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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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63話:第10層の砲撃手

 夕食会の翌日もかおりんと第10層にやってきた。

 ストライクホースがあの程度なら、もう1体も大丈夫だろう。昨日とは違う渓谷を進んでいく。



「祐也さん、今日はボルダーグラップラーを狙うっすか?」


「ああ、ストライクホースは問題なかったからな。こいつも倒せれば第10層でレベル上げできるからな。

 おっ、来るぞ。盾を構えろ!」


 ヒュッ、と空気を切り裂く音。だが、ストライクホースのそれよりも低く、重い風切り音だ。

 視界に飛び込んできたのは、ソフトボールよりちょっと大きいくらいの無骨な岩塊。

 俺は最短の軌道で鞘に入れたままの剣を振り抜いた。


 ガギィンッ!


 手に伝わる衝撃が、ストライクホースの石よりは段違いに重い。

 弾き飛ばそうとした岩は、10mほど先にボトリと落ちた。打ち損じたボテボテの内野ゴロだな。


 次々に飛来する岩の弾丸。ストライクホースは岩を作り出す間に隙があったがこいつは違う。あらかじめ用意していた岩を、間髪入れずに投げつけてきている。


「うおっ!? 重いっす!」


 ドォンという衝撃音を響かせ、隣で盾を構えたかおりんが衝撃に押されて数歩たじろぐ。


「一旦、あの大きな岩陰に隠れるぞ!」


 俺たちは飛来する岩を避け、巨大な岩の背後へと滑り込んだ。

 ゴン、ゴンと岩を叩く重苦しい音が響く。


「止まったか?」


 音が止んだ一瞬の隙を突き、俺は岩陰から飛び出した。


「かおりんはここで待機! 隙ができたら合図する!」

「了解っす!」


 駆け出した俺を、新たな砲撃が迎撃する。球のスピードはストライクホースの石よりは遅いが、岩よりは断然速い。この質量が連射されるのは厄介だ。

 俺は飛来する岩を鞘の腹で受け流し、あるいは最小限の動きで回避しながら距離を詰めていく。北海道のウォータージェットに比べればマシだが、数が多いため、なかなか間合いに入らせてもらえない。


 おっと。弾幕が途切れた。手持ちの弾切れか?


 その隙を逃さず、俺は一気に踏み込んだ。

 その先に待ち構えていたのは、体長1.6mとほぼ俺に近い大きさの、丸太のような腕を持つ熊のモンスター、ボルダーグラップラーだ。


 こちらに気づいた奴は、投げつける岩の球を作るのを諦め、その巨大な右腕を振り下ろしてきた。鋭い爪が空気を引き裂く。

 行くぞ!

 俺は横から剣を振り抜き、奴の腕を真っ向から迎撃した。


 ガツゥン!


 強靭な腕力を力ずくで弾き返し、がら空きになった腹部へ鋭い一閃を見舞う。

 だが、厚い脂肪と筋肉に阻まれ、手応えは浅い。


 奴は怯むことなく、逆の左腕で追いすがってきた。

 俺は冷静にそれを弾き、同じ箇所へさらに深く剣を叩き込む。


 今度は確かな手応えがあった。深く切り裂かれた腹部から力が抜け、ボルダーグラップラーの上半身が前へ傾く。


「今だ! 投げろ!」


「はいっす!」


 俺の合図と同時に、かおりんが渾身の力で鉄球を放った。

 俺は奴の左に回り込みながら、腕と足に斬り込む。膝裏を払ったことで、さらに体勢を低くさせる。

 一直線に飛来した鉄球は、下がってきた後頭部に直撃した。ゴンッ、と鈍い音が響き、首がグッと縮こまる。


 トドメだ。鉄球が当たり、更に動きが鈍ったボルダーグラップラーの後ろ首に全力で剣を振り下ろす。

 ズシュッという音と手に伝わる肉を断つ感触。

 そのままズシーンと前へと倒れるボルダーグラップラー。


「終わったぞー!」


「今行くっすー!」



 すぐにやってきたかおりんにボルダーグラップラーを運んでもらう。


「180kgあるらしいけど、問題ないのか?」


「問題ないっすね」


 運搬スキルってスゴイよな。

 プロテクターも盾もほとんど重さを感じないっていうし、鉄球も運搬スキルのおかげで手から離れるまではソフトボールみたいに軽いらしいし。




 階段まで到着してから、ササッと血抜きと解体した。

 さて、ハツを食べますか。


「かおりん、レバー食う? 鮮度抜群だし、第10層のモンスターだから絶対に旨いぞ」


「いいんすか!? いただくっす!」


 かおりんにレバーを渡して、俺はハツを一口サイズに切って、何もつけずに口へ。

 ん! やっぱりこの弾力だよな! ストライクホースやインパクトラムと同じくらい力強い。

 そして、断面から溢れ出す濃縮された血の旨味と雑味のない肉の甘みが口に広がる。もう第10層クラスになると、とにかく旨い。俺の語彙力じゃ表現できなくなってきた。まぁ食レポが仕事じゃないし、美味しく全部食べればいいか。


「んー!! んー!!」


 かおりんが足をジタバタしてる。


「どうした!? 大丈夫か!?」


「ん……旨いっすー!! めっちゃ甘いっす、口に入れたら溶けたっす!! ヤバいっす!!」


 何かと思ったらそういうことね。喉に詰まったりしたのかと、ちょっと心配したのに。

 それにしても、またかおりんの語彙力が無くなってる。なかなかのいい食べっぷりで、どんどん口に放り込んでいってる。食べ過ぎなきゃいいけどな。


「このレバー、持って帰っていいっすか!?」


「構わないぞ。新鮮なうちに食べきるか、悪くなったら捨てるんだぞ」


「もちろんっす! 今夜はこれで家族とレバー尽くしっす!」


 大丈夫か? そのレバー、4kg近いからな。家族全員で食べてもレバー地獄になるぞ。

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