表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は半陰陽  作者: 海老野素揚
13/16

第13話 困惑

3月上旬。


僕は真の家に来ていた。

僕に見せたいものがあるから来てほしいと言われたからだ。

真の家に行くのは夏以来だった。

「おう、来たか。上がってくれ」

その言葉に僕は違和感を感じた。

「ん?どした?」

「なんか、久しぶりに会ったけどずいぶん雰囲気が変わったよね」

「そりゃあ、男の俺が女みたいな話し方してたらおかしいだろ」

僕は耳を疑った。

今、真は自分の事を「俺」と言った。

前は「僕」だったのに・・・


「何これ!?」

真の部屋に入ると異様な光景が広がっていた。

以前来た時はきれいだった部屋が散らかっていた。

部屋のあちこちにノートが積まれ、分厚い本が10冊くらい置かれていた。

本を見ると、入学試験問題集だった。

「これ全部やったの?」

「ん?あぁ。床に置いてるのは全部やった」

「すごい・・・」

僕でも受ける高校の分しか過去問題はやらなかったのに

真はその何倍もの量をやっていた。


「そう言えば、見せたいものって何?」

「それはだね・・・これだ!」

真は机の引き出しからクリアファイルを取り出し、

中に入っている紙を見せた。

「合格通知書?」

「学校名見てみ」

「松ノ島高等学校・・・え!?松ノ島!?」

松ノ島高等学校、そこは偏差値上位の有名進学校だった。

「すごいじゃない。おめでとう!」

「いやぁ、勉強は大変だったけど受かってよかったよ」

「あ。でも、ここからじゃ遠すぎない?」

松ノ島は最寄り駅から電車で片道1時間半かかる

遠い場所だった。

「そういえばまだ話してなかったな。俺引っ越すから」

「えっ!?」

「中学卒業したらすぐに引っ越す」

「そっか・・・」

真が引っ越す。

今度こそ会えなくなるというのに

何故か悲しい気持ちにならなかった。


「引っ越し先は松ノ島の近く?」

「だな。松ノ島まで電車で5分のところ」

「でも、短い期間でよく見つかったよね。

合格決まってから新しい家探したんでしょ?」

「いや。引っ越し先は1年前から探してた」

「え!?そうなの?」

「俺が男になった事を同級生に知られたくなかったからさ。

それで見つかったのが偶然にも松ノ島に近い場所だったって訳」

「知られたくないって、何かあるの?」

「女同士だから許される事をしたからなぁ。

裸見たり胸触ったり」

「え!?え!?」

女の子同士で胸の触り合い。というのは

学園漫画では定番だけど、まさか真が

それを本当にやっていたとは思わなかった。

「俺、胸なかったから大きな胸に憧れててさ。

友達に大きい子がいたから触らせてもらったことが

あるんだよ」

「そ、そうなんだ・・・」

話の続きを聞きたいような聞かないほうがいいような

そんな複雑な気持ちで頭の中がぐしゃぐしゃになった。


僕は真にどうしても聞きたいことがあった。

それは、転校先での学校生活。

僕は思い切って聞いてみた。

あまり言いたくないけど、と前置きをして真は話してくれた。


真は転校先でいじめられていた。

原因はプールだった。

転校して翌日、プールの授業があった。

担任に授業を見学したいと言ったけど

担任は認めなかった。

まだ男になりきれていない真にとって

人前で上半身裸になるのは抵抗があった。

そんな状態で迎えたプールの授業。

真は自然と胸を隠していた。

その様子が女みたいだとバカにされたのだ。

修学旅行も休んだ。

旅行先で何をされるか解らないと思ったからだ。


松ノ島受験もいじめが関係していた。

松ノ島に合格すれば自分をバカにした人たちを

見下せると思ってやった事だった。


「じゃあ、今度は俺が聞いてもいいか?」

真が僕に質問してきた。

「女の時の俺ってオカズになったか?」

「え?」

一瞬、何を言ってるのか解らなかったけど

意味が解ると僕の顔は赤くなっていった。

「な!?何でそんな事聞くんだよ!?」

「ずっと気になってたんだよ。で。どうなん?」

「そんな事・・・するわけ・・・ないよ・・・」

真は少し黙った後

「あーあ。やっぱ男になって正解だったな」

と呆れた口調で言った。

「正解って・・・」

「裸見せたのにオカズにもなれないんじゃ女失格だわ。

まぁ、おっぱいがぺったんこじゃそんな気にもなれないか。

男のものが生えてたし、なおさら無理だよな。

やっぱ女は・・・」

僕は真の事が解らなくなった。

なんでそんな酷い事が言えるの?

どうして女の子の自分を否定するの?

もしかしたら、僕の事も・・・

耐えられなかった。

真の話を聞きたくなかった。

これ以上ここに居たくなかった。

僕は立ち上がると

「ごめん。この後用事があるから帰る」

と言い、逃げるように真の家を出て行った。




「真・・・一体どうしちゃったんだよ・・・」

僕は自分の部屋で落ち込んでいた。

真は変わってしまった。

優しかった真がたった半年で

乱暴な言葉を使い、下品な話を楽しそうに言う

醜い人間になってしまった。

今の真と親友になるなんて無理だった。

僕は真に恐怖を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ