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第十一話

 その後、カクテル同好会の活動へは月に三回ほどのペースで参加していた。

 毎週水曜日に定例会があって、あとは各自企画を考えて、不定期に開催だったから、全てに参加するとなると、週二ペースでの活動頻度だった。それに加えてメンバー内での飲み会が自然発生していたから、月三回参加のわたしは一応サークルメンバーではあるけれど、早くも、たまにしかこない人、という位置付けだった。

 バイトが忙しかったのも事実だけれど、関わり過ぎたらきっと嫌になってしまう、という予感があって、最初にカクテル同好会の予定をカレンダーへ入れたときに、一輪の花が咲いているみたいでうれしく思ったその気持ちをどうにか大切にしたくて、ラベンダー色の予定が増えすぎないように心がけた。

 そのかわりに、増えていったのは、オレンジ色の予定だった。

 暖という漢字の暖かいという意味からのイメージでカレンダーアプリにオレンジ色で登録することにしたダンとの予定がわたしの授業とバイトばかりの緑色のスケジュールを彩っていた。


 ダンと付き合うことになったのは、二人で飲みに行ってからすぐのことだった。わたしは自分の家で過ごすよりもダンの家で過ごすことの方が多くなっていった。

 ダンの家は築年数が経過しているものの、室内はリフォームされており、広めの2DKで、制作部屋を持っていたいからこの部屋にしたとのことだった。

 何よりわたしの家より広いし、大きめのダイニングテーブルも置いてあるし、それはうちで過ごす場合に、通販サイトで『一人暮らし用 テーブル』と検索し、安い順にソートした結果、プロモーションを除いて一番上に表示された鏡面加工の白い折りたたみ式ローテーブルと、同じようにして購入したブラウンの頼りないラグとで、定期的に足をしびれさせながら食事や勉強をするよりもだいぶ過ごしやすかった。

 うちには置くスペースなんてない観葉植物だって置いてあるし、自分でDIYをしたという部屋のインテリアはPinterestに出てくるくらいに過不足なく整っていて、ダン自身とそれらの心地よさにわたしは居着いていた。

「スイ、今日夜いる?」

 朝、コーヒーを淹れているダンに話しかけられる。

「いない。今日はサークル行く」

「そっか、水曜じゃないのにめずらしいじゃん」

「うん、今日のはオサジの企画回だから行ってくる」

「そうなんだ。テーマは?」

「『映画の中に登場するカクテル』だって。“カク同”恒例の最初にプレゼンしてからの、映画流しながら作って飲むらしい」

 いつのまにかサークル内ではカクテル同好会のことを『カク同』と省略して呼称するようになっていた。

「面白そうじゃん。いいなー」

「でしょ。ってか何か用だった?」

「いや、今日なんとなく餃子パーティーしたい気分で聞いてみただけ」

「え!餃子パーティーはわたしもしたすぎる。明日の夜じゃだめ?」

「いいよ、全然」

 二人で餃子を包んで、ホットプレートの上で餃子を焼き、最寄りのスーパーの、普段はあまり立ち寄らない棚から買い込んできた色んなクラフトビールとともに二人で一緒に餃子を食べることを餃子パーティーと呼んでいた。

 

 オサジの企画は大盛況だった。

 オサジはジュンさんを慕っているというか、とても懐いている様子で、定例会の資料作りや企画回のスライド作りを通してジュンさん直伝のパワポ作成術を吸収しているのか、みるみるうちにプレゼン技術を上達させつつ、カクテル同好会の活動にも毎回欠かさず参加している様子だった。オサジはジュンさんの補佐役として、サークルに欠かせない存在になっていた。

 オサジの企画回には、ポンさんも参加していた。

 ポンさんはオサジがジュンさんの手伝いをすすんでやることで荷が降りたのか、わたしと同じくらいのペースで気ままにサークルへ参加しているようだった。だからわたしがポンさんと会えるのはかなりレアで、参加した回にポンさんがいるのを見かけると、今日はラッキーだなぁという感じがしていた。でもあえて連絡を取り合って一緒に参加するのは違う気がして、していなかった。 

 ちなみに、サークルの決起会のあと、ジュンさんとオサジで、パーティールームとかでやるのはやっぱりうちのカラーに合わないね、という話になったらしく、サークルの正式な活動は基本的には新歓の際の会場だったレンタルスペースを利用することになっていた。


「昨日サークルにポンさんいたんだ」

 餃子のタネにする刻んだ白菜の水分を絞りながら、ダンに話す。

「よかったじゃん。あのレアキャラの?」

「そうそう。向こうからしたらわたしもレアキャラなんだろうけど」

「たしかにな……って、餃子の皮、俺間違えてでかいの買っちゃってたわ」

 ダンがひき肉をこね終えて手を洗ったあと、買い出し袋の中からごそごそ取り出した《大判》とパッケージに書かれた餃子の皮を見せてくる。

「ほんとだ、でもいいじゃん大判の方がいっぱい中身はいるし」

「たしかにそっか……。じゃあためしにチーズとか入れてみたりする?」

「いいじゃん!今日は変わり種餃子パーティーだね」

「そうだね」と笑い合って、餃子を包み始める。


 アヤとは二人で夕食を食べたときに、火曜の三限がお互いに空きコマなのが判明して、毎週火曜に一緒にランチをするのがお決まりになっている。アヤとの予定は濃い赤でスケジュールにいれていて、それはアヤが選んだカクテルの、スカーレットオハラの色のイメージだった。

 こうしてようやく少しずつ自分にとって過ごしやすい彩りで暮らせるようになってきた頃、学期末試験が始まって、それを終えると、夏休みに突入した。

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