第69話 少しの暇
その後、ジェラルド団長から戦いに勝利したとの連絡があった。
王の盾が張った魔法障壁のおかげで、住民や建物の被害はほとんど無かったそうだ。
スールブリッサに攻めてきた機神の大群の中に、アクセラバード級の機神はいなかったらしく、スールブリッサの騎士団とノルドツァンナの軍で対処できたとのことだった。
大群だったから、全くの無傷という訳にもいかず、多少の被害は出たらしいけど。
ガーディアンフォースは強めな機神の対処や住民の避難など、様々な役割を請け負って対応力を披露し、存在感をアピールすることに成功したんだってジェラルド団長が言ってたよ。
戦いの後処理が一段落した頃を見計らって、俺たちはジェラルド団長の部屋を訪れ、報告を行った。
部屋には重い沈黙が流れている。
皆の視線の先には俺の左手があった。
「……正直、君たちが離脱するのはかなり痛い」
沈黙を破ったのはジェラルド団長だった。
「元々、君たちがギガントゴーレムを起動した後に機神の基地を叩くことになっていただろう?……機神どもの襲撃を撃退した今、奴らの態勢が整わない内に反撃しようということになってな。……君たちにはドラゴロイドがいるし、精霊竜もついている……かなりの戦力として期待していたのだが……」
ジェラルド団長は再び俺の左手を見た。
「君を機神にされる訳にはいかない。暇を許可しよう。……対応策が見付かり次第、復帰してもらえるだろうか?」
リナベルが確認するように俺を見た。俺はうなずき返す。
「ええ、もちろんよ。……私たちがいない間、王の盾をよろしくね」
「わかった」
ジェラルド団長は力強くうなずいた。
「それじゃ、そろそろ行くわね」
そして俺たちはリナベルに続き、部屋を後にした。
外はすでに夕方になっていた。
飛空機械の発着場にいたリントヴルムと合流した俺たちは、コーディの案内で“孤島の隠れ家”なるところを目指し、スールブリッサを出発した。
「助けに行けなくてごめんね、ライト……。ずっと叫んでたのが聞こえてたのに……。痛かったんだよね、それ……」
どういう訳か、座席に座っている俺の姿がリントヴルムには見えているらしい。
飛び立ってすぐに、そんなことを言ってきた。
「リントヴルムが謝ることじゃないさ、飛空機械を整備する人たちを守ってくれてたんだろ?……ああ、でもこれ……新しいトラウマになりそう……」
俺は手袋を取って、左手を握ったり開いたりしてみた。
そう、ちゃんと動くのだ。自分の手じゃないように見えるのに……。
「ううっ……」
そして時々、今みたいに鈍い痛みが走る。
ちょっと前までは侵食部分が手首にかかっていなかったのに、今は手首にかかりつつある。
指先から手首までが……まるでアクセラバードの手のようになっていた。
「大丈夫……?」
隣からコーディが覗き込んできた。
「うん、今のところは……。でも、コーディの言った通り、侵食は続いてるみたいだ」
コーディは俺の手を渋い表情で見ている。
「きっと母さんがなんとかしてくれる……。明日の朝には着くだろうから、今日はこのままゆっくり休んで。背もたれを倒してあげるよ」
そう言うと、俺の座席の肘掛けについてるレバーを引っ張った。
すると、ゆっくりと背もたれが倒れていく。
「おおっ、いいな、これ。……じゃ、お言葉に甘えて寝ようかな」
俺はそのまま目を閉じた。
よほど疲れていたのか、いつ眠りに落ちたのかもわからなかった。




