レーデンブルクへ出発
フィン達が訓練を始めて1時間程、ジンとリッカは、虚無球(無害版)2個維持の終盤まできている。レベルが20を超えてるから、もう少しでお手玉の練習に移れそうね。フィンとイリスは、ここまでで4個の虚無球(無害版)を割っている。今、5個目の練習中ね。さすがに少し慣れてきたのか、2分程維持出来るようになったわね。これを割ったら罰ゲーム、どんな反応するか楽しみね。
《パン》
「あ!----むわ〜〜〜〜!ご、ごれは、ごの匂いは---じ、師匠〜〜〜〜」
《ドサ、ピクピクピク》
あ、気絶した。あれ?アンモニアは刺激臭だけど、気絶する程ではないはず。イリスを見ると、フィンの状況を見たせいで、顔が真っ青になっていた。
《パン》
「あ!----ふ、ふぎゃぁぁぁぁーーーーー、ぐ、お、おねえざま、なんですが、この強烈な匂いは?」
あまりに強烈な匂いだったのかな?地面を転げ回っている。
鼻を手で塞ぎ、必死に私に説明を求めてきた。
「軽い刺激臭のあるアンモニアよ。そこまで、きつい匂いではないはず」
「お、おねえざまの世界ではぞうでも、私達にとって、この匂いは強烈すぎです。ましてやフィン姉は獣人です」
あ!人間と獣人の嗅覚の差を考えてなかった。確か、5倍ぐらい敏感だったはずだ。という事は、ジンやリッカも割ると悲惨な目にあうわね。2人を見ると、フィンとイリスの光景を見て真っ青になっていた。しかも、2人とも4個の虚無球(無害版)も出してるよ。
「ジン、リッカ、割らないようにね。どうも罰ゲームに使ったアンモニアが想定以上の効果があったみたいなのよ。割ったら、フィンと同じ目にあうわよ」
「ひ!そ、そんな、もう1個割ってるから、-----どうしよう、4個も出しちゃったよ!」
あ、動揺してるし割れるな。
《パン》《パンパンパン》
「!ご、ごれは、むぎゃぁぁぁぁーーーーーザージャ様ーーーー」
《ドザ、ピクピクピクピク》
あまりの激臭に地面を転げ回り気絶した。
その光景を見たジンは、
「ヤバイ!」
あ、自分で消したか。消した場合はカウントされないからね。
「ジ、ジン、じゅるい〜〜〜」
あれ〜〜、なんか異様な光景になってるよ。ここまでの罰ではないんだけどな。
「ごめんね。人間と獣人の嗅覚の差を忘れてた」
「おねえざまー、がるく言わないで下さいよー」
フィンとリッカの2人が気絶から回復すると、さすがに怒っていた。
「師匠、あの匂いは私やリッカにとって、もはや天敵レベルです。罰ゲームなしを要求します」《プンプン》
「そうだそうだ、あんなの普通の獣人じゃ耐えられないよ!罰ゲームなし、罰ゲームなし」《プンプン》
リッカは獣人じゃなくて神獣でしょうが。
「わかったわ、罰ゲームなしにしましょう。そこまで強烈とは思わなかったわ。お詫びとして、みんなに新しい料理をプレゼントしましょう」
「「「「やったーーー」」」」
「サーシャ様、どんな料理ですか?」
「リッカでも出来る簡単な料理よ。名前は『カレーライス』、今から昼食だし、作ってあげるわ」
まあ、リッカでも出来るように簡単にやりましょう。カレーを作る上で最も困ったのがカレールウだ。日本のような市販品は当然ない。時間のあるときに、カレールウに最適な香辛料を探し回ったねわ。こんな時、隠蔽と短距離転移は便利だ。邪族を討伐しながら、王都中を探索して最適なものを5つ見つかった。
1)野菜をお好みサイズ切って炒める
2)肉を一口サイズに切って炒める
3)水を入れて、弱火で20分程煮る
4)カレールウとなる5種類の香辛料を加える
よし、これで完成だ。
《コポコポコポコポ》
「「「「はあ〜〜〜」」」」
げ!4人とも涎が出てるよ!
「師匠、これがカレーライスなんでしょうか?この漂う香ばしい匂いがなんともいえません」
「はあ〜〜サーシャ様〜〜早く食べようーー」
「そうね、それじゃあ、食べましょう」
皆一斉に、カレーライスに食いついた。熱々なのに、火傷しなきゃいいけど。
「「「「ふおお〜——————、美味い!」」」」
どうやら気に入ったようね。さすがに、あの刺激臭による絵図らを見たら、悪いと思ったわ。
「どう、カレーライスならリッカでも出来るでしょ」
「ハフハフ、はい、これなら私でも作れます」
「ここにオークカツを入れたら、もっと美味しいでしょうね」
「師匠、このカレーライス、帝国ではなくレーデンブルクにだけ教えてくれませんか?」
「別に良いけど、簡単だから真似されやすいわよ」
「この独特な香辛料がなければ、ここまで美味しくならないと思います。中華料理とは合わなそうだし、この系統の料理は獣人が好きなんです。こういった香辛料は、レーデンブルクに数多くありますから、みんな喜ぶと思います」
「わかったわ。せっかくだから、レーデンブルクに行ったら、販売されてる物を使って、料理をいくつか作っておきましょう」
「やった!ありがとうございます」
こうして昼食を食べ終え、虚無魔法の練習を再開した。全員からの批判で、罰ゲームを除去したのはいうまでもない。
○○○
虚無魔法を練習してから3日目の朝がきた。ジンとリッカは、虚無魔法『虚無球』を習得していた。フィンとイリスは、虚無球(無害版)2個によるお手玉の練習中だ。習得は、もう少しになりそうね。
私の方といえば、虚無魔法の
短距離用の剣(長さ1m・消費魔力7000)
中距離用の球(直径50cm・消費魔力10000)
遠距離用の弾
(スナイパーライフルの弾だが、長さ40cm、直径20cm・消費魔力15000)
を作った。3つとも自由に操作可能だ。まあ、ガン○ムのファン○ルのようなものだ。加護の人達の魔力量を考えると、どう頑張ってもこれが限界だった。使用者本人が消滅しないように、使用中は特殊な膜を覆うようにしている。
完成した虚無魔法をバーンさん、ウィルさん、新しく加護を与えたアレイルさん達に説明した。もちろん、黒幕が悪魔召喚を実行するかもしれないこと、対悪魔用に開発したことも言ってある。全員呆れていたわね。特に、バーンさんとリフィアさんからは、勇者と聖女に加護を付けた事でも怒られたわ。どこまで話すか、相当迷ったらしい。結局、旅に同行しているメンバー全員には、サーシャ=清水茜以外の事を全部話したらしい。桜木君と美香達も、そんな危機的状況にあることを初めて知り、今以上に鍛錬に励んでいるようだ。神族の討伐は無理でも、少しでも私の負担を減らすため、邪王や周辺の悪魔に関しては自分達で討伐すると言っていたそうだ。ほぼ全ての事情を全員に話した事で、さらなる強い意志と覚悟を持ち、仲間の絆が深まったそうだ。バーンさんとリフィアさんは、桜木君達に事情を話さず、旅を続けていく予定だったらしい。
【俺達の予定をぶっ壊してくれて感謝するぜ。事情を話すと目的を見失うんじゃないかと思って、こっちは結構気を使っていたんだぞ】
【あははは、旅に同行しているメンバーに関しては、そんな柔な精神ではありません。もっと強いですよ。信じてあげて下さい】
【あの様子からするとわかるわ。始めは驚いていたけど全てを受け入れて、次に自分達の最適な行動を考えていたもの。サーシャの言う通り、変に隠さず話していく事にするわ。ただ、今後は加護を付けるといった最重要事項は前もって言いなさい】
【はい、わかりました】
あはは、リフィアさんの声色で、相当困らせたことがわかるよ。ハイエルフの件もあるからね、本当にすいません。
まあ、みんなの絆が深まったのらいいか。うーん、どうも1人で突っ走る傾向があるから、私自身注意しないといけないわね。さて、そろそろ皇宮に出発しますか!
「みんな、そろそろに皇帝に会いに行くわよ。」
「「「「はい!」」」」
皇宮と言われても、イマイチピンとこなかったけど、テルミア王国の城とはかなり違うわね。居住区、会議場、研究所と3つの区画に別れている。今見えている建物は国会議事堂に似ているから会議場かな?一見普通の建物に見えるけど、魔導具で至る所に魔法が張り巡らせているわね。多分、登録している者以外が侵入すると、即座に警備に連絡がいくんだろう。私達が向かっている場所は、居住区にある皇帝の住まいだ。
「へー、さすが皇帝陛下の住まい、大きいわね」
「師匠は緊張しないんですか?」
「うーん、どうしてかな?全く緊張しないわね。邪神と会った時の方が緊張したわよ」
「お姉様、比較する相手が違い過ぎます」
皇帝の護衛の人が玄関にいたので、私達の名前言うと急に動きが鈍くなった。皇帝とキースめ、私が何者か言ったんじゃないでしょうね。とりあえず、中に入りリビングのソファに座った。
「なんか護衛の人、緊張してたわね」
「お姉様、緊張すると思いますよ。リッカさんの強さは知っていますし、そのリッカさんをグリグリ攻撃だけでダウンさせる人が目の前にいるんですよ。この人を怒らせたら、自分も一瞬で殺られると思っているんですよ」
「なんか失礼な奴ね。私が誰彼構わずお仕置きしているみたいじゃない。お仕置きは、仲間にしかしないわ」
「師匠、出来れば仲間にもやらないで欲しいです」
「サーシャ様、この中でジンだけがお仕置きされていません。ジンにもやって下さい」
「はあ!何を言っているんだ!俺は別に悪いことをしていないし、人に迷惑をかけてもいない。お仕置きがなくて当然だ」
ジンに関しては、特にお仕置きの必要はないわね。まあ、1度やってみて、どんな反応をするか見たいけどね。
「お前ら、ここは皇帝陛下の住まいだぞ。もうちょっと緊張感持てよ」
あ、キースが来たわね。
「一応、2%ぐらい緊張してるわよ」
「私は一応皇帝陛下なんだが、2%は緊張してないのと一緒だぞ」
皇帝も入ってきたわ。礼儀もあるので、一応全員で軽い挨拶だけはしておいた。挨拶も終わり、いよいよ中華料理の話をする時がきた。
「さて、中華料理を広めるにあたって、私が知りうる限りのレシピをここに書いてきました」
「ほお、これ程あるのか?料理人達も作りがいがあるな」
「ここに書いてあるレシピは、あくまで基本です。ここからどう改良していくかは、ガルディア帝国にいる料理人次第ですね」
「ふふ、面白いな。料理人への挑戦と受け取っておこう。次にここを訪れた時、驚くことになるぞ」
「ええ、楽しみにしています。さて、それじゃあ中華料理を教えていきましょう。お昼は、中華料理になりますけど構いませんよね?」
「ははは、もちろんだ!それが楽しみだったからな。今回は、ここで働いている者全員が昼食に参加するから、面白いことになるぞ」
完全に面白がっているわね。前もってキースから聞いていたから、バイキング形式にするんだけど、それでも大変なことになりそうだ。フィン達もやる気になっているよ。
○○○
ここは、皇帝陛下の住まいの庭、料理はバイキング式。なくなったら、すぐに補給出来るようにアイテムボックスに入れてある。
今回の光景は、いつもよりスケールアップしている。戦争(ただの昼食)の参加人数は、約40名。全員が自分の仕事を忘れて一心不乱に食べまくっている。フィンやリッカと奪いあっている人達もいれば、なんと皇帝陛下やキース皇子と奪い合っている人達もいる。不敬罪にはならない。なぜなら、皇帝陛下がこう言ったからだ。
「私の住まいは、いつも清潔に保たれている。ここにいる皆が毎日頑張ってくれているからだ。そこで、日頃からの感謝と思い、今回は中華料理というものをご馳走したい。ここにある食材全てが私のヘソクリから出しているから費用は気にするな。どんどん食べていいぞ。ただし、今回の食事に限って無礼講とする」
全員が、当初混乱していた。無礼講とはいえ、相手は皇帝陛下だ。その後、皇帝が「全員一口料理を食べてみろ」と言われたので、各々が食べていくと無礼講の意味を悟り、目の色が変わった。あの一口で、皇帝の意味を全て理解したのだ。毎回毎回思うけど、なんで私が関わる料理はこうなるのだろうか?美味しいのはわかるよ。でもさ、ガルディア帝国にだって、美味しいと誇れる料理があるはずだ。なのに、なぜこの状況になるのだろうか?
作った料理が全て無くなりました。
そして-----なんということでしょう!
みんなから、ストレスというものが消失していた。全員が全ての力を出し切ったかのような爽快感を浮かべている。戦争(奪い合い)のおかげかな?
なんか、中華料理が違う意味で広まりそうな気がする。
レシピを教え昼食も終わり休憩していると、皇帝陛下が急に駄々をこね始めた。どんな我が儘を言っているかというと、
「サーシャ、一生のお願いだ〜。我が家に温泉を作ってくれ〜」
これだよ。子供のお願いみたいだ。駄目元で、私の専用部屋と同じ泉質を持つ温泉を探索したら周辺にあったし、湯量もかなり豊富だ。人の長距離転移の場合、1度訪問しないといけないけど、物なら座標さえわかれば大丈夫だ。なぜなら、現在地の座標がステータス欄に記載されているので、目的の物を現在地に運ぶ程度なら楽に出来る。埋まってる温泉はここから近いようだ。これなら座標もわかる。実験も兼ねて、皇帝の風呂場に少量の温泉の長距離転移を試みた結果、見事成功した。まさか成功するとはね。私がやるのはここまでだ。何でもかんでも、私に頼るのは良くないからね。後は、キースに任せればいい。この3日で長距離転移を獲得したと言っていたからね。皇帝に温泉をお風呂場に入れた事を伝えると直行したよ。
「キース、後は任せたわよ。その座標を使えば、長距離転移も可能になるし皇都全体に温泉を振り分けれるでしょう。あとは、時空魔法を使える魔法使いを増やないといけないけどね」
「そこなんだよ。時空魔法を付与できる宝石か魔導具があればいいんだけどな」
キースにはスフィアートの宝石の件を伝えてあるから、ここからはテルミア王国とガルディア帝国が技術を発展してくれるでしょう。
「そんな都合の良い物があるわけないでしょう。求めるなら、自分達で作るしかないわね」
「ああ、それもそうだな。サーシャがここまで基礎を作ってくれたんだ。応用は任せろ!」
そして夕食、この時は料理人達が中華料理を用意してくれた。昼食と違って、皇帝が普段利用している場所で食べた。長いテーブルやシャンデリアが付いた豪華な部屋を想像したけど、部屋自体は少し地味ではあったが落ち着いた気分になれた。これは、食事のことを計算して作られているわね。コース形式のおかげもあって、久しぶりに悠々と食べれた。皇帝と相談した結果、今日は、ここで宿泊することになりました。
○○○
翌朝、いよいよレーデンブルクへ旅立つ時がきた。皇帝の住まいの入口には、皇帝やキース、騎士団、使用人の方々が大勢いた。
「リッチ、スオウの件が落ち着いたら、キースや騎士団、魔法使いの人達を鍛えてあげなさい。あなた自身が納得するまでやればいいわ」
「は、畏まりました。ふふふ、腕がなりますな。全員軟弱ですからな。とことん鍛え直しておきますよ」
それを聞いた騎士団達が震え上がっているわね。
「サーシャ、テルミア(人間)、レーデンブルク(獣人)、シルフィーユ(エルフ)、レムナント(魔族)の国王には、昨日のうちに私からこれまでのサーシャが行なった実績と旅の目的を伝えておいた。協力者達も問題なく、国王への謁見を行えるだろう。このまま王都に直行するのか?」
「ええ、予定外の事がなければ、まずは王都の王宮ですね。遺跡探しは、そこから始めます」
「フィン王女、故郷にやっと帰れるな。そこで、君の旅が終わるのか、それともサーシャと共に旅を続けていくのか決断が迫られるぞ」
「大丈夫です。私の中で、答えはもう決まっています」
「そうか、今の王女を見たら皆驚くだろうな」
答えは決まっている---か。どちらを選ぶのかな?
「サーシャ、弟のスオウや闘技会での一件、そして私の命を救ってくれて感謝する。見ていてくれ、このガルディア帝国を今以上に繁栄させてみせる!」
「キース、楽しみにしているわよ。それでは、皆さん、私達はレーデンブルクへと出発しますね」
リッカとジンに神獣形態になってもらい、私達は背中に乗った。
「そうか、リッカとジンは神獣だったな。」
神獣と聞いて、みんな驚いているようだ。
「ここ最近、人型形態だったからね。皇帝も見るのは初めてですね。神獣となったグリフォンとユニコーン(改)がリッカとジンの正体です」
「全く、サーシャは何度も私を驚かせるな。ふふふ、やはり面白い。一応言っておく、気をつけてな」
「ええ、それでは行ってきます」
皆に別れを告げ、私達はガルディア帝国を離れ、レーデンブルク王都に出発した。
ブックマーク、評価をお待ちしています。




