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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第4章:北海道遠征

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54話:北海道第6層・エビ

 メドウラムを食べ始めて数日が経過した。


「魚介類が食べたい」


 肉もいいんだけど、やっぱり魚介類が食べたくなる。北海道ダンジョンにいるんだから、海が見えるんだから、やっぱり食べたい。

 ということで、メドウラムはまだ上限に到達してないけど、海の方にやってきた。


 砂浜に立つと、潮の香りが一気に強くなる。

 事前に調べた情報によれば、第6層の海辺に生息するのはスピニーシュリンプ。体長1mほどのエビのモンスターだ。

 最大の特徴は全身を覆う鋭いトゲ。そして、浅瀬を滑るように爆走し、水しぶきを上げて敵の視界を塞ぐという、厄介な戦法を用いてくる。


 そんなモンスターを倒すためには海に入らないといけない。

 水深が深いと厄介だが、膝下くらいが遠くまで続いているらしいので、泳ぎながら戦うということにならないのは助かる。


 海に足を踏み入れると、冷たい海水が魔導鋼の靴を包み込む。砂浜とは違う水の抵抗。この足場の悪さが戦闘にどう影響するか。

 剣を持ち、波打ち際から十mほど沖へと進む。周囲を見渡してもモンスターの姿はない。

 来るなら水面に動きがあるはずだ。音と波の動きに集中する。



 ザパパパァァァン!

 その時、前方100mくらい先の水面から水音と共に大量の水しぶきが上がった。

 その中心から、何かが猛烈な速度でこちらに向かって突進してきている。


 原付並みの速度だな。スピニーシュリンプはモーターボートのように、浅瀬の水面を滑るように爆走していた。

 白い水しぶきのカーテンが俺とエビの間に立ち塞がる。敵の正確な位置が分かりにくい。だが、こちらに接近していることは確実だ。


 剣を右斜め下に構え、迎撃の体勢を取った。

 ここだッ!

 水しぶきと共に突進してきた棘だらけの影。

 俺は、魔導鋼の剣を下から斜め上へと振り抜いた。突進のエネルギーを利用し、敵の体を斬り裂く渾身の一撃。


 ん!? カーン!


 金属音が響く。剣は確かにスピニーシュリンプのトゲに覆われた頭部を捉えていた。

 だが、俺の手応えはよろしくない。剣がエビの甲羅の硬さに弾かれたという感じではなく、ぶつかった衝撃自体が驚くほど弱い。

 水深が膝下とはいえ、剣を振り抜く瞬間に刃が水に当たり、水の抵抗で剣速が落ちて攻撃の威力が半減したのだ。

 カーンとトゲとぶつかり合った剣は、スピニーシュリンプを弾き飛ばすことなくその場で止まってしまった。ダメージを与えられていない。



 スピニーシュリンプは、尾を強く動かして後ろに飛ぶように泳いでいき、俺との距離を取った。そして助走距離を稼ぐために旋回するように、その辺りをクルクルと泳ぎ回っていた。


 水の抵抗を極力少なくして、スピニーシュリンプに剣を当てることが必要だな。

 縦に振れば水の抵抗を受ける。なら水面に平行に振ればいい。剣を海面スレスレの高さで左後ろに構え、重心を落として両足でしっかりと海底の砂を踏みしめ、体勢を安定させた。

 全力で突っ込んでくるスピニーシュリンプに対し、溜めた力を一気に解放し、水平に剣を薙ぎ払った。


 ズシャッ!


 水の抵抗を一切受けなかった二撃目は減速することなく、スピニーシュリンプの頭部を叩き割った。

 その勢いでスピニーシュリンプは吹き飛ばされ、近づくと力なく海に浮かんでいた。


 この巨大なエビが、一体どんな味がするのか楽しみだ。

 俺は、巨大なエビの身を袋に詰め、階段へと戻り始めた。




 さて、解体していくか。


 まずは全身を覆う鋭いトゲだ。これがあるままでは調理がしにくい。剣を器用に使い、表面のトゲを根元からバリバリと削ぎ落としていく。

 殻が滑らかになったところで、背中に一本の切れ込みを入れ、太い背わたを引き抜く。砂を噛んでいる可能性のある背わたを丁寧に取り除くのは、美味しく食べるための絶対条件だ。


 全長1m。さすがにそのまま網には乗らない。殻ごと大胆に十センチほどの厚さで輪切りにしていった。

 断面からは、弾力に満ちた真っ白な身が顔を出している。


 カセットコンロの火をつけ、網の上にそのぶつ切りを並べていくと、

 ジュゥゥッ!

 瞬間、エビの殻が熱せられる特有の香ばしさが立ち込めた。鈍い赤褐色だった殻が熱を通されて瞬く間に鮮やかな深紅へと変わっていく。エビの汁が殻の中でふつふつと煮え立ち始めた。


 焼き上がった塊を手に取り、熱さを我慢して殻を剥く。中から湯気と共に引き締まった身が姿を現した。まずは何もつけずに、そのままかぶりつく。

 噛んだ瞬間、歯を弾き返すような強烈なプリプリ感。噛みしめるたびに、身から力強い旨味が溢れ出してくる。蒸し焼きにされたことで、エビの汁が全て身の中に凝縮されたのだろう。


 これだけでも十分すぎるほど旨いが。

 頭部の殻の中には濃厚なエビ味噌が詰まっていた。そこへ先ほどの身をくぐらせ、黄金色に輝くエビ味噌を贅沢にたっぷりと絡め取ってから口へ放り込む。


 っ! なんだこれ、美味すぎる……

 身の甘みに味噌の濃厚なコクが重なり、味の密度が数倍に跳ね上がる。カニ味噌の時も感動したが、この組み合わせはそれを遥かに凌駕している。


 あまりの美味さに、たまらず味噌だけを掬い取って口へ運んだ。

 カニ味噌よりずっと濃い。サンドクラブのカニ味噌も十分に濃厚だったが、このスピニーシュリンプの味噌は次元が違う。磯の香りが凝縮されているのはもちろん、クリームのように滑らかで、強烈なコクと甘みが残る。

 想像以上だな。カニ味噌が最高だと思ってたが、こっちの方が断然俺の好みだったわ。



 くそっ、これ全部を一食では食べきれない胃袋がもどかしい。

 北海道ダンジョンにいる間に、もっと胃袋のキャパを増やせないものかな。


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