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歌奏和伝  作者: 自由のメガネ
変貌の秋
61/65

ー伍拾肆ー「取り残された者」

呉越同舟的な話。もしくは、友のインタビュー。余所の事情。

大分横にずれた話かとは思いますが、入れたいとは思っていました。

どうしてもまとめきれなくて、まぁ何時も通り酷いのですが。

ただでさえ人の多いのに、二人増えるっていうね。ただこの二人は、前に少しだけ出ました。

長月の二十一日。


 殿のある部屋で、赤に近い桜色の髪をもつ男と、髪先に向かって黒から赤に変わっていく色を持つ少年は、出入り口を塞ぐ山を見上げていた。

外を見せてくれない夥しい数の本。崩れて、山を形成したばかりの其れは、偶に上の方の本がずれ落ちてくる。


「…先ずは崩す事からだな」


「なんか…拙い事になっちまったな…」


「貴様の所為だ。虚け」


 其の会話を聞きながら彼等を見上げる僕は、現在進行形で本の山の下敷きになっている。

こうなったのには、数分前に遡る。



                  ※       ※



「待ってよ!」


 殿の中を移動している最中に聞こえたのは、まだ声変りを経ていない、高い声。だから、其の声の主が子供である事は直ぐに分かった。しかしながら、殿に子供がいた事は今迄あっただろうか。


「待ってよ!…なぁ!待ってって!比良っ」


「…下らん事を言うな。去ね」


 声がしたのは、案外近く、角を曲がったところであった。其処で僕が見たのは、桜色の髪の男に突き飛ばされ、廊下に尻を突く、赤と黒の交ざった髪を持つ少年。

少年を突き飛ばした男は、足早に向こうへ去っていく。

現代じゃ間違いなく問題になりそうな場面を目撃した僕は、少年に駆け寄った。


「君、だいじょ」「比良っ!」


 だが、少年は僕が眼中にないどころか、存在も認識さしていないだろう勢いで立ち上がり、男の去った方へ走っていった。

嵐のように通り過ぎた出来事に若干出遅れた僕は、先程の突き飛ばされたのが気になり、其の後を追った。











 其の部屋は、本の積み上がった部屋であった。という非常に雑な紹介になるが、いらない本だから積み上がっているのではなく、此の部屋にある本は数日に一回は文官の作業の為に持ち出される本であるが故に、一時的な置き場に使用されているみたいだった。

人の高さ以上の積み上がり具合に整頓した方が…と誰もが思うが、文官の仕事でそんな暇は誰も持っていないそうな。


「見つけた!」


 少年の探していた男は、其の部屋で何冊かの本を山の上に置き、何冊かを手に取っていた。走り回ってやっと見つけた少年は、走っていた勢いを壁に手をついて殺し、男に寄ろうとした。

少年の声と音に振り返った男は、目を見張り、声を上げた。


「っ!おいっ其処から離れろ!」


「え」


 全力で走って、壁に殺された勢いが本の山に伝わったのだろう。少年目掛けて沢山の本が降ってきた。


ドサドサドサドサッ


 崩れた山は少年を潰さなかった。

伸ばした手が少年を前に押し出したからだ。代わりに、


「あ…はは……取り敢えず、助けてくれません…?」


子供が崩れる本の山の下敷きになるのを庇えばヒーローなのだろうか。少なくとも、僕の今の姿は酷く情けないものだ。

そして、今に至る。



                  ※       ※



「…というか、あんた誰だよ」


 少年は、床に這いつくばった僕の前にしゃがみ、警戒を持った目で見つめる。

さっき話し掛けた事には、気が付いていないのだろう。


「高砂という、外から都に来た者だ。鬼退治に協力してもらっている」


 少年の言葉に答えたのは、桜色の髪の男だった。其の男はよくよく見ると見た事のある人で、四の隊で春苑さんの傍にいた人だ。

しゃがんだ儘の少年が、男の方に振り返り、見上げる。


「えぇこんな奴がぁ?なよっちそうだし…絶対俺の方が強いし…」


「其の者の御陰で貴様は怪我をせずに済んでいるわけだがな」


「う゛…」


 大分薄らいだ記憶に大分当たり強く(なじ)られた記憶があるが…言葉が大分柔らかい気がする事に開いた口が閉じれず、僅かに広がる。

僕の視線に気が付いた少年が、男を指差す。


「こいつは山吹 比良。頭は固いし、何時もしかめっ面、子供受けも悪い」


 少年の頭にごつんと拳骨が降ってくる。床に沈んだ少年を思いっ切り見下した目線を向けながら、指を差す。


「此の童は、夕山辺 敦弩(とんど)。生意気な童だ」







 閉じ込められた部屋で留まっているわけにもいかず、何も出来ない僕は見守るとして、山吹さんと敦弩君は崩れた本を上に方から下ろし、他の場所に移す作業が始まった。

敦弩君はまだ背は低い為に、台に乗って山吹さんが取った本を下で受け取る形で分担する。

黙々と静かに作業が進む中で、床に寝そべるしか出来ない僕は、少し言葉を零した。


「意外ですね…」


「…何か?」


「僕の名前なんて、知らないものだと思ったので…」


「成程、嫌っていれば知らぬものと思っていたか」


「…寧ろ、僕達の様なぽっと出が、受け入れられている事の方が不思議なもんですけどね」


そういうと、山吹さんは一瞬手の動きを止めたが直ぐに手に持った本を敦弩君に渡す。


「受け入れているのではない。利用したいだけだ、此処の連中は。使えるものは使う。邪魔になるなら排除する。其の様子見をしているから、寛容に受け入れられているように見えるんだ」


何となく、其れはドライに捉え過ぎではと思う。春苑さんを見る限りに、僕達を厳しく見る以外に、他の隊への当たりも強い気がするが、其れが隊員においても同じ部分があるのだると思う。


「私達は端から貴様等を嫌っている。…だが、此の状況で噛み付くのは馬鹿のする事だ。此処から出る事は先決であり、敦弩様を助けて貰った手前、お前を其の儘にする事は出来ない」


ただ、さっきも感じたように柔らかい物を感じたが、見上げようにも今の僕の体勢では表情も見えなかった。


 








「こんなの。俺の炎で如何にかするのに…」


 作業が続いて時計ならば十か二十分は経ったか、という頃に、詰まらない単純作業に飽きてきた敦弩君がぼやく。

運が悪い事に、今日に限って、此の部屋を訪れる人が少ないらしい。

僕に乗る本は気持ち軽くなったような気がするが、見なくても、まだ時間が掛かるくらいには本があるなと思った。


「絶対に詠うんじゃない。貴様の歌を此処で使えば、周りの本が全て燃える。歌を行使するというなら、部屋の外だ。其れで人が呼べたならば、此処から出る事も容易いだろう」


 山吹さんが本をこつこつと叩く。

彼の言葉から察するに、敦弩君は詠い手であり、火が使えるのだろうか…?そして其れは、自分から離れた位置にも行使可能なようだ。

此の向こうの廊下を挟んだ先は例の如く白い石の敷き詰められた庭が広がっている。其処で火の沙汰でも起きれば、人が集まってくるだろう。

しかし、敦弩君は言葉を詰まらせた。


「…う。外が見えないと、何処に狙いを定めていいのやら…」


「はぁ…使えん奴め…」


「う、五月蠅いな。比良は歌だって使えないだろ」


 ぴきり、と床の板が(たわ)む音が聞こえたと思う。其れは、山吹さんの心情を表すには丁度良いタイミングで、敦弩君は自分の失言に気が付き、「あっ」と一歩後ろに引いて、山吹さんから距離を取った。


「歌があれば、偉いのか?…御高く留まった思考だな」


 山吹さんはそう唾で吐き捨てるように言った。台に立っているのもあって、遥か下に向けて吐き出しているかのようだ。其の後、少しの間山吹さんは何も言わなかった。


「歌は手段だ。刀と同じ。だから歌が無くとも、刀の腕を鍛える。離れていようと、そうやって近付く」


 呼吸を繰り返して、敦弩君から目を背けて、本の手に取る。

そうやって、苛立ちを鎮めた(ように見える)山吹さんに敦弩君は下がった一歩分を三歩に分けて、本を受け取る為に近寄った。


「少なくとも、私は貴様より強い」


 敦弩君の前に、手に取った本を差し出す。真っ直ぐに敦弩君を見ているようだ。見上げた敦弩君は、一拍遅れた引きそうな手を前に出して、本を受け取る。

此処から見ても、敦弩君は真っ直ぐに見返していると分かった。


「比良くらい、俺にかかれば簡単に引き離せるね」


「はっ、先ずは追い抜く事からだな」








 追いかけた時から気にはなっていたし、二人の会話を聞いていて、ついつい言葉に出してしまった。藪の蛇を突きたくなったのだ。


「…山吹さんは、其の子とはどういう関係なのかと。かなり気安い関係のようですが、兄弟では…?」


「…はっ其のようなもの、此方から願い下げだな」


「なんだと!」


 敦弩君が本を置きながら山吹さんの言葉を耳にし、此方を向いて言葉を荒げた。其の際に、本の山に足が当たり、揺れる。


「おい!また山を崩そうとしていないだろうなっ」


「し、してないよっ!さっきだって…」


 山吹さんは一睨みして敦弩君を黙らせると、其の本の山と他に崩れそうな本の山を幾つか、出来る範囲で倒れないように本を整理するように言った。

敦弩君は、僕に目を落としつつ、しぶしぶといった様子で行動に移った。


「単に、本家である夕山辺家と分家である春苑家の繋がりが絡みついているだけの事だ」


「夕山辺家と春苑…貴方は山吹では…?」


「山吹は春苑家の…所謂従を担う家なのだ。そして…其処の童は、夕山辺の人間だ。貴様の知るところでは、三の隊の隊長である夕山辺 燈様の兄の息子だな」


 そうだ、とは思ったけれど、夕山辺という名前と髪の色から夕山辺さんと近い関係であったようだ。という事は、夕山辺さんは叔父さんか。

そして、夕山辺さんと春苑さんの歌が何方も炎の系統であったのには此れが関係するのか、と納得がいく。


「貴様も使える歌というのは、基本的に無作為に人が得る力だ。しかし、稀にある系統の歌を得る可能性が高い血統というものも実際に存在する。夕山辺家は、其の特別な家系であり、代々と現れる…火の歌意が備わった歌い手によって、此の都ができた当初から風香城の城主の下で其の力を奮っていたそうだ」


 山吹さんは、下にいる人に本を渡そうとするが、止まる。今は、敦弩君が別の事をしているので、取りに来る人がいなかったのだ。

山吹さんはそんな素振り等無かったように、自然体風に台から降りて、本を傍に置いた。


「……そして、春苑家は其の夕山辺家の分家だ。紅様から聞いた話では、其の昔に夕山辺家で生まれた兄弟が遺伝において、大きく差があった故に、外に出された弟が作った家なのだそうだ。さっきも言ったように、此の様な家では歌を得られる、其の事が重要になってくる。此の兄弟はそれぞれの家族を築いたが、兄の方は幾人か歌を持った者が生まれたのに対して、弟の方は…普通の家族だった。…其の辺が重要な奴等にとっては、呪いにも等しく、外に出したかったのだろう。


以降、春苑家では歌を持つ者は現れなかった。其れ故にか、多少の負い目はあるものの、上手くはやっていた。紅様が生まれる迄は」


 六冊ぐらいの本を手に持った山吹さんが雑に下に降りて、高いところから本を落とそうとしたが、止めて膝を折り、丁寧に置く。

そして、また台に乗る。


「歌を得る事は、其れ自体は良い事だ。だがしかし、奴等にとってみれば、何時かに見下していた者からの復讐とでも映ったのかもしれんな。そして、其の歌意も拙かった。貴様も知っているのだろう?紅様の歌意を」


「確か…木刀から火が噴き出ていたような…」


「そうだ。紅様の歌意《火樹》は、木を媒介に火を出現させる。一方、燈様や…其処の童の歌意は何方も共通して、何も無い場所に火を出現させる事が出来る。片や何かを媒介にしなければならない歌意と、片や何も媒介を必要としない歌意。…奴らは言うぞ、『矢張り、あの弟の家系だ』とな。……馬鹿馬鹿しいものだ」


上の方で、小さく「あの老害共が…」「貴様等は夕山辺の益にもなっていないというのに、偉そうに…」と聞こえた。


「つまり、紅様は夕山辺家の目の上のたん瘤というわけだ。とはいえ、此れは主に夕山辺家に属する、歌も持っていない、夕山辺家の甘い蜜だけを啜ってきた奴らの戯言というものだ。詠い手は其れ程のものも無い。とりわけ…其処の童は紅様に憧れを抱いている」


 台から降りた山吹さんが敦弩君の方に目を向ける。見られている事に気が付いていない敦弩君は、整頓中だが、また見ていない山に足の小指をぶつけて、痛がりつつ、また山が崩れそうになっていた。


「面白い物だろう?家計の宝とも言うべき存在が、見下した存在を憧れるというのは。…其れが、奴等の人を殺したそうな目の強めるわけだが。紅様としても、鬼を倒し、都を護る事の方が大事であり、あれ等を相手にしている暇な無い。だから、其の原因となるものも厄介な者だ。とはいえ、蔑ろにすれば、また奴等の琴線に触れる。


話は長くなったが、此の童は紅様にとって厄介以外の何物でもないのだ。先程言った様に、私は紅様の従である故、関わりは深い。気楽な関係に見えるのは、何とも言えない距離に置かれた腐れ縁だからだろう」


 山吹さんに言われていた、倒れそうな本の山の整頓を終えた敦弩君が此方に戻ってきて、台の傍に置かれた本を見て、げ、と漏らす。しかし、山吹さんに此れ等について聞く事も無く、其処にあった本を幾つか纏めて、別の場所に置きに行った。其の背中を見て、山吹さんは溜息を付く。

 此の人が、敦弩君に対して使用する童とは、其の意味合いを全て包んだ、或る意味の愛称といえそうだ。











 また少し時間が経過する。上の方は開いて、敦弩君くらいは通れそうな程度になったとは言うが、下にいる僕に迄体重が掛かりそうだったので、首を振らせてもらった。


「紅様は貴様達を嫌っている、わけではないのだろう」


「そうでしょうか…?」


 其れは無いと思う。と、ばっさり心の中で断言した。慧鬼の件で、下手すると春苑さんに殺されていた事は記憶に新しい。あの時点で、僕の意見と春苑さんの意見は違えていた。

あの時に山吹さんはいなかったような気がする。


「紅が嫌うのは、貴様が余所者だからだ。…だから、八つ当たり…というのだろう」


 夕山辺さんは山の中から一冊を取り出して台を降りると、僕の前で其の本を開き、ぺらぺらと捲る。


「此れを見ろ」


 名前の書かれたページの一番最後は、夕山辺さんや守さん、二三さんといった僕の知っている人の名前が載っていた。一部…知らない名前も。


「此れは各隊の長の移り変わりを纏めた本だ。無論、紅の名前も載っている。見ていけば分かるが、一度隊長になれば、大概は永らく其の任に就く。だから、此のように項を進めようと、大きく変わる事は先ず無い。だがしかし…」


 其のページから数ページように捲り、また僕の前に置く。


「八年前…そして、七年前だ。載る名前の多くが変わっているだろう」


其の言葉の通り、其のページの移り変わりの中で十年は経ったんじゃないかというくらいに書かれる名前が変わっていた。其の年に殆どの隊が代替わりする事も偶然が考えられるが、隊長という都で大きな役割が一編に変わるのは混乱を来す事が考えられ、侍という仕事を圧倒にやっているならば避けるだろう。他に、代を変えなければならないとすると…


「八年前、山よりも大きな鬼、其れが此の都に向かって進んでいる事が、当時の城主に伝えられた。城主は、少々の守りを残し、此の都の保有していた多くの侍を引き攣れて、此れを迎え撃った。


其の結果、鬼は討伐された。沢山の侍が死んだ。城主が死んだ。


其処で何があったかは知らない。

都に戻ってきたのは、鬼が倒されたという喜ばしい筈の報告と、果てしない絶望だった。私もあの時は、もう此の都に明日はないと思った。城主の血筋は藤姫様が残っていたといえども、まだ継ぐには早過ぎた」


 語りながら、あの時、と口にして思い出したのか、あの時が戻ってくるように山吹さんの表情が暗くなる。其れも直ぐに過ぎ去っていって、山吹さんは顔を上げる。


「此の都が存続したのは、一重に外から訪れた三人の御陰だ」


「三人?」


「貴様も知っているだろう。文官長の豊国 理知殿、文官兼鑑定士の阿古辺 万殿、そして五の隊隊長の三井寺 春人だ。…豊国殿は、少々事情が違うがな」


 そういえば、三井寺さんは慧鬼の時に、春苑さんに「中京の回し者」と言われていたような気がする。こういう事なのかな?と思いつつ、他二人に思っていなかった名前が出て、少し驚く。


「…兎に角、此の三人、そして当時の若い衆が此の都を守る為に侍に成るとした事で、此の都は今に迄続いている。…紅様にとっては、其れが大きく世界を変える事だった。慕っていた長閑様から城主は藤姫様に変わり、身の回りにいた隊長の顔ぶれも、侍の顔ぶれも変わり、三人の余所者によって都の雰囲気も大きく変わった。紅の全てを塗り潰された」


こういう経緯もあって、僕達の様な外からやってきた人も受け入れやすいのかもしれないと、一人で頷く。

だが、其れも全てじゃないんだろう。


「多くの者は、移り変わる都を受け入れた。紅様は八年前に置いていかれた。そして、其れを成した余所者を恨んだ。…八つ当たりだ」


「けどさ、比良…分かってんだろ。ずっと進まない事は出来ないって…」


 其処に、ずっと会話には入っていなかった、本運びをしていた敦弩君が静かに言った。

今は、山辺さんが膝をついて、敦弩君が立っている為、山吹さんは見上げるようになる。山吹さんは顔を上げて、敦弩君を見るが、口を開く時には視線はずれていた。


「………童が、知ったような事を言うな」


其処には、力は入っていなかった。


「…私は、紅様を置いていく事は出来ない」


「…共倒れするよ。絶対」


山吹さんは、黙って手に持っていた隊長達の名前の書かれた本を敦弩君に渡した。








 ある程度本を下ろしてから、山吹さんは敦弩君の台に上った際の目線の高さで本と本の間から向こうが見えるように隙間を作った。

最初は、全部退かすつもりだったが、途中で敦弩君の歌の話になってから、此の方向に転換したと山吹さんは言う。

其れでも時間は掛かったが、本を全部退かす事を考えれば短いというしかない。


「よし、此れで向こうの景色も見えるのではないか?」


「う、うん。此れなら歌が詠える!」


 敦弩君はすっと息を吸い、元気に詠う。


「『おどろかす どんどの音や 夕山辺』っ!」


 僕は部屋の中、しか見えないので、実際に歌意が現れたか確認が出来ないが、山吹さんが頷いているので大丈夫なのだろう。足も何だか暖かい気がする。


「此の童の歌意は、《火柱(ひははしらとなりて)》だ。自分の見える範囲に火柱を立てる事の出来る。まぁ、炎は大きくも無い。紅様の歌意の方が余程…」


 山吹さんは説明を交えつつ、少々の貶しを入れようとしたが、上手く出来たか!?と明るい声で振り返った敦弩君の表情を見て、飲み込んでいた。

僕からは見えないが、山吹さんは複雑な表情を片手に隠した。


「…あぁたく、本当に似ているな。長閑様を慕っていた紅様と…だから面倒臭いのだ、此の童は…」


部屋の外では、火が燃えているのを見た人達が、なんだなんだと集まっているようだった。










人が多いって素晴らしい。

山吹さんと敦弩君だけでは時間の掛かった本の山があっと言う間に無くなり、僕が救出された。

其の中には阿古辺さんもいて、本人は直接敦弩君の火を見たわけではないのに、「突発的な嫁が生まれたと聞いて!」とやって来たらしい。意味が分からん。嫁は生まれてこない。


「おい、高砂」


ずっと同じ姿勢でいた事もあり、少し慣らしてから立ち上がろうと、庭の方に足を垂らして座り、大分時間の過ぎた空を見上げていると、山吹さんに声を掛けられた。

僕は山吹さんを見上げる。中にいる時よりも、よく見える。


「紅様が隊長の四の隊は、都の近辺を守る事が第一とした隊であるが、其の一方で紅が集めた、余所者への嫌悪を抱く者や、鬼に家族を殺された者も多い。


だから、貴様達と私達四の隊が交わる事は決してないだろう。あったとしても、其れが良い方向には向かわない。だが、貴様達が此の都を守り続けたいというのなら、守れ。其れを貫け続けろ。其の横を私達も走る」


性にも合わないことを言いたくないんだがな。と付け加えた彼の表情は赤みを帯びて、直ぐに顔を背けて、足早に去っていった。

山吹さんは気付いているのか、いないのか、角に敦弩君が隠れている。山吹さんを待っているらしい。

僕は、短い時間を何故か共にする事になってしまった二人に向かって、小さく手を振った。

前に書いた時より、大分口調が柔らかくなってしまった…

久しぶりに登場させたりすると、一人称などが間違っている事がよくあります。

それ以外にも、大まかな流れは覚えているのですが情報の開示をどこまでやったかあいまいな部分が多々あるので、どこで何書いたか、整理しなければならないなと思いましたです。


こんな話を用意したけれど、余り紅さんを深掘り出来ていないんですよね…実力不足だぁ…


誤字脱字、文章的におかしな点はないでしょうか?


わりと、滑り込みで製作したので、あとで変なところを修正しに来ます…


【初出の歌】


おどろかす どんどの音や 夕山辺


            松岡青蘿


〈参考〉検索は[at]を抜かして行って下さい。

https://kigo[at]365.com/dondo/

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