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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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65/82

65話:クリスマス

 北海道ダンジョン土産のインパクトラムとアーチャーフィッシュを2週間弱で食べ終え、ようやくストライクホースとボルダーグラップラーの肉を食べ始めた。

 ただ、この2体が重すぎる。150kgと180kg。北海道ダンジョンでは毎日13kg食べてたけど、あれは肉だけだったし、早く帰りたい気持ちがあったからできた無茶だ。

 家に帰ってきてからは、母と瀬奈がちゃんと栄養を考えろと言って野菜も米も食べている。腹がキツイほどは食べるなとも言われ、1日に食べられる肉は8kgに制限されている。いや、十分多いけど。


 それでも生体で150kgのストライクホースなら、瀬奈の滋養強壮スキルの効果を受けても200kg、180kgのボルダーグラップラーなら240kgの肉を食べないと上限に到達しない。

 1日8kgでもストライクホースは25日、ボルダーグラップラーは30日。11月末から食べ始めてもうすぐ年末だが、交互に食べているのもあって、まだどちらも上限に到達していない。

 まぁ焦っても仕方ないか。



◇◇◇



「楽しみっすねー!」


 12月23日日曜日。高校は昨日から冬休みに突入した。

 そういう訳で来週からは毎日2人でダンジョン、というわけでもない。『年末年始は休め』という珍しい父からの命令により、12月29日から1月3日はダンジョンは禁止になったのだ。

 まぁ食べるのは禁止されないし、その期間は毎日肉を12kg食っていいなら休む、という条件を提示して、限定的に了承が得られたのでまぁいいだろう。

 限定的というのは、元旦はおせちを食え、ということで元日は多分6kgくらいしか食えないかなと思う。



 そしてかおりんが楽しみにしている理由。

 年末年始が休みになることを伝えると、『分かったっす。それとは別でクリパやりたいっす!』という要望が出され、瀬奈がそれに乗ったので、探索を少し早めに切り上げて我が家に向かっている所だ。

 ……かおりん、うちに来すぎでは?


「瀬奈ちゃん、何作ってるっすかね?」


「俺にも教えてくれなかったからな。いつもの馬刺しとかステーキとかではないだろうし」


「クリスマスっぽい料理だといいっすね」





「ただいまー。じゃあ先にリビング行ってて」


「お邪魔します、了解っす」


 家に入ると、玄関で既にいい匂いが漂っていた。これは瀬奈が気合入れて作ったな。

 2階の自室で着替えてからリビングのドアを開けた瞬間、玄関で感じた予感が確信に変わるような、濃密で芳醇な香りに包まれた。

 バターのコク、赤ワインの深み、そしてハーブの爽やかな香り。


「じゃあ始めよっか! クリスマスパーティー!」


 テーブルに並べられた、いつもより手の込んだ料理たち。


「ローストホース、カルパッチョ、赤ワイン煮込みの3品だよ。

 今日はソースにこだわってみたから、堪能していってね」


「わあぁ! 瀬奈ちゃん、これ全部ストライクホースっすか!? お店みたいっす!」


「ふふ。祐也、かおりん、冷めないうちに座って」


 俺たちは促されるまま席に着く。


「それじゃあ、グラスを持って。メリークリスマス!」


「「メリークリスマス」っす!」


 グラスに注がれた炭酸飲料を一気に飲み干す。


「それじゃあ、いただきます! まずはカルパッチョから」


 円形に並べられた薄切りの赤身。いつもの馬刺しより薄いその上には粉チーズが雪のように降り積もり、ベビーリーフの緑とミニトマトの赤がクリスマス感を演出している。

 箸で4つの食材を取って、口へ運ぶ。

 んー、瑞々しいな。馬刺しと違って、バルサミコ酢の酸味が肉の甘みを引き立てている。

 ストライクホース特有の強靭な弾力。それが薄切りにされることで心地よい歯ごたえに変わり、噛むたびに肉の旨味が溢れ出てくる。その旨味をチーズが底上げして、ベビーリーフとミニトマトがさっぱりと洗い流してくれるようだ。


 次はメインのローストホース。断面は驚くほど鮮やかなピンク色だ。低温調理でじっくり火を通されたのだと思うが、ナイフが抵抗なく沈んでいく。切り分けて一口。

 うん、噛みしめた瞬間、閉じ込められていた肉汁がじゅわっと溢れ出した。しっとりと柔らかくて、カルパッチョとの食感の違いも楽しめる。

 甘酸っぱいベリーソースが、赤身の濃厚な旨味を上品に纏め上げている。確かに、このソースはいいな。瀬奈がこだわったのも分かる。


 最後は煮込み料理だ。赤ワインのいい匂いがしている。箸でも切れるほどホロホロになった肉の塊を口に含む。

 はふっ。赤ワインの渋みと冬野菜の甘みが、ストライクホースの繊維一本一本にまで染み込んでいる。噛む必要がないほど柔らかく、外で冷えた身体にじんわりと染み渡っていくのを感じる。

 3品でどんどん柔らかくなっていく食感も面白いな。



「んんーっ! 幸せっす! クリスマス最高っす!」


 かおりんは頬をリスのように膨らませながら、止まらずに食べ続けている。じゃあ俺もどんどん食べるか。





「ふー。お腹いっぱいっす」


 俺も満足だ。いつも通り追加で作ってもらったカルパッチョも食べて、腹八分目くらいまでは満たされたかな。


「瀬奈ちゃん、いつも美味しい料理ありがとうっす。

 これ、クリスマスプレゼントっす! もらって欲しいっす!」


「ありがとう、かおりん。じゃあ私からもクリスマスプレゼント」


「ありがとうっす。これはボディークリームっすか、使うっす!」


「こっちはハンドクリームじゃん。早速使うね」


 プレゼント交換なんて、クリスマスっぽいな。高校生ってこんな感じなんだな。


「祐也さんにもどうぞっす」


「えっ? 俺に? 何も用意してないぞ?」


「さすがにこの間のお土産は高すぎなんで、そのお返しも兼ねてっす。

 それなのに祐也さんからまたもらうのはできないから、何も言わずに用意したっす」


「あー、なんか悪いな」


「ぶー、その反応はダメっす」


「祐也、それはダメだね」


「は? あー、ありがとうございます」


「まぁギリOKっす」


「なんで丁寧語なのよ」


 2対1はキツイって。

 かおりんからのプレゼントの包みを開けると、そこにあったのは黒いキャップだった。


「祐也さん、坊主なのに帽子被ってなくて、見てるこっちが寒くなるんで帽子にしたっす。それなら冬以外でも使えるかなって思ってそれにしたっす」


 ちゃんとしたものを、ちゃんと考えてくれたのか。


「ありがとう。明日から使うよ」


 お礼を伝えると、かおりんは機嫌が良くなったので、この対応で正解だったんだろうな。

 はぁー、良かった。


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