81話:検討・相談
ダンジョン協会の伊達さんから様々な提案を受けたその日。
家に帰ってきた俺は、家族へと相談……するのは明日にしよう。まずは自分で考えてみたい。
まずは情報提供について。これは問題ないので、全面協力でいい。俺以外の冒険者に情報提供したくないなんて思わない。他の冒険者が俺より先に最下層に行っても構わない。絶景を見る事、上手いモンスター肉を食べる事。それには他の冒険者に先を越されようが関係無いのだから。
次に動画配信について。これもそれ自体は問題ないと思う。
そもそも俺のスキルAbsorbは戦闘関連のスキルじゃないから、戦闘自体ではスキルを使っていない。基本的に剣道をベースにした体捌きと攻撃をしている。まぁ参考にはなるかもしれないけど、見られて困る事は無い。
有名になる事でのトラブルもあるかもしれないが、それは配信をしなくても起きる時は起きる。特に奥羽ダンジョンの到達階層を更新でもすれば、配信してなくても有名になるだろう。遅かれ早かれというやつだ。
俺の活動を見て、ワクチンみたいな連中が俺を狙ってくる可能性もある。だが、遠距離攻撃手段が無いという事以外の弱点は無く、12層でしか活動できない連中なら対処は余裕だろう。
とはいえ、ステータス強化は必要か。これはスキル、レベルの公開についても同じ事だ。
知られたとしても、ステータスでゴリ押しできるレベルまで強くなればいい。そう考えると、またどこかのタイミングで遠征に行くべきか。
続いて武器貸与について。
今の武器で困っているわけではないし、今後の事を考えると悠斗に作ってもらう方がいいだろう。悠斗のレベル上げをする意味が出てくるし、かおりんの武器防具も作ってもらえば、かおりんも協力しやすくなるはずだ。
最後に対外対応について。これに関しては協会を通してもらう形でいいだろう。直接俺に連絡してきても困るからな。まぁ20層を突破できるまでは取材依頼なんて無いだろうけど。
それに、配信を始めてしまえば大抵の事はそっちで知れるだろうし、編集せずに俺の言葉で世界に発信していれば取材も減るだろう。
こんな所か。
スキルとレベルの公開については、ゴリ押しできるレベルまで強くなってからがいいかな。しばらく非公開として、どこかのタイミングで公開に切り替えるとしよう。その時期を明確にしていれば、しつこく聞かれる事も無いだろう。
翌日も18層へと降りて、ドラフトホースとの戦闘を繰り返した。
ドラフトホースを木の幹に衝突させる方法として、シンプルに直前で左右に避ける事も試してみた。だが、ドラフトホースが俺を追いかけて横に進路を変えて、木の幹に肩をぶつけるような形となった。頭からぶつからなかったため、ふらついて動きが止まる事はなく、少し肩を痛めたように見えたが、ほとんど変わらないスピードで駆け抜けていった。
その後再び三角跳びを試してみると、しっかりと木の幹に衝突した。ドラフトホースには、俺が突然視界から消えたように見えるんだろうか。それで戸惑っている間にぶつかる、みたいな感じだろうか。
そのため、次からは最初と同じくドラフトホースに背を向けて、木の幹を蹴り上げて三角跳びをする練習を重ねていった。
余裕を持って避けるため、できるだけ高く跳ぶようにしていたのでダメージを受ける事は無かった。だが、跳ぶのが早すぎて、危うくドラフトホースが木にぶつかる前に落ちてきそうになった事はあった。
どれだけ怯えずにギリギリまで引きつけてから跳ぶか。それがドラフトホース対策として重要だった。
ちなみに、協会にある情報には、ギリギリで避けて木の幹にドラフトホースをぶつける事、木の幹から隠れたまま攻撃する事が推奨されていて、三角跳びは書かれてなかった。
という事は、こんな方法で倒しているのは俺だけかもしれないな。
「ただいまー」
いつものように帰宅してから、一旦リビングに顔を出す。
「おかえりー。まだ料理作ってるから待ってて」
「着替えてくるから大丈夫。先に何か出せるなら出して欲しいかな」
「はーい。ステーキだけ数枚先に焼いておくよ」
俺の要望を受けて作ってくれるのはありがたい。
まさに料理人だな。
部屋で着替えてリビングに戻ってきて、ダイニングに座りながら、いつものようにスマホで情報収集をしていく。
そういや、配信は普段あまり見てないけど、今はどれくらいの階層で配信してるんだろ。
ダンジョン配信と検索して、出てきた一覧を眺める。
奥羽ダンジョン以外のダンジョンの動画が大半だが、それでも大体が10層や12層のあたりのものだ。それより浅い階層だと再生数が少ない。14層以上の動画は少ないが再生数は多い。古株の配信者なのかな。おっ、16層もある。他には……1つしか見つからないな。
やっぱり16層以降の配信はほとんど無い。それなら18層以降の配信をするのはありだな。
まぁこれもすぐにではなく、強くなってからにしよう。
「はい、ステーキできたよ」
瀬奈の手にした皿には、ウインドベアのステーキが山のように盛られていた。
「サンキュー」
「ちょっと時間早いけど、他のも作って持ってきていいんだよね?」
「あぁ、頼んだ。いただきます」
両手を合わせてから、ナイフとフォークを手にした俺は、一心不乱にウインドベアのステーキを口へと運び始めた。
いつもの定番メニューである大和煮と唐揚げも食べ終えた俺は、食器を台所へと運んでいく。
「瀬奈、昨日ダンジョン協会の人に呼ばれてさ」
洗い物を始めている瀬奈へと声をかける。
「なになに、悪い事でもしたの?」
「してねぇよ。18層のモンスターを討伐できた冒険者は、必ず協会に呼ばれて色々と話をするらしい」
「なんだぁー。それで、それがどうしたの?」
そこから、協会に依頼された情報提供、動画撮影、動画配信。
協会から提供される対外対応の窓口、武器防具貸与。
そして、スキルとレベルの公開について話して、俺の考えも伝えた。
「へぇー。それで、なんで私に聞いたの? 祐也が決めればいいじゃん」
「これまでも瀬奈に相談して良かった事が多かったからな。それに、俺と一緒にダンジョンに入ってるのは、かおりんと瀬奈と悠斗だけだろ。瀬奈にも影響はあるからな。3人の対外対応も協会に任せようと考えてたから、確認しておくべきだろ」
「なるほど。かおりんと悠斗にはいつ話すの?」
「かおりんは週末のダンジョンで話す。悠斗は……合宿の時でいいかな」
それを聞いた瀬奈は、大きなため息をついた。
「かおりんはそれでいいけど、悠斗はかなり先じゃん。ってか、連絡とって伝えておきなよ」
「連絡……めんどくさいな」
「はぁー、祐也は本当に筆不精よね。分かった、私から話しておく。ついでに合宿の日程も聞いておくからね」
「助かる」
「もう、近いんだから直接家行けばいいじゃん」
「あいつにも色々あるだろ」
「チャットしてOKもらったらすぐじゃん。まぁいいよ。日程はいつでもいいよね?」
「合宿の日程に合わせて週一の休みの日は調整するから大丈夫。まぁ去年と同じで、お盆前後でいいんじゃない?」
「分かった。かおりんとも連絡とって、調整しておく」
「頼んだ」
こういう所は瀬奈の方がしっかりしている。適材適所という奴だ。
もしかしたら、対外対応も瀬奈にお願いしたらいいかも。まぁそれは高校卒業後に考えるか。




