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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第6章:上級配信者

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94/115

94話:発表後

「いらっしゃいませ。ご用件をお伺い致します」


「素材の買取をお願いします」


 ロバストグリズリーの肉を持って、地上へと戻ってきた。これで30万円近い収入になる。


「……ようやく帰ってきたわね」


「伊達所長、どうもです。あっ、ドローンも返しますね」


「それはどうでもいい。ちょっと来い。こいつは私の部屋にいるから、査定が終わったら来てくれ」


「か、かしこまりました」


 受付に肉を載せるとすぐにやってきた伊達さんに、所長室へと連れて行かれた。


 伊達さんはこの仙台入口の責任者と紹介されたが、正式には所長らしい。ダンジョン協会東北支部仙台出張所というのがここの正式名称であり、その所長さんだ。

 以前瀬奈から聞いた話だと、ダンジョン協会の組織はかなりデカいらしい。東京の本部には経営企画や総務、経理、渉外、調達や販売などの専門部署があり、全国主要都市に8つある支部や各ダンジョンの入口にある出張所を統括しているのだとか。

 知っておいて損はないと瀬奈に叩き込まれた知識だが、まさに今、その組織の偉い人に連行されている最中である。まぁ何度目だって感じだけど。







「それで、何なんだ、さっきの配信は」


 所長室に入ると、以前と同じように応接ソファに座るように促された。そして座ると伊達さんはすぐに低く鋭い声で話し始めた。


「何って言われても、配信で話したのが全てですよ?」


「そういう事じゃなくてな……あんな情報なら、先に協会に教えて欲しかったんだけど!?」


 伊達さんの目が血走っている。相当電話が鳴ったんだろうか。


「協会としても悪い内容じゃなかったでしょ?」


「内容自体はありがたい! だけど、あまりにも影響がデカすぎるのよ! 上からの問い合わせ対応で大騒ぎ! 次からは先に私だけでもいいから教えなさい!」


 そこまでか? 数時間早く知ってもあまり変わらない気もするけど。


「次って言われても、今日の配信で出し切ったからなー。戦闘関連は事前に撮影したのを提出してるし、さすがに初見戦闘を配信は多分しないし」


「……はぁ。もう分かった。ただ、君のスキルやそれ以外の情報について、新しく何か分かったら先に教えてくれ。特に、君のパーティーメンバーについては、これから注目されるだろうから、先に情報を共有してもらえないと守りきれなくなるわよ」


 そうか。3人のためなら、協会に伝える許可をもらったら伊達さんには伝えておくか。


「3人の事を伝えていいか、確認しておきます」


「そうしてちょうだい。君みたいな非常識な子じゃないとは思うけど」


 酷いな。俺はそんな非常識じゃないぞ。


 コンコンッ


「どうぞ」


「失礼します。査定結果をお伝えにあがりました」


「こっちはとりあえず終わったから、ここで伝えていいわよ。このゴタゴタが落ち着いたら配信で話してない内容について聞くから覚悟しておきなさい」


 覚悟って怖い事言わないで欲しいな。


「かしこまりました。それでは査定結果ですが、ロバストグリズリーの肉170kgで374,000円、そこから税金、保険料、手数料を引いて280,500円になります。いつもと同じく冒険者カードへの入金で良いでしょうか?」


「それでお願いします。では伊達所長の話も終わったという事なんで、これで失礼します」


「3人の話を伝えてくれる時は、受付で私を呼んでちょうだい」


 伊達さんはソファから立ち上がって、奥の大きな机に向かった。これから俺の配信の内容について、色々とあるんだろうな。

 ちょうどその時に机の上の電話が鳴り始めたので、俺は素早く部屋を後にした。

 さて、まだまだ時間はあるからロバストグリズリーを狩りに行くか。




 ピロンッ


 協会の建物を出て、ダンジョンへと入ろうとした所、スマホが鳴った。メッセージが来た時の音だ。

 素早くスマホをポケットから取り出して、内容を確認しようとすると。


 ピロンッ


 確認する前にもう1つ届いたみたいだ。順番に確認しようとすると、どちらも同じグループでのメッセージだった。


『かおりんが今夜うちに来たいって言うから連れて行くけどいい?』(瀬奈)

『俺も行っていいか?』(悠斗)


 瀬奈と悠斗からのメッセージだった。

 かおりんも入れて、4人のメッセージグループに送ってきているから、悠斗もメッセージを見て来たいって言い出したんだな。

 でも、かおりんは明日一緒にダンジョンに潜るんだし、いつもなら明日まで待つだろう。じゃあ何かあるんだろうな。


『母さんがOK出せばいいんじゃない? いつもより早めに帰った方がいいか?』


 というか、2人とも昼休みか?

 時間は1時すぎだけど、高校は何時まで昼休みなんだ?


『お母さんに確認するね。OKだったらまたメッセ送るから、悠斗もそれ見てから来て。祐也は17時すぎには帰ってきて』


 いつもは18時近いけど、17時すぎに帰ってこいって言うなら、やっぱり何かあるんだろう。さっきの配信の話くらいしか思いつかないけど。

 まぁ伊達さんに言われた事をちょうど聞けるからいいか。


 それじゃあ、あと2往復くらいしてくるか。






「ただいまー」


 ロバストグリズリーを更に2体売却してからダンジョンを後にして、俺はほぼ17時に家に戻ってきた。


「帰ってきたっすね」

「主役の帰還だな」


「主役って何だよ」


 靴を脱いでいると、リビングの扉が開き、かおりんと悠斗が顔を見せた。


「とりあえず着替えたらリビング集合っす」

「早く着替えてこーい」


 言われなくてもそうするけど、そんなに急かすような理由があるのか?

 どうせ待ってる間は瀬奈の作ったおやつを食べてるだろうから、別に急がないだろ。




「それで、そんな急かして何かあったのか?」


 着替えてリビングに降りてきた俺は、テーブルにつくと早速話を促した。


「分かってないっすよ、祐也さん」

「分かってねぇな、祐也」


 かおりんと悠斗の声がキレイにハモる。


「何の事? 瀬奈は分かってるのか?」


 キッチンで料理中の瀬奈へと聞いてみる。


「そりゃね。私も色々聞かれたし」


「聞かれたって何を?」


「そりゃ、配信で言ってた内容について」


 配信の内容についてか。


「…どれの事?」


 数秒悩んだけど、瀬奈が高校で周りから聞かれるのってどれよ?


「レベル上げの事よ。他の事は、興味以上のものじゃないけど、レベル上げはみんなにも関係あるからね」


「自分で言ってたじゃないっすか」


「そうだぞ。祐也と親友なのは同中の連中とかが知ってるからな。それで鍛冶部で全国出たのはレベル上げしてもらったからなんだろって話になってな」


「配信で妹って何度言ってた事か。それで、配信後から私への質問が止まらなかったのよ。話した事もない他学年の人まで来たわ」


「私は祐也さんと潜ってるのを瀬奈ちゃんと話してたから、周りももちろん知ってて。レベルとかスキルとか色々聞かれたっすよ」


「あぁー、なんかスマン」


 頭を下げると、瀬奈はくすりと笑って肩をすくめた。


「まぁそのうち知られるだろうとは思ってたし、それくらいレベルの恩恵と比べれば小さなものだからいいんだけどね」


「そうそう。それにチャットで発表するって言われてたし」


「まぁ反応が思った以上だったって所っすね。冒険者じゃなくても、やっぱりレベル上げが楽にできるなら上げたいって事っすね」


「実際にその恩恵を受けて、全国大会に出場している俺って存在があるから、より一層知りたかったんだろうなー」


「私の場合は、レベル上げの話もそうだけど、悩み相談とかモンスター肉の味とかについて聞かれたわ。まったく、祐也が頭脳担当なんて言うから」


「それに、視聴数が予想以上だったっすね。ライターもいたし」


「視聴数? そんなに多かったの?」


「見てないんすか? 生配信で見ていたのだけでも、確か万近かったはずっす」


「今見たら、再生数10万いってるな。登録者も5万越えてる」


 ……再生数10万!? 登録者5万!?


「ちょ、ちょっと待て。昨日の配信とか、夜に質問確認してた時で再生数1万行くかどうかって所だったぞ? 登録者なんて1,000くらいだったはず」


「それだけ衝撃的な内容だったって事でしょ。インフルエンサーが拡散とかしてるだろうし」


 もう少し、ちょっとずつ増えてくれないかな。まぁあの内容じゃ無理か。盾まであと半分じゃん。


「明日は配信しないんすよね?」


「あ、あぁ。かおりんと一緒なんだから配信はしないぞ。協会に提出するための撮影はするけど」


「ダンジョンで声かけてこないといいっすね」


「確かになー。あっ、そうだ3人とも。協会の所長が3人のスキルとかの情報を教えて欲しいって言われたんだけど、教えていいか? 他の冒険者やマスコミとかから守るためには、知っていた方がいいみたいで」


「俺はいいぞー。特に知られて困ることはないし、それに祐也が有名になれば俺らも知られるだろうし。俺の場合は鍛冶師として有名になるなら、むしろ協会に顔が利いた方が都合がいい」


「私もいいっすよ。祐也さんみたいな変なスキルじゃないっすから」


「私もいいけど、Absorbスキルと滋養強壮スキルの組み合わせについては、協会は知ってるの?」


「いや、3人の情報はそこまでは知らないと思うぞ。いつ一緒に潜ったかは知ってた。あとかおりんはポーターだとは知られてるだろうな。スキルとレベルまでは知らないはずだ」


 とりあえず3人とも情報開示してOKっと。


「んー。悠斗、明日暇?」


「いや、普通に部活だけど? 祐也から依頼されてる靴と剣がもうすぐ完成するからな」


「ちょっと午前中空けられる? 祐也とかおりんと一緒に協会に行くわよ」


「なんで?」


「一度協会と顔合わせしておいた方がいいでしょ。これからお世話になるでしょうし」


「まぁそうだな。いつか俺の作ったものを協会で売ってもらうかもしれないし」


「しておいて損はないでしょ。祐也、協会の所長さんは仙台入口にいるのよね?」


「まぁそのはずだな。明日休みじゃなけりゃ」


「ちょっと連絡できない? 繋がったら私が話すから」


「連絡先なんて知らないけど……仙台入口の代表番号にかけてみるか」


 伊達さんはまだバタバタしてるのかな。繋がるかな?


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