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   崩壊(8)

「ラインも寝て、お願い」

 私は、無理やり彼を部屋に帰した。彼の過去に何があったか、詳しくは知らない。でも、彼の過去に何か似たようなことがあって、だから彼が私以上に混乱して、それでもどうにかしようと必死になっていることは分かった。


 分かったから、休んでほしかった。


 寝られないだろうということは、十分承知していた。元々彼は夜勤だ、昼間は睡眠を取っている。数時間前に起きたばかりだ。混乱もしている、眠れるはずが無い。


 でも部屋で休んでほしかった。

 びっくりしたのだ。

 あの彼が、泣くなんて。


 よっぽどの事態だ。彼と知り合ってまだ一年もたっていないが、それでも、彼がいつもにこにこと明るく、滅多に怒りや悲しみの感情を表に出さないことぐらいは知っている。


 その彼が泣いたんだ。私がしてあげられることは、これぐらいしかなかった。

 ラインの部屋のドアを閉めると、私はサキ様のドアの前に座り込んだ。


 明かりは、豆電球がひとつだけだ。


 暗い中、私は携帯を取り出し、ガーネットさんに電話をかけた。応答は無かった。携帯を投げつけたくなったが、我慢した。居ない人全員に電話をかける。そのたびに、長い通信音が孤独を感じさせる。


「お願い」

 繋がらない。何度願っても、誰も応答してくれなかった。

 旦那様も、奥様も。


「何が起こってるの……」

 夜が明けるまで、私はサキ様の部屋のベッドでひたすらに電話をかけ続けたが、とうとう誰とも連絡がつかなかった。


 朝の六時、部屋の扉がノックされた。


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