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さくらは善か悪か(仮)・輪廻篇  作者: 葉月雷音
大襲撃からの焦燥感
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098 ☈ 修行の日々③

「で、油断して結界の主にボロボロに負けた訳ね」


 呆れた様子で咲九が私の顔に消毒液を塗ってくれていた。

 迷わず咲九に噛み付く。


「だってしょうがねーだろ!? お前もお前だ!! 前以ってそういう情報を教えておいてくれたら、少しは警戒して ―― いってぇっ!!」

「さっきっからうっさいわねぇ」


 凄く大きな腕の傷口に消毒液を吹き付けた咲九は嫌そうな顔をしている。

 更に文句を言いたかった私だったが、それを咲九の能力によって遮られてしまう。口を金魚のようにパクパクと動かしてから、声が出ていないことに気付かされ ―― 更に怒りが増す。


『いい加減にしろよ!?』

「あら、テレパシーを使う何て悪い子ねぇ」

『おま……』


 と言いかけたところで、どこか遠くで雷が落ちたような音がした。

 咲九が溜め息をつき、私は驚き過ぎてあたりをキョロキョロと見回してしまう。


『何だ……?』


 一気に外が暗くなって来る。

 それを縁側から覗き込んだ咲九が呟く。


「……始まったみたいね」

『何が、だよ?』


 それと同時に、私は悪寒を感じて身震いしていた。

 決して寒い訳ではない ―― 凄く不気味な気配を森の奥から感じていた。


「遠音は自分がどこを守護しているのか理解している?」


 咲九に訊ねられ、私は森と山を思い浮かべていた。


 この森は人里に比較的近い側で、前に一人で山を少し登ったあたりの岩場くらいまでは行ったことがあった。

 それはサーニャの一件の時に一度行った場所。山は更に奥も続いていたものの、結界はそこで終わっている。

 恐らくは、そこまでが守護神としての敷地なのだろうと直感した。


 山の部位は少ない代わりに、その麓の森と周囲の人里までが、私の領地なのだろう、と。


「そう、それで正解」


 咲九は勝手に私の思考を読んでそう答えてくれた。


「その岩場で結界が3つに別れていてね。1つは山神が守護する場所、もう1つは海神が守護する場所なの。山神の敷地は広大だけど、今は8割以上が人里ね。で、海神の住める敷地はそこまで大きくはないのだけど、ほぼ山3つと考えていいくらいに自然が残っているの。殆ど海と山らしいけど……。ここまでは大丈夫?」


 このあたりの地図は良く解らない。

 だけど、山3つと言われ、更に広大な人里と考えただけで、私の領地よりも遥かに大きいことは良く解った。


「妖怪は山にしか住めない」


 咲九はそう言って悲しそうな顔をした。が、そう説明しつつも絆創膏を貼ってくれている。


「そして人里にされてしまったら、その土地から山に妖怪が移って来る。すると、ただでさえ狭い領地が更に狭くなる」

『つまり、海神か山神の領地内での、妖怪同士の領土戦争、か?』

「そういうこと」


 そう答えた咲九は最後の絆創膏の上から傷口を叩いた。

 痛みで私は何も言えなくなったが、咲九は続ける。


「まぁ、この森は昔から守護神を慕うという風習が存在しているからか、それとも人里側の複雑な結界が功を成しているのか、そういうことは一度も起きていないけどね。でもまぁ、ここでも近い将来、起きてもおかしくはないことよ」


 不意に、咲九がもしも死んでしまったら ―― 何て不吉なことをよぎらせていた。


 私はここのことを何も知らない……今だって咲九が居るからどうにかなっているだけ。

 もし咲九が死んでしまったら、リュウ様も蓮も当然ながらここに居る意味は無い。


 ―― そうか、私は何れ自立しなければならないのだな……。


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