間章-第2章- 経験不足からくる危機
ここから間章の第2章、勇者側の話となります。全13話の予定です。
時系列的には、サーシャがスフィアートからガルディア帝国に向けて、出発してからの勇者側のお話しとなります。
○○○ 桜木春人 視点
大森林に入ってから3日目、出現する邪族は、最低でもCクラスからとなっていて、気が抜けない日々が続いている。
「吹山、風の大精霊がいる方向は、こっちで合っているか?」
大森林からエルフの国シルフィーユ王国に向かうにあたって、羅針盤らしき魔導具を渡されたんだ。大森林の中は邪族が多く、方向感覚も狂うそうだ。実際入ってみると、360度全方位を木で囲まれているから、方向感覚が完全に失った。そこで役立つのが、この魔導具だ。見た目が羅針盤だ。この羅針盤は属性を込めることで、各属性の神殿への方向を指し示してくれる。今回は、風属性を羅針盤に込めたため、エルフの国の王都の中にある風の神殿の方向を指してくれているというわけだ。
「この方向で合ってますね。ああ、コロッケが食べたいです」
「そうだね、夕実、走りながら食べよっか?」
「2人ともやめておけ。匂いで邪族が寄ってくるぞ」
久保が島崎と吹山を注意してくれたようだな。どれだけ揚げ物が好きんなんだ?前に話を聞いたけど、どうも清水の家で何度かご馳走になって揚げ物にハマったと言っていたな。太らないように、毎日朝のジョギングが日課だとも言っていた。俺も清水の揚げ物を食べてみたいよ。
うん、あれは精霊か?
「みんな、ストップだ。精霊が現れたようだ」
「止まってくれてありがとう。私は風の精霊。君達が勇者と聖女のパーティで間違いない?」
この子が風の精霊か。体長30cmくらいの可愛い女の子だ。
「「うわあ、可愛い!」」
島崎と吹山も、一目で気に入ったようだな。
「ああ、俺がハルト・サクラギ、勇者だ」
みんなそれぞれ自己紹介を終わったところで、精霊が語り出した。
「あのね、風の神殿に向かっているところ悪いんだけど、現状全ての精霊が弱体化していて、勇者に力を貸せないの」
「はあ、全ての精霊が弱体化!初めて聞いたんだけど。女神スフィアに何かあったのか?」
「----ごめんね、精霊王さまも混乱していて、今は理由が話せないんだ。とにかく風の神殿にいる風の大精霊様に会って話を聞いて欲しいの」
なんだ?今、何か悲しい表情をしていたような気もするが?
「ねえ、ちょっと待って。弱体化しているということは、聖剣に精霊の力を付与出来ないてことなの?」
俺が気にかけていることを、島崎が質問してくれた。
「うん、今は出来ない。でも、もう少ししたらあの方があれになってくれるはず。そしたら昔以上に力がUPするから、もう少し待って」
「「「「「あの方?あれ?」」」」」
「あ!まだ喋っちゃいけないんだった。とにかく、風の大精霊様に会ってね。それじゃあね〜〜ーー」
止める間もなく、どこかに行ってしまった。
「おいおい、弱体化の話は聞いてねえぞ。久保は聞いていたか?」
「いや、おそらくテルミア王達も把握していないんだろう」
「とりあえず、風の大精霊に会ってみよう。どうも、事態は俺達が思っている以上に深刻なことになっているな」
精霊の弱体化、あの方があれになる----か。精霊の言い方からすると、あの方は味方だろうし、弱体化の問題も解決するかもと言っていたな。まずは、風の大精霊に会うことが先決だな。
○○○
やはり尾行されているな。
「竜崎」
「ああ、わかるぜ。尾行されているな。気配からして邪族か、どうする?」
「出来れば、少し開けたところに行こう。木々があった場合、不意打ちが危険だからな」
「確かに」
久保・島崎・吹山とも相談し、少し開けた場所を見つけ、そこで邪族達が来るのを待った。しばらくして、邪族が3体現れた。二足歩行タイプで、身長2m程、タイプはリザードマンに近いか。だが、明らかに邪力がAクラスだな、こいつら強いな。1体は剣と盾、1体は杖を持ち、残り1体は何も武器を持っていないところをみると徒手空拳タイプか。気配からして、徒手空拳の奴が一番弱いか。手強そうなのは剣士の奴か。
「おいおい、黙ってないで、何か言ったらどうだ!」
「竜崎、挑発はするなよ」
「桜木、わかってるよ。ただ、あいつらAクラスだろう。名乗らないのが不気味だと思ってな」
徒手空拳の邪族が僅かに前に出た。
「勇者よ、まずは私から手合わせ願おうか?」
「ああ、いいぜ。かかってこい!」
そう言うと、すぐに俺目掛けて突進してきた。おいおい、タックルでもする気か?かなりの速さだが、この程度なら余裕で盾で受け流せる。俺が盾で受け流そうとした瞬間、
「ペッ!」
「な!ぐわーーーーー」
《ジュ〜》
こいつ、口から何か吐き出しやがった。まともに目に入った!
「「「「桜木」」」」
「貴様らの相手は私達だ!かあ!」
くう、久保達の方でも戦闘が始まったのか?
《ズン》
「ぐは!」
があ、まともに腹に一撃もらった。目が痛い!くそ、焦るな!状況はどうなってる?竜崎達は剣士と邪法使いの邪族と戦っているのか?
なんだ!唐突に前方からの気配が強くなった。
!
見誤った、徒手空拳の奴、わざと気配を抑えていたのか!
「ぐっ、が、がは」
こいつ、強い。
「はあ!」
気配を頼りに一閃してみたが、やはり当たらないか。
「え、あ、ああーーーー」「うわあーーー、や、やめてーーーあ、ががーー」
「島崎、吹山〜〜!てめえ」
「待ってろ!今助けに行く」
「お前達の相手は私だ」
「くそ、邪魔するんじゃなねえー!」
「こいつら、連携が上手すぎる」
な、なんだ、今の声は竜崎と島崎の声か?まずい、このままだと全滅だ!
「どこを見ている?ペッ!」
《ジュ〜》
「ぐああー」
くそ、今度は右手首をやられたのか!聖剣が持てない。
くそ、どうする、どうすればいいんだ!
「かあ!」
くそ、攻撃は軽いはずなのに身体がどんどん重くなっていく。そうか、急所を確実に狙って攻撃しているんだ。
「ぐは、があ!」
くう、こいつら、俺達に考える余裕を与えないつもりか。
「くはは、勇者よ、ざまあないな。出鼻を挫いただけで、ここまでボロボロになるとは。女2人を今から殺すが、見れないのは残念だな」
「なんだと!」
「てめえ、卑怯にも程があるだろうが!」
「くそ、こいつら作戦を練っていたということか」
竜崎と久保無事で、島崎と吹山が人質になったのか!
「ふはははは!卑怯?お前達は馬鹿なのか?我々邪族にとって、勇者と聖女は天敵だ。どんな手段を用いても殺さなければならない。卑怯、褒め言葉として受け取っておこう。さらばだ聖女よ」
「いやああぁぁぁーーーーー」
「島崎〜〜吹山〜〜ーーー」
なんだ、急に静かになった。どうなったんだ?
「お前は、しばらく寝てろ。頭を冷やせ」
《ドカ》
え、誰だ?う、意識が------。
○○○
う、うう、ここは、----そうだ、邪族はどうなった?
「意識が戻った、良かったー!桜木、目は大丈夫?」
島崎無事だったのか。!え、目?あ、あれ、目が見える?
「あれ?どうして?」
「リフィアが『マックスヒール』で治療したんだ」
声の方向を向くと、知らない2人の男女がいた。赤い髪・目が鋭い男性と青い髪の綺麗な女性だ。
「あなた方が助けてくれたんですか?」
「ああ、そうだ。俺はバーン・フェイル」
「私はリフィア・ローズよ」
「助けて頂きありがとうございます。俺はハルト・サクラギです。みんな無事なんだな」
「ええ、バーンさんとリフィアさんに助けてもらったのよ」
「みんな、すまない。俺が不意を突かれて、連携が総崩れになってしまった」
バーンさんとリフィアさんが来なければ、確実に死んでいた。
「アホ!それ以前の問題だ。まあ、シンヤ(竜崎)・ヨシキ(久保)・ユミ(吹山)・ミカ(島崎)には散々言ったが、今回は責任を取るとしたらハルトお前だ。俺達は最初から見ていた。お前は馬鹿か。手合わせ願おうかと言われて、人間のような真剣勝負になるわけないだろうが。相手は邪族だぞ。卑怯な手を使ってくるに決まってるだろうが。しかも、目が見えなくなっただけで混乱して、仲間を危険に晒した。完全に相手の術中に嵌っていたな」
反論出来ない。
「すいません。完全に俺のミスです」
「バーン、反省しているし、説教はそこまでで良いんじゃない?無事生きているんだし、今回はいい経験になったと思えばいいわ」
「まあ、そうだな。お前ら、怒るのはここまでだ。だが、どうしてこの事態を引き起こしたのか原因を追求し、2度と同じ目に遭わないようにしろ」
バーンさんの言う通りだ。普段の状態なら、たとえ目が見えなくても、相手の気配や邪力の動きを読むことが出来たはずだ。いきなり目をやられて混乱し、考える余裕がなくなった。完全に出鼻を挫かれた。原因は、俺自身の実戦経験の少なさか。
久保達を見ると、みんな俺と同じ事を思ったようだな。俺はみんなを見て、互いに頷いた。
「「「「「バーンさん、リフィアさん、俺達を鍛えて下さい。お願いします!」」」」」
「お前ら、そういう時は全員の意見が一致するんだな」
「ふふ、安心しなさい。あなた達は強くなったけど、圧倒的に実戦経験が足りない。このままでは、大森林の邪族達に翻弄されて殺される危険性があると、テルミア王は判断したの。それを補うために、急遽私達がここに来たのよ」
うおおーーー、テルミア王、そこまで考えてくれていたのか!感謝します!
(実際は、少し違います)
「みんな、今回の失敗を2度と起こらないように反省して、今後に活かそう!もっともっと強くなろう!」
「「「「ああ(ええ)!」」」」
俺達は、もっともっと強くなるんだ。
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