやり方があるだろ? 声をかけるとかさ」
「誰がンな七面倒くせぇ事するかよ。いいじゃねぇか、結果的に退いたんだからよ」
赤い髪の人は、かるっていた鞄を畳みに放るとドカリとあぐらをかいた。