12 連絡と診察(1)
朝の六時は、メイドとコックの起床時間だ。きっと、眠れなかったのだろう。私ははい、と静かに扉を開けた。
「おはようございます、レイカさん、これが」
カタリーナだった。黄色い髪を後ろでお団子にしている、私より三歳年上のメイドだ。先ほど玄関に集められた時はパジャマだったが、もういつものメイド服に着替えている。シンプルな黒色のドレスだ、長いスカートに、長い袖。白いエプロンが腰に巻かれている。
カタリーナが持っていたのは、一通の手紙だった。
「レイカへ ガーネットより」
という文字が目に入り、慌ててそれを受け取る。
「これは……」
「申し訳ございません、お嬢様の言いつけを破り、私たちはメイド、コック、ボディガードの皆さまの部屋をくまなく掃除させていただきました。ガーネットさんの部屋は、最後に入ったんです。先ほどこれをベッドの下に見つけて、慌てて持ってきました……」
「ありがとうございます。今、見ても?」
カタリーナは一度頷いた。私は封を切り、手紙を開いた。
「レイカへ
夜中二時ごろに急きょ集められた。
奥様から電話があり、二十分で支度しろ、とのことだ。出かけると言う。携帯電話は置いて行けと言われた。何が起こっている?
お嬢様はと尋ねたら、彼女は置いて行くと言われた。
不審に思い、この手紙を書いている。
誰がこの屋敷に残るのか分からない。しかし、お嬢様を残すのであれば、君も残るだろう。この手紙が君に届くことを願う。
私は黙ってついて行く。連絡が取れるようになったら、こちらから連絡する。
混乱しているが、とにかく、お嬢様の身の安全を祈る。
お嬢様を、よろしく頼む。
ガーネット」
「……なんて?」
カタリーナに、私は無言で手紙を渡した。カタリーナはそれを読むと、首をかしげた。
「どういうことでしょう」
「分からないですが、取りあえずついて行った人たちも状況が読みこめていないみたいですね」
「どうしましょう」
「……他の皆さんは?」
「他の方々の部屋を、再度掃除中です……コックのおふた方は、朝食を作ってくださっているかと」
「では、引き続きお願いします。ラインを起こし、彼と相談します。サキ様は……分かりません、あとで連絡を入れますね」
「わかりました」
カタリーナは、駆け足で去って行った。
私は、何度もその手紙を読んだ。走り書きだ。焦って書いたことが手に取るように分かる。
「レイカ……?」
扉が開き、ラインが顔をのぞかせた。
「誰か来た?」
「カタリーナさんが」
「なんて?」
「手紙が。ガーネットさんから」
ラインに手紙を渡すと、ラインはそれをゆっくりとした動作で読んだ。二度、三度読んでいるようだ。
「向こうも状況がよく分かってない――? となると、旦那様と奥様ふたりしか、真意を知らないのか……?」
「そうみたい」
「……どうするか、本当に」
「連絡を待つしかないかな」
「それが一番確実だけどね」
それでも、もし来なかったら、行動すればよかったてなるだろ……とぶつぶつ思考するラインの後ろで、ごそりと動く音がした。
「サキ様……!」
私は、慌ててサキ様に歩み寄った。青ざめている。汗も凄い。




