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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第6章:上級配信者

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97話:上位種

 俺の配信での情報がまだ世間をバタつかせているが、それが落ち着くのを待つ必要はない。


 レベル120相当。


 その予測がどこまで正しいのかは分からないし、まだドラフトホースの上限には到達していないが、ソロで時間に余裕もある時に確かめておくべきだろう。

 それに、昨日悠斗から連絡があって、今朝高校に寄って新しい長剣と靴を受け取ってきた。前回以上に学生の視線が多かった気がするが、気にしても仕方ない。


 という事で。


「ここが20層か……」


 火曜日から金曜日の昼配信を終えて、明日からの土日はかおりんのレベル上げだ。

 その前にソロで20層に挑戦しておくのは悪い事じゃないだろう。本当にレベル120相当のステータスがあるのかを、身を持って確かめておきたかった。


 奥羽ダンジョンの1層から9層は緩やかな裾野と草原が広がっていて、視界の開けたエリアだった。

 10層から19層は渓谷と大きなブナの原生林が広がっていて、高低差があったり、戦いにくい足場だったり、9層までとは違う戦い方が求められた。

 そして20層。そこは。


「……すげぇ……」


 階段を降りた瞬間、あまりの光景に言葉を失った。

 目の前に広がっているのは、見渡す限りに広がっている荒々しく大きな岩山だ。木が生えておらず、ゴツゴツした山肌が続いている。岩場自体は19層の渓谷にもあったが、その規模、広さが全然違う。渓谷のような狭い所で戦うような環境ではない。


 だが、それだけなら言葉を失ったりはしない。

 それよりも何よりも驚きなのは、


「どうなってるんだろうな」


 視線を上げると、その岩山の頂上付近に巨大な岩塊がいくつも『浮かんでいる』のだ。

 重力を無視して、悠然と空に佇む無数の巨岩。現実の物理法則ではあり得ない、まさにダンジョン、そしてファンタジーそのものの光景だ。


 20層からは深層、上級者の階層と言われるが、それは大きく環境が変わるだけでなく、まさにダンジョン、まさにファンタジーの世界に飛び込んだような環境となるためだ。

 奥羽ダンジョンの20層は、この浮かんでいる岩が見れる階層として有名なのだ。


 ついにここまで来れた。

 こういう光景が見たくて冒険者になってダンジョンに潜っているんだ。

 アニメやゲームでは見た事のある光景だが、実際に見れると感動的だな。あの岩って触ったり乗ったりできないのかな、乗ったら落ちたりしないかな。

 試してみたいが、最高階層である22層まででも、浮かんでいる岩に届く事は無いそうだ。

 確かに、山頂まで行けたとしても、岩は高く浮かんでいるから届かなそうに感じる。転がっている石を投げてぶつける事はできそうだが、飛べないと無理だろうな。




 しばらく20層の壮大な光景に見入っていたが、そろそろモンスターを倒しに行くか。倒せれば今後は定期的にここに来て、この光景も何度も見れるんだし。

 それにしても、奥羽ダンジョンで生息しているモンスターの詳細が分かっているのは、ここと次の22層まで。しかも22層はトップパーティーだけで情報は十分じゃない。そう考えると気軽に挑戦できるのはここまでなんだよな。

 情報がある状態で挑戦できる環境に感謝しつつ、次は俺が情報を提供する立場に。


 よし、考え事は終了。20層のモンスターの情報はしっかりと覚えてきた。

 まぁそこまで覚える必要も無かったんだけどな。知ってるモンスターにかなり近いから。



 長剣ではなく、いつもの剣を鞘から引き抜き、いつものように右手で握り締めると、岩山の右手へと進んでいく。

 この階層でも右手に馬型、左手の熊型がいるという生息エリアの法則は変わっていないらしい。


 岩山に木は無いので見晴らしはとても良い。だが、身体を隠せるほどの巨岩がゴロゴロ転がっているため、その向こう側にモンスターがいないか、慎重に確認しながら進んでいく。

 10層から13層の渓谷をもっと広くした感じだ。広くなっただけなら簡単なんだけど。


 っ! いた。

 大きな岩の向こう側を確認すると、1体のモンスターが佇んでいた。

 いや、何かしてるな。もぞもぞ動いているように見える。


 それにしても、あれが20層の馬型モンスター、デブリシューターか。

 見た目はドラフトホースより細身で、資料通りサラブレッドのような見た目をしている。


 ドンドンドンッ!


 っ!?

 その瞬間、俺の隠れていた岩に弾丸の当たったような音が響いた。しかもほぼ同時に3つ。

 これがデブリシューターの攻撃か。

 デブリシューターの特徴は、名前の通り破片、つまり小さな岩を蹴り飛ばしてくる。そう、10層にいたストライクホースに似ているんだ。だから、特徴を覚えるのは簡単だった。

 だが。


 ドンドンドンッ!


 ストライクホースと決定的に違うのは、この三発同時攻撃と攻撃間隔だ。

 ストライクホースは地面を削って飛ばすための弾丸を用意してから蹴り飛ばしていた。だから、弾丸が無くなった時に攻撃が来ないタイミングがある。その間に接近すればいいという攻略方法があるのだ。

 だが、このデブリシューターにはそれが無い。何故なら。


 ドンドンドンッ!


 俺はその瞬間に岩場から飛び出した。ストライクホースほどではないが、蹴り飛ばした直後に少しの間があるそうだ。ここまで3度の攻撃でも一定の間が空いていたのを確認したので、その情報は合っているだろう。

 デブリシューターとの間には他に身を隠せるような障害物は無い。俺は駆け寄りながら、敵の動きに集中した。


 駆け抜けながら敵の周囲を観察すると、デブリシューターの周りには無数の小さな岩が浮かんでいた。あれが弾丸だ。この階層には頂上付近に浮かんでいる大きな岩だけではなく、所々に小さな岩が無数に浮かんでいる場所がある。そして、20層ではそこにモンスターが構えている。

 自分で弾丸を用意しなくても、周りにいくらでも岩が浮いている。弾丸を用意する必要がなければ隙は小さい。さらに、この浮かんでいる岩はどこからか自動的に補充される。なんて敵に都合がいいんだか。エリア特性と合わせて、こいつはストライクホースの上位種って感じだな。


 デブリシューターの頭は向こうを向いて、こちらに尻を向けている形だが、わずかに首を左に向けている。馬の視野は広いと聞くから、その状態でも俺の事を視界に入れているんだろう。

 そして、前に身体が傾き、後ろ足が浮いた。


 来る!

 俺は右足で地面を強く蹴りつけ、真左へと鋭く進行方向を変える。悠斗に新調してもらった靴のおかげか、ゴツゴツとした岩場でも足裏が吸い付くようにグリップし、踏み込みに一切のロスがない。


 シュンシュンシュンッ!

 ドンドンドンッ!


 浮いた後ろ足が小さな岩を複数まとめて蹴り飛ばした。蹴られた岩は俺の横を空を切りながら通り過ぎ、後方の岩へとぶつかった。

 無事に回避できた事を確認してから再びデブリシューターへと向きを変えると、奴も素早く身体を回転させて、俺に後ろ足を向ける。

 そして、再び後ろ足が浮かび、岩を蹴ろうとしている。さっきまでよりインターバルが短い。


 だが、一度自分の目で攻撃を見て、対処可能だと判断した。

 さっきよりも方向を変える角度を浅くして走り続ける。


 後ろ足が伸ばされると同時に、そこから3つの小さな岩がこちらに向かってくる。小さな岩の大きさは野球ボールほど。ストライクホースの蹴ってくる2種類の石の中間くらいの大きさだ。

 だが、そのスピードは全く違う。正確な速さは分からないが、記録された映像を確認したギルド職員によれば、その速さは約150km。プロ野球の投手の球速とほぼ同じだ。

 それが顔近くの高さに飛んでくる。3つ同時に飛ばしてくるのは命中率を良くするためだろう。事実、こうして2つは俺にぶつかりそうになっている。


 だが見えていれば問題は無い。

 手にした剣の腹で、その岩を受け止める。


 ガンガンッ!


 両手に響く衝撃から考えると、ストライクホースの大きな岩での攻撃よりも圧倒的に威力が高いが、ロバストグリズリーの爪撃ほどじゃない。

 しっかりと蹴り飛ばす瞬間を見て、飛んでくる岩を見逃さなければ大丈夫だ。まぁスピードはかなりなので、見逃して顔にあたったら大ダメージだな。防具の上から受けても、若干押されるくらいの威力はある。

 これって、プロ野球レベルの速度に慣れていれば簡単に倒せるのか?


 攻撃を防ぎながら間合いまで到達した。

 こいつへの攻撃は、岩を蹴り飛ばしている後ろ足に当たらないように横か前から攻撃するのがいいと資料にはあった。ストライクホースの蹴りも強かったもんな。


 だからこそ。

 俺は後ろ足の正面、デブリシューターの真後ろから近づいていった。そして、剣を右後ろから思い切り振り抜く。

 それに対応するように、デブリシューターの後ろ足が蹴り込まれた。


 ガギイィィィンッ!


 重っ!

 デブリシューターの後ろ蹴りは、ロバストグリズリーの爪撃を越える重さがあった。やっぱり20層、深層のモンスターだ。


 だが、問題はなかった。


「うぅぅおぉぉらぁぁっ!」


 歯を食いしばって力任せにデブリシューターの蹴りを弾き返した。


 19層までの適正レベルは、1層につき5レベルずつ上がっている。1層はレベル1、2層はレベル5、19層で90レベル。

 だが、20層の適正レベルは95レベルではない。深層と中層の差は大きいのか、100レベルの冒険者ではデブリシューターの蹴りを受け止められないそうだ。それもあり、20層の適正レベルは15レベル上がって105レベルとされている。


 それに対して、俺の想定レベルは120であり、適正レベルから15レベルも上だ。それなら弾き返す事ができて当然だろう。

 俺に弾き返されて、大きく後ろ足が跳ね上がり、前のめりになったデブリシューターへとさらに近づき、身体を支えている前足へと剣を叩きつける。


 ズジュッ!


 深く斬り裂かれた事で、バランスを崩して前へと倒れていく。

 そして、大きな隙を見逃さず、後ろ足も斬り裂くとデブリシューターは完全に立てなくなった。

 立てないデブリシューターに危険性は全く無い。

 冷静に首を斬り落として、息の根を止めた。




 よし、問題なく倒せたな。

 ただ、ここにかおりんを連れてくるのは無理だな。やっぱり遠距離攻撃タイプのモンスター相手だとレベル上げは危険性が高いと感じる。盾で防げても万が一があるからな。

 そう考えると、レベル上げ用の階層は22層より先って事になる。でも、22層より先はまだ情報が少ない。レベル上げにちょうどいい階層があるといいんだけどな。


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