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魔王様は『もっと!』美味しいご飯を食べて暮らしたい  作者: にのまえあゆむ


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第1話 魔王の死

※本作はすでに公開済みの作品「魔王様は美味しいご飯を食べて暮らしたい」をベースに、ストーリーや設定の一部を再構築したリブート版になります。そのため、一部箇所には重複した内容がありますが、その点をご留意の上、お楽しみいただければ幸いです。

 その日、魔王は勇者によって倒された。


 比肩する者はいないとされ、無類の強さで魔族の王として君臨していたが、人類が送り込んだ勇者とその仲間たちの前では力及ばず、聖剣の一撃を前に膝を折ったのである。


 勇者の一撃を受けた魔王は、それでも最後に意地を見せたのか、亡骸を晒すような真似はしなかった。


 魔術の力なのか、それとも身に宿る膨大な魔力を暴走させたのか、魔族の王としての証である錫杖のみを残して、塵一つ残さず消え去った──というストーリーを実践してみたのだが、それが笑えるくらいにハマってしまった。


 どうもどうも。


 世間では勇者に倒されたことになっている魔族の王こと、アルフォズル・ニルヴァースです。気軽に〝アルくん〟と呼んでくれると嬉しい。


 いちおう言っておくと、勇者と戦ったのは間違いなく俺である。


 遠路はるばる遠い魔族の領地までやって来て、俺と戦いたいと願った奇特な連中だ。招いていないとはいえ、せっかくなので相手をしてあげるのは礼儀というものじゃないか。


 そのついでに、俺はかねてより計画していた魔族領脱出計画を実行しただけである。

 そう──俺は逃げ出したかったのだ。


 魔族の世界から。


 何故かって? そんなもん、魔族の世界は〝終わってる〟からだ。


 これはおそらく、魔族の根源的な性質によるものだと思うのだが、力こそが正義であり、力なき者は家畜にも劣る──という考え方をしている。

 まぁ、俺自身、そう思わなくもないのだが、それでも極端に偏ってるわけじゃない。向こうから突っかかってこない限り、こちらから手を出すこともないし、そんなのは面倒とさえ思ってる。


 けど、世間一般の魔族は、俺よりも過激だ。


 強者は絶対者であり、弱者は強者に傅くのが当然と思ってるんだ。

 おいおいキミたち、なんでそんな好戦的なんだい? とてもじゃないけど、俺はそんな連中に囲まれて暮らすのは嫌なんだよ。


 だって、力こそ正義の弱肉強食の社会だぜ?


 そんな弱者から奪うことを〝当たり前〟と思ってる社会じゃ文明レベルは上がらない。農業や畜産、製鉄その他もろもろの一次産業は人類社会と比べるなんておこがましいほど低く、ロクな一次産業がないもんだから二次産業も質が低い。三次産業にいたっては存在してるのかどうかさえ怪しい。


 そりゃそうだ。欲しいものがあったら力で奪えばいいと考えているんだからな。

 技能があっても力がない者は、搾取されるのを恐れて技術を磨かない。

 そういう技能を持ってる者は、弱者であることが多い。足りない力を道具で補おうってわけだ。


 それでどうやって魔族社会が成り立っていたのかと言うと、それはもちろん、自分たちよりも弱い者──人類側から奪って補っていたのだ。


 ただ、道具は奪うことで流用はできる。

 けど料理は?


 無理だろう。食材くらいならまだなんとかなるが、食材を美味しく加工する技術だけは奪うことができない。料理人をさらってきたところで、十全にその技能を発揮してくれるわけがない。


 結果、魔大陸の料理事情は人族に遠く及ばない最底辺となっていた。

 だから俺は、魔王としての地位を捨てたのだ!

 魔族であることも隠そう!

 そして、人族の中に紛れ込み、美味しいご飯を毎日食べられる日々を目指すんだ!

 そんな決意を胸に、俺は魔大陸から一番遠い人族の領土へ移動したわけだが──。


「ここ、どこだ……?」


 ──さっそく道に迷った。


 死の偽装が上手くいって、晴れて自由の身となったからって浮かれていたのがマズかったのかもしれない。

 ただでさえ疎い人類側の領土で、降り立つところを見られないように人里からも離れた場所を選んだ結果、鬱蒼と茂る森の中になってしまった。


 さすがの俺でもわかる。

 人類はこんな森の中に住んでない。

 もっとこう……人工的に整備された場所に住んでいるはずだ。


 で、そんな人工的に整備された場所はどっちかなー……って、わかるかーい!


「きゃあぁぁぁぁぁぁ……っ!」


 一人でノリツッコミをしていたら、生い茂る木々の合間を縫って悲鳴が聞こえた。

 はは~ん、なるほどなるほど。

 これがいわゆるアレですね。美少女が暴漢なり魔獣なりに追いかけられていて、それを俺が颯爽と助ける出会いフラグってヤツだな!


 おーけーおーけー、いいだろう。


 そういうことならそのフラグ、きっちり回収してやろうじゃないか。


「さてさて、いったいどこから──」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!」

「うぇっ!?」


 前か後ろか横からか、どこから来てもバッチリ対応してみせるぜ! と意気込んでいたら、まさかの真上だった。そりゃ俺も「うぇっ!?」とか口から出ちゃうわけだ。

 上だけに!


 ……………………。


 こほん。


 とにかく、まさか人類の領土に来て最初に遭遇したフラグが、よもや落ちもの系とは思わなかったぞ。咄嗟のことでやや乱暴にキャッチしてしまったが、それでも見事にフラグは回収したと言えるだろう。


「しっかし……なんで空から降ってきたんだ、こいつ?」


 かくして、俺の頭上から降ってきたのは……うん、まぁ、美少女(?)だった。(?)が付いているのは、あまり女子らしいオシャレとは縁遠い、よく言えば素朴な、悪く言えば見た目に無頓着な感じがするからだ。


 それは何も、魔族と人類の美的感覚の違いで、そう言ってるわけではない。その辺りの感覚は種族に差なんてないらしいので、魔族が綺麗とかかわいいと思うものは、人族も同じように感じることがわかってる。


 なので、そういう人魔共通の美的感覚から言わせてもらえれば、この降ってきた少女はすこぶるもったいない微少女だった。磨けば光りそうな気もするが、本人に磨く気がなさそうなのが困りものだ。


 さて……どうしたもんかね、これは。

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