102話:レベリング配信
「どうも、皆さんおはようございます」
:おは
:おつ
:おはよう
:おはようございます
:クリスマス当日に特別配信と聞いて
:どんなクリスマスプレゼントが出てくるのか
:ここは18層か19層か?
:何をするんだい?
あの迷惑な新聞社の記者を撃退してから3週間ちょっとが経っていた。
世間はすっかりクリスマスムード。というか、今日はクリスマス当日。
まぁクリスマスも関係なく、昨日は瀬奈のレベル上げをしていた。クリスマスディナーは前日に仕込んだり作り終えていたので、帰ってからいつもよりも手の混んだ料理とケーキが出てきた。もちろん使われている肉はドラフトホースだ。シチューと角煮とローストホース。普段より時間のかかる煮込み系を多めにしたと言っていた。
そのレベル上げがあったので、昨日は火曜日だったが配信は無し。
というか冬休みに入ってかおりんが毎日一緒なので、配信は基本的に休みだ。
だが、今日は特別に配信をする。というのも。
「さて、今日は特別配信です。冬休み中は配信しないつもりだったけど、配信に出たいという本人からの要望があったので配信します。
ちなみに、映るのは俺とそいつだけ。ポーターは映さないようにするし、声もほとんど出さないって言ってるからよろしく」
:配信に出たい人?
:フードファイターの知り合いって事か?
:リア友?
:そいつ呼びって事は仲良さそう
:普通はリア友をダンジョンに連れて行かないよw
:危険な場所だって分かってる?
:有名な冒険者だったり?
:冒険者だったらこんな対応じゃないよな
:冬休みになってから出てくるって事は学生?
:妹か親友か
「正解者が現れたので、早速出てもらいます。それじゃあゲストさん、自己紹介どうぞ」
俺が振ると、ドローンの前にスッと姿を出した。
「どうもー、いつもうちの祐也がお世話になっております」
:おとん?
:父?
:父親?
:いや、若いだろ
:兄?
:親友かな?
「祐也の親友の梶原悠斗です。俺の名前も協会のホームページに載ってると思うけど、はじめまして。よろしく」
:親友くんか
:掲示板で何度か書かれてた親友
:フードファイターと同じ名字が妹だとは思ってて、他2人のうち男の名前が親友だと思ってたから予想通り
:じゃあもう1人の女性がポーター女子か
:それにしても、どうして顔出し?
:目立ちたがり?
:有名人になりたかった?
色々と言われる前に、さっさと始めるか。
「悠斗が配信に出たいと言ったのには理由がある。まぁコメントにもある、有名人になりたいというのはあながち間違ってない」
「間違ってはいないな。有名になりたいというか、宣伝目的だし」
:間違ってないのかよww
:ミーハー?
:宣伝?
:宣伝とは?
:何の宣伝?
:案件?
:案件動画だったのか?
:案件にしては、人選が謎
ある意味で案件動画なのか。まぁ金はもらってないけど。代わりに武器防具をもらってるか。
「さっさと本題に入りたいから、宣伝してくれ」
「おう。では改めて視聴者の皆さん。祐也の親友であり、祐也が使っている武器防具の制作者である、鍛冶師の梶原です。初期スキルは鍛冶、今のレベルは34。夏の全国大会に出場してます。まぁその時よりレベル上がってるから、もっといい物を作れます。
今は協会に依頼されて魔導鋼の武器を作ってるけど、それが落ち着いたら受注生産を受け付けるんで、その時は東北支部に依頼して下さい」
悠斗の目的は自分の売り込みだ。
鍛冶師として今後やっていくために、ある程度の知名度が欲しいという事で協力したのだ。
大手に就職するなら知名度は不要なんだけど、『多分就職しないで独立する』という事で、今からちょいちょい配信に出るという事だ。
レベルが上がればもっといい武器防具を作れるだろうし、レベル50で手に入るスキル次第ではもっといい武器が作れるはずだ。
:レベル34!?
:鍛冶師で34レベルってトップ層じゃん!
:8層の適正レベルか
:この親友、何度ダンジョンに潜ったんだ?
:掲示板の情報だと10日も潜ってなさそうだけど……
:10日でレベル30超えって事!?
:マジで?
:そんな親友がいるって事は
:こりゃレベル上げの様子が見れるのか?
:手本が見れるんだな!
:手本として参考になるならいいんだけど……
「さて、自己紹介も終わったから早速モンスターを倒しに行くぞ。ちなみにここは19層です。いつも通りドラフトホースを狩りに行く」
「4レベルは上げないとな!」
:やっぱり19層か
:レベル34で19層はおかしい
:三角跳びがあるからやられないとは思うけど
:いつも通りなんですね……
:ポーター女子とも19層に行ってるのは知ってるけど、改めて異常
:鍛冶師は怖くないのか
:4レベル?
:1日で38レベルまで上げるって事!?
:7層だと1レベル上げるのに2週間近く掛かるんだが?
:どんなレベリングが見れるのか
悠斗と一定の距離をとったまま、俺は森の中へと進んでいく。
離れすぎると何かあった時に助けに行けないから、そこだけは気をつけている。というか、ドローンの設定で何m離れるかを決められるので、ちょうどドローンの下を歩けばいいように設定してある。だから、前回よりも安心して先を進んでいける。
:また三角跳びが見れるのか
:最近は20層での配信がメインだったからな
:たまに見たくなる三角跳び
:相変わらず大きな木だな
:この木で家を作ってみたい
:この木は高級品?
視聴者もこの森での戦いを見慣れている。だから、コメント欄はとても穏やかだ。
さっさとドラフトホースには出てきて欲しい。そうじゃないと、配信がだらけてしまう。
ドカドカドカドカッ
やっと来たか。遠くからでも音が聞こえるのは分かりやすくていい。
夏休みにも悠斗は戦っているので落ち着いている。
:来たぞ!
:三角跳び三角跳び!
:あの鍛冶師、落ち着きすぎじゃね?
:34レベルで、適正レベルまで50くらい離れてるのに
:慣れてる
:夏に18層にいたんじゃなかったっけ?
:じゃあ慣れてるのか
:恐怖で動けないんじゃないのかよ
森の奥から近づいてきて、姿を現したドラフトホース。
いつものように木の幹まで数mの場所に立ち、ドラフトホースが近づいてくるのを待つ。
そして、いつものように近づいてきた所で木の幹を使って三角跳びをする。
:キターーー!!
:これこれ!
:これが見たかった!
:これが三角跳びか
:アーカイブで見てるけど、やっぱりすごい
:あとは後ろ足を斬り飛ばして終わりか
ドガァンッ!
直後にドラフトホースは木の幹へと衝突し、動きを止めた所で着地した俺は後ろ足を斬り落とす。
そして、衝突音を確認した悠斗が駆け寄り、手にしたハンマーでドラフトホースの身体へと一発当てる。
:鍛冶師が近づいていくぞ!
:もうドラフトホースは走れないだろうから安全ではあるな
:ハンマーを一当てして離れていくな
:あれで終わり?
:あれでダメージ入ったのか?
:いい音はしたけど、血も出てないし、衝撃を与えた感じもなかったな
:フードファイターが首を斬り落としたな
:これで終わりか
:これがレベリング?
:これでレベル上がるの?
首を斬り落として戦闘終了だ。
「おっ、上がったぞ」
「よし、じゃあ半分に切ったら次を探しにいくか」
俺はすぐにドラフトホースを半分にして、かおりんが持ち運べる大きさにしてから次の獲物を探しに行く。
そうして更に数体を倒して、昼休憩の時間となったので階段へと戻っていく。
「レベル上げはこんな感じだ。貢献度は0.01でいいから一発当てるだけでいい」
「やる前は意味分かんなかったけど、実際にレベル上がればそういうもんだと納得するしかないから諦めろー」
:これで本当にレベル上がるの?
:いまだに信じられない
:貢献度0.01もあるか?
:髪の毛1本分の細さくらい?
:電子レベルじゃない?
:納得できんって
:諦めろってさ
:考える事を放棄してません?
援護のような、攻撃のような悠斗の言葉にコメント欄も困惑気味だ。
「それじゃあ、ここで一つお知らせだ。さっきのレベル上げにも関係してるぞ」
:お知らせ
:なんだろ
:レベル上げにも関係してるお知らせ?
:レベル上げたい人募集とか?
:レベル上げイベントでもやってくれるのか!?
:やってくれイベント!
スマホゲームじゃないんだから、レベル上げイベントなんてやらねぇよ。
「ダンジョン協会のホームページのお知らせ欄を見てくれ。協会から新しく認定冒険者制度が発表された。これは、その冒険者がレベル上限に到達しているという事を協会が公式に認定する制度だ。
さっきのレベル上げ方法を実際に協会の関係者にやってレベルを上げた事で、俺が認定冒険者第一号となった」
:協会のホームページのお知らせ欄
:本当にお知らせが追加されてる
:認定冒険者?
:レベル上限到達の認定制度?
:フードファイターの名前が載ってる!
:つまりここに掲載された冒険者はレベル上限に到達してるから、その人とダンジョン潜ればレベル上げができるという事か
:ここに掲載されてない冒険者に金払ってレベリングしてもらうなって事か
:もうすぐ認定される、って言うような人を信じるなよ
:協会が圧力をかけて認定しない、みたいな事を言う人も信じるなよ
:最近詐欺のニュース見かけるもんな
:情弱すぎるよな
:まぁ詐欺に引っかかる人は何かの詐欺で引っかかる
:レベリング詐欺に引っかからなかったら、投資詐欺とかに引っかかる
:むしろ投資詐欺に引っかかった人が狙われてそう
「レベル上限に到達していて、レベリングで稼ごうとしてるなら協会に申請して認定のテストを受けてくれ。テストの内容は、実際に協会が指定した低レベルの人のレベリングをする事だ。低レベルの人がレベル5とかなら8層で1体倒せば確実にレベルが上がるから、それで確認するような形だ。
なお、一度テストをして不合格の場合は5年間再申請は不可となっている。まぁ嘘をつく奴なら一生申請不可でいいような気もするけど、本当に上限に到達する可能性も考慮して5年間としているそうだ。
詳しい申請方法はホームページに書いてあるそうだから見てくれ」
:実際にやってみろってテストか
:どれくらいの人がテスト受けるんだろうな
:日本にいて、上限到達してる有名な冒険者っている?
:いつの間にかトップ集団から脱落した冒険者の中にはいるのかも
:申請からテストして認定されるまで1ヶ月くらいかかるのか
:不正が行われないように対策しっかりしてくれよ
:賄賂払う奴とかいそう
:申請するか
:↑マジで上限到達者?
どれくらいレベル上限に到達した人がいるのかは、協会も把握していないと聞いている。
というか、冒険者のスキルも把握してないもんな。それが日本のダンジョン協会の方針だから仕方ないけど。海外だと全国民に年に一度レベルとスキルを報告させる国もあるそうだ。
「レベル上限に到達している人がいたら、是非申請してみてくれ。ちなみに、認定冒険者には格安で魔導鋼の武器防具のレンタルをしてくれるそうだから、それが目的でもいいと思うぞ。
それじゃあ、また次回の配信で。
というか、今年の配信は多分これが最後だな。良いお年を。
俺はこれから昼飯いただきまーす」
:そんなメリットあるのか
:それなら上限到達してたら申請するかもな
:おつ
:おつかれー
:お疲れ様でした
:飯テロは無しかー
:最後に今日の弁当のメニューだけでも!
これで認定冒険者が増えて、レベリングで稼ぐ人が出てきたらいいな。
「かおりん。配信終わったからもう大丈夫だぞー」
スマホを確認したかおりんが近づいてきた。
「本当に終わってるっすね。はぁー、黙ったままでいるのはしんどかったっす」
「どこかで顔出ししちゃえば?」
「するとしても、高校卒業後っすね。今顔出しする必要は無いっす」
そういうものかね。まぁそこはかおりんがしたいようにすればいい。
さて、昼飯食って、悠斗のレベル上げの続きをしますか。




