碧(へき)の巫女、ルティーシア
此処は何処だ。暗い・・・・・・、周りが暗くて何も見えない、何も聞こえない。そして俺は今の状況に気付き思い出した。
俺は確か、ケイオニウスとの戦いで傷つき敗北しフランと白のクリスタルストーンを奴に奪われて、奴はトドメを刺さず代わりに奴の部下の兵士達の手に殺された筈・・・。
すると俺は気付く、俺はこの真っ暗闇の空間に見覚えがある、そうだ。プロフェッサーことメイラと出会う空間だ。しかし肝心のプロフェッサー本人は居ない、恐らく用事か何かだろう。
「・・・・・・プロフェッサー、寝てるのか?」
《『自動修復』完全完了まで残り1分。》
「『自動修復』?もしかして!?」
俺は直ぐ様に自分のステータスを調べる、ケイオニウスとの戦いが原因で新しい能力が追加されている、ちょっと待てよ!?まさかと思うが・・・。
「もしかして俺『生きてる』のか!?」
シュートは自分が生きてる事に気付く、すると目の前に光が現れ真っ暗闇の空間を照らし消滅しだす、
「生きてる、だけど何で?」
そう疑問を抱えたまま俺の魂いや・・・、意識体は消滅し現実の世界へと引き戻された。
《肉体の破損率0%、『自動修復』が完了しました。》
《『自動修復』のLvが2に上がりました。》
《意識覚醒まで5・・・4・・・3・・・2・・・。》
「・・・・・・んんっ。」
目覚めると見知らぬ天井を目にし、俺は見知らぬ部屋に居てその部屋のベッドで寝ていた事に気付き俺は直ぐ様に上半身を起こし部屋の周りを見回す。
「此処は・・・一体・・・。ていうか、何で俺上半身裸なんだ?」
俺は自分の格好に気付き動揺するも直ぐ様に落ち着かす、胸や右腕には包帯が巻かれている、恐らく誰かが俺を治療してくれた様だ。だが、可笑しいぞ俺は確か俺はケイオニウスの部下の兵士達にトドメを刺された筈なのに何で俺は生きてるんだ?
「とりあえず起きるか・・・。」
そう言って俺はベッドから起き上がり部屋を歩きながら見回しだす、本棚には分厚い本が多く仕舞われ棚の上や隅には大小の鉢植えが数多く置かれていた。どうやらこの部屋の主はかなりの植物家の様だな、本棚と本棚の間には机と椅子がある、恐らく部屋の主は此処で勉強や読書をしているらしい。俺は一つの本棚の前に立つ。
「本の列も綺麗に整頓されているな・・・。ん?」
俺はこの部屋の出入り口である扉の方に振り向く、階段を登る音だ。恐らく部屋の主のだろう。
「(誰か来る、恐らくこの部屋の主だろう・・・。だが、助けてくれたとはいえまだ味方とは限らない、一応構えておこう。)」
シュートは直ぐ様に戦闘体勢を構えだす、足音が止む、恐らくこの部屋の扉の前に立っている、そしてこの部屋の扉が開きだしこの部屋の主が入室する。部屋の主の正体を見てシュートは驚きだす。
「えっ!?」
「・・・あっ!」
部屋の主の正体は耳長族の少女だった。少女は普通の耳長とは違い金髪ではなく翡翠色の様に光輝く緑髪をし後部には三つ網み型のポニーテールをし黄緑色のドレスを着ていた。そして少女の両手には暖かいスープの皿と木のスプーンを乗せたお盆を持っていた。少女は机の方に移動しお盆を置きシュートの所に向かう、その時だった。
「きゃっ!」
少女はドレスのスカートに左足が引っ掛かりシュートの所に転びだす。
「おっと!」
シュートは倒れながらも何とか少女を受け止める。
「大丈夫か?」
「あ、はい、有り難う御座います。」
二人は直ぐに立ち上がりだす。
「「・・・・・・・・・。」」
「(それにしてもよく俺は生きていたな、もしかしてこの娘が俺を助けてくれたのか?そんな風には見えないけど一応聞いてみるか。)」
「えっと、まだ本調子じゃないと思いますのでベッドに戻ってくれませんでしょうか・・・。」
「え?あ、ああ・・・・・・、解った。」
俺は謎の少女の言うとおりにベッドのある場所に戻り座り込む。すると少女が机に置いたスープを乗せたお盆を俺の所に持ってくる。
「芽キャベツと煮込み豆とボア肉のスープです、冷めないうちにどうぞ。」
そう言って少女は俺にスープとスプーンを乗せたお盆を差し出す。
《現在のエネルギー残量残り10%》
「・・・・・・・・・そうだな、いろいろ知りたい事もあるし、頂くとするか。」
俺は少女のお盆に乗せたスープ皿とスプーンを取り食事を始める。
「頂きます。」
俺はスプーンでスープをすくい一口飲む。
「う、美味い!!」
こんな美味いスープはこの世界に生まれ変わって始めてだ。俺は直ぐ様にスープを素早く食べ尽くしてしまう、ああ、全部食べてしまった・・・・・・。俺は飲み干したスープの皿と木のスプーンをお盆に戻す。
「御馳走様でした。」
俺は手と手を合わせて少し頭をお辞儀し御馳走様を言う、目の前で俺を見ていた少女は呆然と俺を見て驚いていた。
「とりあえず良かったです、元気になってくれまして。」
少女は笑顔で微笑む、俺は直ぐ様に少女に礼を言う。
「えっと、とりあえず助けてくれて有り難う。」
「いえ、私は料理をお持ちしただけです、それにこのスープは私が作ったのでもありませんから」
「それでもだよ、・・・・・・このスープを直ぐにでも二人に食べさせてやりたい程の・・・・・・。」
「どうしました?」
俺はハッと現在の状況を理解する。何故俺は生きているんだと。
「そうだ・・・。フランとリィフェは!?」
「!」
少女は二人の名前を気付き、少女は覚悟を決め微笑んだ表情から真剣な眼差しに変えてシュートに話しかける。
「もしかして・・・、貴方はシュート=レジス様ですか?フラン王女の旅の同行者の?」
「えっ!?どうして君が俺の名前を!?」
「ここから先は私が説明致します。」
すると部屋の扉から二人の人物が入室する、うち一人はその人は俺の知っている人物で知り合ったばかりの方だった。
「貴女は、セリナさん!」
セリナ=ラナトスさん、俺達三人が迷いの大森にて帝国軍の追撃隊から助け出した耳長族の女性だ。何故彼女がここに居るんだ?
「また、お会い致しましたねシュート殿。」
「・・・・・・・・・。」
セリナはシュートに向けて微笑んだ顔をしセリナと共に並んで立つ耳長の男の二人は頭を下げ御辞儀する、男の方はともかく、シュートは何故彼女がここに居るのか疑問を持つ。
「セリナから話を聞きました。ケイオニウスを倒しに私達のグリーンハープから、そして『碧の巫女』である『私』に会うために。」
少女は胸元から首飾りのペンダントケースを取りだしケースを開けある物を出しシュートに見せる、すると少女の手にした物を見てシュートは驚きだした、少女が手にしてる物は翡翠色に光輝かす六角形状の形をした宝石だった。
「!!」
俺は気付いた。何故彼女がそれを・・・、クリスタルストーンを持っているのかを察しした。するとセリナが途中話しかける。
「シュート殿、此方に居る御方はオベロン王家第二王女、碧の巫女、ルティーシア=オベロン=グリーンハープ姫で御座います。」
「君がいや・・・・・・・・・、貴女様がルティーシア姫。」
「前に自己紹介はしましたが私は第二王女側近護衛上級魔導師、セリナ=ラナトス。そして私の隣に居る男は第二王女側近護衛戦士兼兵士隊長のコルテス=キボアです。」
「・・・・・・・・・。」
コルテスはシュートに向けて無言に御辞儀をする。するとルティーシアはコルテスの事を話し出す。
「宜しくお願いします、あの、此処は一体?」
「此処は迷いの大森の東の谷にある『秘密の小屋』です、姫様が帝国から護るために王陛下が用意した小屋で御座います。」
「そうか此処は俺は国の外に、えっと、ルティーシア姫。」
「私の事はルティとお呼び捨てでお呼びして下さい、お父様や兄上達上の兄妹はそう呼ばれますので。」
「解った。宜しくなルティ。」
「はい、シュート様。」
ルティーシアはシュートに向けて笑顔になる。するとセリナがシュートに質問をする。
「ところでシュート殿は何故城内に?」
「実は・・・。」
俺はルティ達三人にグリーンハープに来た事と城に侵入しケイオニウスと戦った事を説明する。
「そうですか、貴方達は私と私のクリスタルストーンとケイオニウスを倒しに。」
「俺も詳しい事はよく解らないがどうしてもルティと君の持ってるクリスタルストーンが必要らしい。」
「」
「コルテスは無言ではなく喋れないのです、一月前、国が帝国軍の襲撃に合い私達は国から脱出する途中敵の奇襲に合おうとした私を庇って・・・・・・。」
そう言ってルティーシアは悲しげな顔をする。
「それで言葉が話せないのですか。」
俺はコルテスさんの首もとを見つめるそこには大きな傷がある、確かにこの傷なら声は出せないだろう。
「はい。頸動脈の方は何とか斬られませんでしたが喉元の傷は深く治癒魔法でもどうする事も出来ず何とか止血しましたが結局声は出ずに・・・・・・。」
「因みに貴方をケイオニウスから助けたのもコルテスなので御座います。」
「えっ!?」
突然横から入ったセリナがシュートに話しかける。
「この人が俺を・・・。」
「はい、王の間の玉座真上のステンドグラスから突入して敵の貴方を囲んだ敵兵達を倒し颯爽に貴方を担いで城の窓から脱出それからは色々と大変でしたよ。」
「・・・・・・・・・。」
ルティーシアがコルテスの代わりに答えコルテスは無言にシュートに向けて謝罪をするかの様に御辞儀する。
「えっと・・・、俺を助けてくれて有り難う御座います。あの、俺はどのくらい意識を失っていたんですか?」
俺はルティーシア姫達に質問する、するとセリナが答える。
「貴方は二日ほど意識を失っていました。」
「・・・・・・・・・そうですか、質問ばかりですいませんが俺が眠っていた二日間の事を教えてくれませんか?」
「・・・解りました。」
セリナは答え、シュートが眠っていた空白の二日間の事を説明した。
フランはケイオニウスとの戦いからその後、城の何処かの部屋に監禁され厳重な警備で守られている、リィフェは真・風槍の魔力消費が影響か何とか敵の軍勢を押し続けるも隙がつかれて増援の魔法兵部隊の拘束魔法で全身を拘束され城の地下牢に幽閉、翌日、グリーンハープ軍兵士隊長バルガス率いる部隊は城に突入し第七伯軍に挑むも大規模な戦力差により全滅、バルガスを含む一部の兵達は現在生死または行方も不明。
その事を知ったシュートには驚きを隠くさずに冷静になっていた。
「そんな・・・、バルガスさん達が行方不明だなんて!?」
「いえ、地下通路を見張っていた私の仲間からの話だと彼の遺体は見つからず行方不明のままで御座います。」




