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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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12/13

12 犯人を推理してみまして

伯爵令嬢 メイヴィス・モルゲンシュテルン

伯爵令息 アルフレート・ローゼンタール

伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ

伯爵 ディミトリ・オルブライト

「ありがとうございます。色々と、ためになるお話がうかがえました」

アルフレートはそう言って微笑みながらティーカップを静かにソーサーへ戻した。

これ以上は長居をしないという意思表示なのだろう。

一通り経営について話を聞き終え、話を終わらせようとした。


「いやいや……それで。本題はなんだったんだい?」

オルブライト伯爵がそういって、使用人たちをさげてくれた。

控えていた使用人たちは一礼し、静かに部屋を後にする。

扉が閉まると、それまで和やかだった空気がほんの少しだけ変わった気がした。

どうやら、ただのいいおじさま、というわけではないようだ。

こちらの様子をしっかり観察していたらしい。


アルフレートは少し躊躇って、私を見た。

話すべきか、ごまかすべきかを悩んでいる。

正直に話したところで、未来の話を信じてもらえるとは思えない。

私は小さく深呼吸した。

「実は、オルブライト伯爵が王を襲おうとしている、という噂を聞いて。心配になってきてしまったんです」

私がそう言うと、オルブライト伯爵は心底驚いた顔をした。

目を丸くし、しばらく言葉を失ったようにこちらを見つめている。


「ほぉ!俺が、王を……また、それはヒドイ噂だね」

そう言いながら肩をすくめる姿は、怒るというより呆れているように見えた。

彼の口ぶりからして、現時点でオルブライト伯爵は王を襲うつもりはない。

少なくとも今の反応は演技には見えなかった。


「皇太子が廃太子になったばかりなので、ローゼンタール家でも心配をしていて」

アルフレートがもっともらしいことを言った。

声音は落ち着いていて自然だった。

あらためてだが、ローゼンタール家は、王家の遠縁にあたるらしい名家。

王家のことを気に掛けているというのは自然なことだ。

「なるほど、なるほど」とオルブライト伯爵も納得している。


さすが、推し。

こんな場面でも自然に相手を納得させてしまうのだから。

私は心の中でひっそり感心した。

「だが、そうだね。ご期待を裏切るようで悪いが。さっきも言った通り、そのつもりはないよ」

オルブライト伯爵は笑みを消し、真面目な顔でそう言った。

先ほどまでの冗談交じりの口調ではなく、はっきりとした口調だった。


失礼な質問をしたのに、オルブライト伯爵は見送りまでしてくれた。

いいおじさまだ。

馬車の車輪が石畳を叩く音が規則正しく響く。

窓の外では夕暮れの街並みがゆっくりと流れていった。

帰りの馬車で、少し考えてみる。

オルブライト伯爵が嘘を言っている可能性はあるけど。

私としては、あの『いいおじさま』が、王を襲ったとはやっぱり思えない。

豪快に笑い、人懐っこく話していた姿ばかりが頭に浮かぶ。


「…たぶん、考えていること、一緒だと思うけど」

アルフレートに話しかけられて、ちょっとビクっとした。

考え事に夢中になっていたようだ。

「あ、はい。犯人、じゃないですよね…」

そう言うと「俺もそう思う」と返事が返ってきた。

私だけではなく、アルフレートも同じ結論に至ったらしい。


「それでね、前回のこと、もう1度よく思い出していたんだけど」

アルフレートが1度、窓の外を見た。

街灯に明かりが灯り始めている。

流れていく景色を見つめながら、記憶を辿るように言葉を選んでいた。


「あのとき、オルブライト伯爵はすぐに捕まったわけじゃないんだ。誰かが『オルブライト伯爵に襲われた』と言ったから、犯人はオルブライト伯爵になっただけ」

馬車はどんどんと街を進んでいく。

車体が小さく揺れるたび、緊張した空気も揺らいでいるようだった。

私はアルフレートの言葉を聞き逃さないよう耳を傾ける。


「しかも、その後、オルブライト伯爵は死んでしまったから。王を襲った犯人はオルブライト伯爵で間違いない、ということになったんだ」

アルフレートがそう言って考え込む。

事件を思い出すたびに違和感が増しているのだろう。


「では、誰がオルブライト伯爵が襲ったと言い出したかが問題、ということですね」

私がそう言うと、アルフレートが顔を青くした。

まるで今まで考えないようにしていた答えに辿り着いてしまったような表情だった。

「言ったのは、王、本人だった……ような気がする」


アルフレートがそう言って私を見た。

馬車の中の空気が一気に重くなる。

先ほどまで聞こえていた車輪の音さえ遠く感じた。

「それはつまり、王が、オルブライト伯爵を陥れたということですか?」

思わず声が小さくなる。


なんと、ここにきて、自作自演説が出てくるとは。

私たちは互いの顔を見合わせたまま、しばらく言葉を失ってしまった。

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