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歌奏和伝  作者: 自由のメガネ
変貌の秋
56/65

ー肆拾玖ー「新たなる鬼」

初雁さんは口調が色んな人に似ているし、春人さんはそもそも書いてる当人が性格と実力を掴みあぐねているというね。

口調とか間違っているところあるかももしれません。久しく出過ぎて「誰?」って思われそうな人も(゜∀゜)

前回で城の前まで命辛々の侍がやってきてますが、「血まみれの男がよく都の中央まで来れたもんだな」と思わずにもいられませんが、ファンタジーはファンタジーです。

ノーサイド


長月の十八日。


風香城の最上階。

其処には藤姫と彼女の側近である豊国 理知がいた。


理知の前には、つい先の程、門の前で力尽きた侍の亡骸。


理知は其の亡骸を前に正座をし、息も静かに目を閉じている。藤姫は上座から見守るといった目で理知を見ていた。


「では…失礼します」


そう口にして、優しく手を亡骸の額の辺りに手を添えて、光の無い目を露わにする。其の顔を覗き込み、垂れる長い髪を邪魔にならないよう手で退かし、


「『梓弓 引き豊国の 鏡山 見ず久ならば 恋しけむかも』」


口遊んだ端から、瞳孔の開いた虹彩の淵が青みを帯びて、同じく青く光を纏ったであろう己の目に”死ぬ迄の一部始終”を焼き付けていく。

此れの瞬間が、途轍もなく嫌いだった。ぎしりと音が鳴りそうな程、理知は奥歯に力を入れる。


見ていた藤姫もまた、無意識に片方の手でゆっくり其の両目を覆った。


ノーサイド エンド


                 ※       ※


「人の姿をした鬼…ですか…?」


「そう。其れがあの侍の目に映っていたらしい」


 門の前で倒れた男が城の中に運ばれてから幾分か、如何にも落ち着かない気持ちだった僕と白夜の元に初雁さんが来て、其の分かった事を教えてくれた。


「人型の鬼なら今迄にもいたじゃねぇか。其れとは…」


「単に二本足で立っていて手が二本あるだけの人型というわけじゃない。人の形なのさ。そうだね…例えば肌が”肌色”をしていると言えば事の違いも分かり易いか」




 曰く、其の侍の目が捉えた光景とは。


山の中を歩いていた五の隊の隊員達の前に突如として、男が現れた。


草履を履き、服を着て、伸びた手の先はきちんと五本の指に分かれていて。


前を歩いていた侍の一人が男に話し掛けた。推測するに、男に山の中に入るのは危険だと、下山を提案したらしい。

疑いようの無い迄に、現れたものは人だと思われた。


しかし、男の頭には突起物が二つ。開いた口からはギザギザに鋭い歯が、最早牙と呼ぶものが見えて、話しかけた隊員とは別の隊員が、話す隊員の言葉を遮るように口を開いたそうだ。

其の口の動きから察するに。


待て、何かがおかしい。


隊員達の中で、警戒が共有される前に男が動きを見せた。


其れ迄、微かに開く口から気の所為と捨てられる程度に見えていた牙を、侍なら一度は目にしたような鬼の不気味な笑顔で剥き出しにして、短い言葉を紡ぎ、


地面が揺れた。


侍の見上げた先には、岩の柱。さっき迄なかった、男の背後のもの。


其れが何なのかと考えを纏める前に、岩の柱は、言葉はおかしいが正しく()()()()()()()ようにして、


五の隊員達に襲い掛かった。





「門の前で倒れた侍は、此の異常を都に伝える為にあの場から逃がされたらしい。其の時点でかなりの怪我を追っていたようだが、血を流した大半は都に戻ってくる迄に別の鬼に襲われたもので、例の鬼らしきものから受けたものはもっと内部の骨や内臓、考える限りでは其の岩の柱にぶつかったらしいというのが彼の傷を検分した大和が言っていたよ」


 まさか、豊国さんの歌が死人にも作用するとは思わなかったけど。豊国さんの《去見》は眼球さえあれば其処に映った光景を見る事が可能らしい。だから相手が死体だろうと目があればいいし、身体が無くても眼球があればいいそうだ。

だが、死の瞬間の光景を見る事とは、ある意味で死を体験する事にもなる。とても気分の悪いものだとは其れを見ていない僕にも分かる。


 豊国さんの歌意と薬師寺さんの力も合って、聞いただけでも割と想像が出来た。亡くなった侍から此処迄情報を引き出すのも流石だ。

しかし、人の姿をした鬼か…


「其れは鬼…なのか?額に歪に突起があるだけの人間だったり、言っちゃ悪ぃけど都に恨みのある…詠い手の山賊だったりはしないのか?」


其れは例えば、蒼さんのような。


 歌は言わなければ、人前で歌わなければ、簡単に隠せるものだ。だから都の中なら兎も角、都の外の村ですらない場所に隠れていれば、其の存在を知る事は困難だ。そして都とて、山賊といった者達から恨みを買っていないわけがない。〈獄〉だってあるくらいだ。

鬼のフリをして侍を襲って情報を混乱させている…という事も考えられる。


「外見的なものからの、実際に見た理知さんの判断だけれど、其の通り、何も分かっていないものさ。分かっているのは、戦い慣れている五の隊の小隊を全滅し得るだけの実力があり、そして都か侍か…少なくとも其の関連に攻撃意志がある事。

其れだけで、都としては無視出来ない」


つまりは何が何でも討伐する事に決まったわけか…其れもそうか、得体が知れずとも都に対して明確な敵意を持っている事に関してははっきりしているのだから。


其れ以上に気になるのは…


「白夜…あの小隊には、瓜助さんが…」


「其れ以上言うな……分かってる」


思い出されるのは、大五郎茶屋から見送った瓜助さんの背中。

歳が近い事もあり、特に白夜は蝉さんと共に交流が深かった。誕生日も祝った…つい此の間の事だ。

僕以上に白夜の方が思う事は多いだろうと、其れ以上は控えた。


「とはいえ、其の情報もつい先に得た物。今城の上階で話がされている筈さ。此れからの事が決まれば、私の方からまたあなた方に話をとおs」


ドォン


 さっき言っていた岩の柱が出てきた時の地面の揺れよう、其れを体感させて貰っているかのような地響き。建物自体がぎしり音を鳴らした。


「なんだっ?!」


 地震の様な自然のものではなく、何かがぶつかって揺れた其れは一発だけで直ぐ収まった。揺れと共に聞こえた音は案外近い所から聞こえて、其れも高い場所からだった。都に高い建物一つしかないから、目はさっと其方を見た。


「…城の最上階みたいだね。一体何が」


初雁さんが城の中に駆ける最中白夜を見ると、僕を見ていた目線と交わった。考えている事は同じみたいだ。

僕達は初雁さんの後に続くように走り出した。



                  ※       ※



ノーサイド


「納得がいかない」


 告げた言葉に対し、淡々とそう口にする男に藤姫は溜息を付いた。城と城の周辺を己の衝撃のみで揺らしておいて、よくぞ此処迄平坦且つ冷静に話せるものだと逆に関心をする。


「何故、此の身を出さない」


「此の事態だからじゃ。分かっていない事の多い中、主をおいそれと都から離れてもらうわけにはいかぬ」


 藤姫は諭す口調で、前に座る男…五の隊の隊長である三井寺春人に言う。話をしようという気は見せつつ、春人から心の底から洩れ出す熱に当てられて冷や汗を背中に流す。

言葉を少しでも間違えれば、最上階の其処の露台からも飛び出してしまいそうな男の様子に藤姫はほとほと困っていた。


「此の身ならば、人の姿を持った鬼とて、直ぐに打ち滅ぼしてみせよう。そう長く都を離れるつもりは無い。故に問題は無い筈だ」


其れは春人の自信の表れであり、且つ事実可能な話である。真におかしな事にも。

藤姫もまた其れが出来る事を考えつつも、其れが”かも”の範疇だとも想像付いた。負けだとかではない、負けも勝ちも無い場合には当てはまらなかったりもする。


「そ奴が元居た場所にまだいるかも限らん事はお主とて分かっておろうに。主と入れ違えで奴が来るのなら、其れこそあってはならぬ事じゃ。何より、冷静でない主を放つ事は上に立つ者として許可は出来ん。

普段の慧鬼や大鬼で出るのとはまたわけが違うのじゃ」


 そんな事は春人が分かっていない筈なのも、藤姫は見通していた。だというのに、其の可能性を捨ててたった一つに強硬しようというのが全ての証だ。


「冷静では無い?此の身はずっと冷静だ」


「戦闘者としてはのう。何時だってお主は最良の戦いをしてみせる事は分かっておる。じゃが、人間としての主は儂から見ても激情で溢れておる事がよく分かる。いい加減、人としての自身に目を向けよ。でなければ、やがて身を滅ぼす」


 つくづく見た目には現れないが、春人は間違いなく人一人を守れないだけでも悲しさや悔しさを滲ませる男だという事は、彼と関われば分かってくる。

ただ、言葉を重ねる事になるが表には出ない為、”人の死に薄情な戦闘人形”といった捉え方をされやすい。

友が初めて彼を見た際にも、同じ様な印象を持ったが故に好意的には見られなかった。…最近は段々と、ほんとは違う事には気付き始めていたが。

確信を得るには、もう少しと言ったところだ。


 繊細と図太さ。相反するものが共存しようとは彼を見なければ知る事はなかったろうと藤姫は逸れた思考に思った。


「自隊員を複数殺された主の気持ちも分からんわけではない。しかし、主は此の都の最大の戦力なのじゃ。下手な事で失う事は出来ぬ。…分かっておくれ」


 そうも言えば、春人は黙って広間を出た。あと一度くらいは揺らされると思ったがそうはならなかったみたいだと、藤姫は安堵した。

背後からを息をつく音が聞こえる。


「ふぅ…あ奴も難儀なものじゃの。怒り悲しもうと、其れに身を任せられないとは」


「仕方の無い事でしょう。彼は守れた筈の者を守れない事を一番に嫌う。ましてや其れが、初めて慕ってくれた者達なれば…」


「人間らしい感情に関しては稚児にも劣らぬからのう…歪なものじゃ……」


のぅ理知よ。と藤姫は振り返る。二人を黙って見守っていた理知は、「そうですね……」と俯き、何か考えをしているのが藤姫に伝わった。其の考えている事については、此の際には聞かない事にする。


「だがしかし、こうもなるとあの人の姿をした鬼を誰に任せるべきか…下手な人員では、単なる生贄にしかならぬからな…」


「矢張り四の隊でしょうか?」


「あそこものぅ…戦い慣れはしていようが、異常な場面にはなれておらんだろう。やられた小隊の倍の人数を放ったとして、戻ってこられるのは半分か其れ以下か…非情な決断も、時には必要だとは分かっておるのだがのう…」


 ううんと唸っても出て来ないし、理知も同じ顔をしている。犠牲覚悟の作戦を浮かべても踏ん切りがつかない程度には残酷にも成りきれず、最後は「ああ~!」と髪の毛を掻き乱そうとして、毎日髪を整えてくれる侍女達の顔が思い浮かび、止めた。


「あぁせめて”石破”がいるのならば、話は変わったんじゃが…」


「文の一つも寄越しませんからね。今は何処をほっつき歩いているのやら…」


考えなければいけない事が積み重なって、部屋は溜息が蔓延した。


ノーサイド エンド



                ※          ※



 初雁さんの後について、城の階段を昇り、あと幾ばくかで最上階に行きそうだという所まで来た時、上の階から人が降りてきた。


「春人さん…!」


 白夜が呼んだ事で、三井寺、さんの目が此方を向いた。彼を見上げて、初雁さんは「…ふむ」と何か理解した御様子。


「…やはり、貴方だったか。さっきの揺れの正体は」


「え?」


 一人分の拳で、此の大きな城を揺らしたと?三井寺、さんは否定しないからそうらしい。何だろう…驚きはしたけど、説得力しかない。

上の階にあるのは藤姫様の部屋、其処から降りてきたのは大きく被害を受けた五の隊の隊長。揺れた城に、気のせいか…何処となく沈んだ印象の其の人。


「其れで、上で…藤姫様と、か。あぁ成程…貴方なら地面を揺らすくらいしそうだね」


何があったのか知りに初雁さんに付いてきたが、僕でも少しは把握出来た。僕なんかよりよく分かっている初雁さんは、もっと詳細に把握したみたいだった。


「けれども私も藤姫様に賛成だ。私も、今の貴方に任せる事は出来ないと思う」


「……。」


 おそらく藤姫様にも言われた事を初雁さんにも言われたのが効いたのだろう、其の場で荒く座り込み胡坐を掻いて、ダンッとでも床に握った手を叩きつけようとして…止めた。目的を果たさなかった手は膝に乗せられた。

 見ていた白夜は「春人さんに人間味が……初めて見た…」と言っているが、其れでも隙が無いって如何いう事なんだ。今、こっそり二本くらい針を投げた処で、両方とも受け止められて、立ち上がったのすら気付かない速さで懐の小刀を首に添えられる事だろう。五本も十本も駄目そうだ。

何なんだ此の人は。


「貴方はそろそろ分かるべきなんだ。貴方は何でも出来るけども、全てをするには人の器には限界がある。後悔は出来ない。

 自分が行けば良かったとでも思うのだろうけれど、信じて、任せたというのなら、其れを貫くべきだ。でなければ、死した彼等が報われない」


 其処に座り込む三井寺、さんを初雁さんは見降ろした。其の顔は哀しげに見えたが、下向きで影が差しているので気の所為かもしれない。


「貴方だって何があって死ぬかは分からないんだ。今の貴方は、行かない方が良い。隊員がやられて辛いのは…私達も分かっているから」









「な、なぁ……其の鬼はやっぱ倒さなきゃ、なんだよな?」


白夜が、二人の会話に入る。

振り返った初雁さんは優しく、其の問いに返した。


「そうだね。さっきも言った通り、其れは確実さ」


「だが、向かう奴っていうのは決まっていない…ならさ、」


俺達に行かせてくれ。俺だけじゃなく、友、白菊…まぁ要は俺達だ。


白夜がそう言った事に僕は目を瞬いた。白夜が声を上げた時点で自分が立候補するとは思っていたけど、僕だけじゃなくて此処にはいない白菊さんも巻き込むとは。

僕は其れを、意外、と感じていた。


「白夜…」


「敵討ちってわけじゃない。其れが出来る程、付き合いが長くもないしな…豊国さんの話じゃ、瓜助さんの死んだ姿ってのは見られなかったんだろ。全滅だって実は違うかもしれねぇ。…助力するなら、俺達位が丁度良い」


 相談も無しに含ませた事への申し訳なさからか、肩に手を置いて僕に言った。

本当に思っている事が違う事位、肩に乗せられた手が教えてくれる。



                   ※        ※



ノーサイド


「…して、彼の者達を見送ったのか」


「あぁ」


 春人は再び、藤姫の元を訪ねていた。去る際の険は取れている事に安心しつつ訝しんだが、座って先ず言った事に頭を痛めた。


「まさか此方に話を通す事無く、今日の内にさっさと出してしまうとは思わなんだぞ。ちと困るのじゃが」


「処理は万のに任せたが?」


「奴はの。そういう事じゃ無いのだが」


 何も問題あるまいという姿勢を崩さない春人に藤姫は更なる説明を諦めた。

何を言ったところで、彼等は既に都を離れている。此処で話したって仕方がないだろうと悟った。大方、狙っての事だろう。

 其れとは別の心中、


「(明け透けなく考えれば、都としても都合が良いがのう…彼の者達を失ったところで、都の戦力は以前に戻るだけでそう損害にはならん。そう云えば忘れていたが、彼の者達は特殊な存在であったな。異常にぶつけるには、同じく異常な存在であるべきか。

我ながら嫌な思考じゃのう…慈しむ対象と見ながら、都を第一に思えば簡単に切り捨てられるとは)」


頭の中に響く自分の声を振り払うように首を横に振る。

こんな事を考えている場合では無いのだ。


「其の身に話を通してしまえば、長くなるだろう?此の方が話が早い」


「はぁ…此れだから戦脳は…色々冷静に辻褄を合わせる為に話し合いをする為に、そういう事は先に話を通すもんじゃ。こうなってしまえば、あの者達に何かあった時の責任は全て主に取って貰うぞ」


「あぁ。雁のと蝉のも付けた。心配は無い」


 藤姫は一つ、心の中で修正を加えた。春人も前に進んでいた。

藤姫は春人について、人を頼る事をしない、たった一人で事を済ます事の出来る、悪く言ってしまえば独り善がりであると評していた。此れには同意する人も多数だろうし、正しく其の通りだった。

全く信じていないわけじゃなくても、自分がやるのが一番確実だったからだ。

 其の彼が、送り出した。


「(信じる事にしたのじゃな、彼の者達を。ふふ、此れも一種の成長というものなのかのう…)そうか、なら…良い」


 彼に影響を与えたのはかの五人の少年少女…中でも、背の高い少年なのだろう。二人は少し似ているところがあるというのもあってか、春人は特に気に掛けていた。矢張り分かり辛かったのだけれど。

此処からは祈る事しか出来ない。願うならば、春人の信じて託した彼等が笑って戻ってくる事を。

藤姫は祈った。


ノーサイド エンド



                   ※      ※



「ふーん…そんな事があって、今其の件の山に向かっているってわけなのか」


「俺は特にお前には言ってないぞ。夜明」


「あはは、やだなぁ白夜。僕だって役立つ事は慧鬼の時に分かっただろう」


 三井寺、さんが手配した、珍しくもなくなった牛車の中。僕、白夜、白菊さん、夜明、初雁さん、蝉さん。

此れが、此れから例の鬼を退治しに行く面子だった。

 蝉さんは三井寺、さんに呼ばれてだけど、さっき名前が挙がらなかった且つ今白夜が口にしたように夜明は含まれていなかった。聞いた話で、石の柱らしいものを避けられなければ一発アウトの御陀仏だから、


「慧鬼の時と同じさ。日暮君には私が就くから安心して欲しい」


「しかし、白夜が僕達に相談無しで巻き込むとはねぇ…」


 何を思っているのか分かり易いニヤニヤ顔で夜明は白夜を篤く見ていた。白夜は居心地悪いと夜明と頑なに目を合わせないように顔を背けている。

危険だって分かっていて僕達の名前も挙げたんだから、夜明がそういう顔をするのも分からなくも無い。


「次は僕の名前も含めて欲しいな」









「ぜぇぜぇ…はぁはぁ……」


「おい夜明、山登るだけで息上がり過ぎじゃねぇの?初雁さんだって疲れてないのに」


「ははは、私は動き回る立場ではないけれど、まぁそれなりに登ったりはするからね」


「そうだよ…僕なんて殆ど都からも出てないのに。前の慧鬼退治だって久しい外出だったんだから…そもそも、動くのそんな得意じゃないし…」


 山を登る、というのは鬼を退治する時には付いて回る。

鬼退治によく行く僕や白夜、白菊さんと異なり、夜明は大層にへばっていた。だからって置いていくという選択肢は無いのでみんなで助け乍ら進む。


「此処、よね…?例の鬼が出たっていう場所って」


「そうっすね。どうも自然に出来たとは思えない荒れ具合っす。其れに…」


 やってきた五の隊の隊員達が襲われた場所は、木々の生える周りとは様相が異なり、雑に耕されたような、地面が捲れ上がり、木が倒れ根っこが見えている酷いものだった。


盛り上がった土の下に見えた肌色の物を、今だけは目を外し、辺りを警戒する。


「例の鬼は…まだ此処に居るのかな…?居ないなら居ないで、都の方で三井寺さんが待ち構えているわけだけど……」


 荒れた地表の上、足場と高さが良い事に倒れた木の上を伝うように歩いて一番前方で気配を探るが僕達以外は見られず白夜をちらりと、


「…いや、来た」


白夜が振り返ったのを見て、警戒を強めて一番後ろを進む白菊さん、蝉さんの後方を見る。白菊さんも蝉さんも見ている先、荒れた森とそうでない森との境界に其の男は立っていた。


 聞いた通り、何故こんな所に?と聞きたくなるくらい、普通の男だった。…額に尖ったものが二本天に伸びていなければ。


「どうもこんにちは、侍の皆さん。わざわざこんな場所迄、殺したばっかの侍の敵討ちに御苦労様。じゃあ早速…」


風化とまらぬ 岩や舟虫 一族に


 見上げる程の六角に形作られた石柱。其れが男の背後から二本、周りに生えていた木を退かしながら聳え立った。


…此れが豊国さんが目を通して見た光景か。男もそうだが、あの二つの存在も相まって、感じられるプレッシャーが体全体にぶつかってくる。


「死ね」


そして其れは言葉になり、六角型の石柱は上面を僕達に向け乍ら真っ直ぐ向かってきた。

人の姿の鬼とか出すと、今や大人気の某漫画およびアニメが頭にちらつきますが、鬼→人ですし、元々書き始めから考えてましたし。

どっちかっていうと、某脱色系の方が似てたりします。


最初に此の話考えた時から鈍足故にもう何年も経ってしまい、だいぶ朧げなところも増えてきたかもしれません。地の文が酷いのは相変わらず、今回なんて唯そこで話している場面が多いから余計どう描写して良いか分かりませんでした。

最近心の豊かさが失われてきたかもしれません。元からかもしれませんが。


【初出の歌】

風化とまらぬ 岩や舟虫 一族に


           西東 三鬼


〈参考〉検索は[at]を抜かして行って下さい。

http://www.haik[at]udiary.jp/kigo/natsu/index6.html


自分が初めてこの歌に触れた際は「船虫」で見たのですが、調べてみると基本的に「舟虫」とされている為、こちらで統一します。


誤字脱字、文章的におかしな点はないでしょうか?

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