ー弐拾捌ー「友人の手助け 其の弐」
前回の続き。
ぎりぎり九月中に投稿出来ました。
遥良さんから逃げるようにして来たのは鍛冶場。
「…なんじゃと、火薬を分けて欲しい…とな」
「えぇ、そうなんですよ」
来て直ぐに鍛冶場の翁にそう切り出した夜明に、翁の反応は著しくなかった。
「だ、駄目…ですか?」
「少量といっても火薬は火薬じゃ。其の扱いを軽んじる者においそれと渡せるのものではない」
「えー!でもちょっとなんだろ?ならイイじゃんイイじゃんっ!」
「こういう輩がおるからの」
と当然のように此の場にいるのは、此の辺の地域を担当している十三の隊の隊長、佐野さんだ。
仕事は如何したんだ。
「何より、都では一週間後に花火大会が迫っておる。此処の者の其の準備も佳境に入った。
最早一粒の火薬も無駄に出来るものではない」
そう云えば、夏の最後の日、即ち三十一日に九・十二・十三の隊合同で藤姫様に献上する花火を打ち上げるのだとか、九の隊の隊長真継さんに聞いた気がする。
だから此処最近城の裏手は少し騒がしい。
「花火大会の事もあるから、こうは成るだろうとは思っていたけどね」
思ってたんかい。
でも、予想通りの夜明は余裕そうだ。
「だから、其の欲しい火薬の使い道を一先ず此処で披露しようと思うんですよ。
限り無く少ない量で、人を喜ばせる火薬の使い方を」
※ ※
「厚紙とかがあると良かったけど、和紙じゃあ重ねても心許無いからね」
と、夜明が転がしたのは、よく乾いた竹(手持ちサイズ)。
来る途中で予め調達していたものだ。
其の他にまばらな長さ・太さの粗い紐、摩擦の起きやすい石を砕いた粉状のもの、厚い布と薄めの布などなどが置かれている。そしてほんの少しの火薬も分けて貰った。
「全く予測がつかんの」
「ふっふっふー…では先ず、丁度良い場所にある節以外をくり貫いて空洞にします」
そしてくり貫いていない節になんとか荒紐が通り抜けられる程度の穴を開け、其処に荒紐を通す。通した紐は竹筒の後ろから顔を出すように、節から出てる前の方には摩擦を起こす為の粉と摘まむぐらいの火薬を塗しておく。後から入れる残りの火薬に掠らない程度節より前に紐を出しておくと良いだろう。
竹筒の後方には薄い布に一か所穴を開け、後ろから飛び出た紐は此処に通す。布は筒の後ろをしっかり覆ってから、竹筒を包むように巻いて二か所紐で固定する。其の上から厚めの布で巻き、少し太めの紐を巻けば滑り止めの代わりでもある持ち手の完成だ。
そしたら、今度は竹の前側で、実際に火薬を詰める事になる。此の竹の太さではみっちりと火薬を詰めると多すぎるので、先に翁に作ってもらった丸い木枠を中に嵌め込み、其の中に薄く火薬を敷き詰める。此処からは後ろから出ている紐が動かないように慎重に作業をしなければならない。じゃないと大惨事だ。
敷き詰め終わったら、竹筒の前方を和紙で覆い、紐で止める。出来る限り中に弛ませた其の和紙の上に好きなように飾りちり紙を乗せたら、更に其の上を同じく和紙で覆って、外れないように紐をぎゅっと結んだら、
「完成!!」
「「「おおー」」」
ぱちぱちと出来上がった竹筒に拍手が沸き上がった。
「…で、何じゃ?此れは」
「此れはですね。クラッカーというんですよ。まぁ…モノホンとはかなり構造の違う、僕なりに再現してみたものなんですが」
クラッカー、名前は聞いた事がある。
御祝いなんかのサプライズに定番の、激しい音の鳴る手軽な音花火だった気がする。
「じゃ、ちょっくら披露といきますか」
よっ、という掛け声で持ち上げた竹筒クラッカーは左手一杯に占めており、手軽感は皆無だが、有り合わせに作ったから仕方ない。
構える姿は宛らバズーカを構える兵士。
右側に抱え、右手に後ろから飛び出た紐を掴んだ夜明は、誰もいない場所に筒の向きを合わせて空の方へ、一気に紐を引いた。
パンッ
爆風で破けた和紙の中から爆ぜる音が鳴り響き、仕込んでいた飾り紙が宙を舞う。其の大きな音は、鍛冶場にいた人達の作業を中断させて、注目を集めるのに有り過ぎる程の効力を発揮した。
僕は思っていたよりもしっかり出来ていたからもう一度の拍手をしていたけど、翁達の口はあんぐりだ。
「此れは…喜びよりも先に驚きが来るのではないかの」
「驚きも喜びですよ。多分」
クラッカーだから、時間を掛けて作ったものも、音の一つで呆気なく終わってしまった。手間と結果の割が合わない。しかし、其の手元で弾ける花火擬きのインパクトは絶大で、特に食いついたのは佐野さんだった。
「っんだこりゃ!面白れぇもん作るなお前らっ!!」
強く夜明の背中を叩いた佐野さんは、さっそく自分も、と材料を引っ掴んで竹に紐をぐるぐる。思考よりも先に手が出た割に丁寧に工程を踏んでクラッカーを作る佐野さんだったのだが、もっと激しい音を期待した佐野さんは多量に火薬を詰めてしまった。
「あっ馬鹿」
ドンッ
夜明が口を挟む前に佐野さん作の竹筒クラッカーの紐は引かれ、より重い音が響き渡った。筒からも火が出たのを一瞬目で捉えた。
其の衝撃は大きく、爆発の反発力によって佐野さんは後ろに吹っ飛ばされた。
後頭部を地面にぶつけて痛そうだ。
筒の先からは飾り紙を飛び散る事はなく、粉っぽい黒いものがひらひらと零れた。
其の様子を見た夜明はあちゃ~と口元を手で覆い、翁はぶつけちゃいない頭を痛めるように抱えていた。
「渡坊め、言わんこっちゃない…」
「うーん、流石に火を噴くのは御免ですけど、もう少し飾り紙の飛距離を伸ばしたいものなんですけどね」
「其れなら、あの馬鹿の様に火薬を増やす必要はない。節の距離を変えれば良い。もう少し口と近づけても紙が焦げる事はなかろう」
「ふむふむ…」
「表面を覆う紙も削いで、薄くすれば爆風を殺さずに済む。破けない程度に切れ込みを入れても良いかもしれんな」
「成程…」
夜明と佐野さんの二人のクラッカーを以て、翁にも興味が沸き上がったみたいで、火薬袋の紐も緩んだそうな翁からは様々なアドバイスを貰えた。それから夜明は翁と話し合いを重ね、発案から一日も経たない内に、かなり作り込まれた竹筒クラッカーの完成品を二つ、作成する事が出来た。
※ ※
「たっだいまー」
「遅かったな」
「「「おそかったなーー!」」」
二つの竹筒を抱えて銀家宅に戻ると、ちびっ子三人衆に絡まれる白夜に出迎えられた。
「もしかしたら結構遅くなったかも。でも其の分作り込んだつもりだよ。翁プロデゥースの自信作さ。
白夜は?」
「ばっちりだ。今は地下を借りて氷と一緒に隠してある。こいつ等も手伝ってくれたしな」
「頑張ったのー」
「たのしかったのー」
「のーー!」
自信を持って鼻を鳴らす白夜の前に立ち、三人の子供達も真似をして胸を張り鼻息を荒くした。
こっちも、たった一日でよく此処迄懐かれたもので。
「料理の方も準備は出来て御座いますわよぉ?」
「ぴゃっ!?」
何処から現れたのか、夜明の耳に息を吹きかける遥良さんに白夜は分かり易く飛び上がり、間髪も無く彼女から距離をとった。
あからさまに避けた様子に気を悪くした感じはなく、上品に口元に手を添えて微笑んだ。
「あ…後は、飾り付け、ですか。よっ遥良さん…」
「そうで御座いますわね。だけれど、もう栗助君達が御飾りを作って下さってるの。金様が御帰りになられる前にちゃっちゃと済ませてしまいましょ」
お子様三人組は元気に返事をして白夜を引っ張って奥に消えていった。ほんとに仲良くなったもので。
「さて、僕達も助太「まぁ御待ちになりなさいな」…え゛?」
距離を離した筈の遥良さんの手が夜明の肩に掛かり、夜明の顔色が急激に悪くなった。
「先程、よあ君に御話したから丁度良いと思って優さんの御着物を拝見させて頂いたの。そうしたらですわ、よあ君にとっっっっっっっても似合いそうな可愛らしい御着物を見つけてしまったのですわ」
「あ……あぁそう、そりゃ良かったですね」
「優さんも是非ですって。金様もよあ君の美しい姿はお好きだって言ってらしたわよ。御世話にもなっているんですし、日頃の御礼に良いと思わない?」
「いや思わないです。瓜助さん達が色々準備してるんだから充分ですよ」
「御祝いの品は幾らあっても嬉しいものですわ。つべこべ言わないで行きますわよ」
「い………い゛ぃぃや゛ぁぁ!友助けてええぇぇぇ!!」
首根っこ掴まれ連行される夜明に合掌をして送り出し、僕は飾り付けの助太刀に向かった。
「友やっときたか。夜明の奴は?」
「…僕には何も出来なかった…よ」
「そうか…生きて戻って来てくれたらいいんだがな…」
部屋を彩り終わる迄に夜明が部屋に来る事はなかった。
※ ※
電気で点ける照明が無いので、大抵の建物というのは夜になれば真っ暗だ。だから、大五郎茶屋を始めとした夜迄閉めるつもりのない店は雪洞に松明、灯篭を置いたり天井に吊るして明るくし、其処に光を求める客が集まるのだ。
銀家でも日が落ちてから帰ってくる金さんの為に彼方此方から持ち運べる明かりを集めて、怖い話も怖くない、明るい空間を造った。
飾りも色とりどりよりは、明かりによって赤く染まる部屋に合わせた配色がされていて、一種の神秘さを感じさせる。
其の場所に僕達は今夜の主役を待って息を潜めていた。
「ゆ、優…此の部屋に入れとは、一体如何したんだい?子供達も戸口で出迎えては来なかったのだが…」
来た…!
襖の向こう側から聞こえる声に目で示し合わせて、僕は丹精込めて作成されたクラッカーの紐を握った。
ガラッ
襖が開いた。
パーン パーン
「のぉわっ!?」
「「「「「「お父さん!お誕生日おめでとう!!!」」」」」」
部屋に入ろうとした其の人は二発のクラッカーの音と盛大な声に驚いて後ろに引っ繰り返った。
「な…なんだぁ…?」
喜びの余りにちびっ子三人組に抱き着かれ、目を白黒とさせている此の人が、瓜助さん達のお父さんで本日の主役のの銀 金さん。
殿の文官で、瓜助さん、それと侍志望だという次男の栗助さん程がっしりしていなくて、容姿は案外脱色していない元気な稜恭さんに似ているかもしれない。
「お父さん、おめでとう!」
「おめでとーー!」
「とーーー!」
「あ…ははっそう云えば、本日は私の誕生日だったな。すっかり忘れていた」
やっと状況に思考が追いついてきたような金さんは、緊張が解けて表情を綻ばせた。
子供三人衆に誘導され、金さんが席に着いた其の目の前の机には、沢山の料理がずらり。
「俺も手伝ったんだぜ!!」
「栗兄さんは野菜を切っていただけです」
「いっ良いんだよっ切るのは超一流だから!」
次男の栗助さん、三男の稜恭さんは競うように自分のやった事や料理の中の工夫を言い合ったが、其れ等全て纏めて二人一遍に金さんに褒められて、二の次も言えなくなっていた。
小さい子は夜が深くなると眠くなる、という事で食事の前に三人のちびっ子による、今日迄練習を重ねた舞を披露する事になった。
優さんによっておめかしされた子供達が部屋に入る。と、其の中に夜明もいた。そう、夜明も。とても可愛らしい、女性らしい着物を着て子供達と一緒に入室した。
そうして始まる金さんの為の舞。センターは何故か夜明。此処は普通子供達が真ん中なんじゃ?とは思ったけれど、金さんはそんなに気にしていないみたいだ。しかし、夜明自身は女物の着物を着る羽目になった上に人の目に曝されているという絶望感と祝われる主役の息子娘のど真ん中を陣取ってしまった罪悪感に表情が死んでいた。
※ ※
「あのゴリラ姉さん…あの細腕の何処にあんな馬鹿力を隠し持っているんだか…」
「ご…ゴリラ、ね、姉さん…」
舞も無事に終わり、沢山の料理にありつく。其の大きな机の一角に僕達も座らせてもらい、わちゃわちゃ家族で料理を分け合っているのを見ながら、まだ箸を伸ばさずに項垂れる夜明に目をやった。
「そもそも、元々似合うって分かってるのを僕に着せたって面白くないって思わないよ。やるんなら、白夜なんかに着せた方が面白いと思わない?」
「ほ、褒めてるんだか、貶し、てるん…だか…。で、でも…そんな、事言って、い…良いの?白夜に、聞かれ…たら…」
精神的苦痛が大きかったらしい夜明は日頃の遥良さん及び他の女中さん方への恨み言と一緒に色々ぼろぼろ零していく。でも、傷の深い夜明は周りが見えていなかった。隣に誰がいるのか、見れば分かる。
「遥良さーん、夜明が化粧直ししたいんだとよー」
「ふふふ~」
「ぎゃ~来ないでぇぇぇ!!」
机の上の皿も、殆んどが空になり、
「はぁ…食べた食べた。何時も以上に美味しい夕食だったよ」
と、もう終わった気でいる金さんに、知っている子供達はくすくす笑った。
「実はまだ」
「おわってないんだよ」
「ねーーーー!」
三人で音を立てて、襖を開く。
夕飯の途中で部屋を出ていた御盆に何かを乗せて襖の前で待ち構えていた。
「誕生日ってのは此れがねぇと終われねぇだろ」
がたん、と金さんの目の前に置かれる御盆の上の代物は、金さんには馴染みの無いものだっただろう。
黄色のクリーム状の物で覆われた円柱状のもの、上には茶色い粒が振り掛けられ、真ん中には丸まる一個の栗がどんと構えている。
「え…此れは何だい?とても美味しそうだ」
「栗金団の栗と薩摩芋で作った若干モンブラン風味の御祝いケーキだ」
「「「けえきーーーーー!!!」」」
僕と夜明が出ている間、白夜は銀宅に残っていた。理由は此の、誕生日ケーキを作る為だ。
ケーキは洋菓子なので、此の場で揃えられない物は多いし、砂糖も貴重だ。諸々の道具(ボウルとか)だって、日がありゃ作れたかもしれないけど、一日足らずでは何一つない。無い無い尽くしの中で、白夜は此のケーキを作ってくれた。
ケーキの生地には、米が主流な此処では小麦粉は得辛い、ので、代わりになる雑穀を牛乳と卵、そして雑味を消す為のお茶の粉と砂糖で溶いて焼き、ホットケーキ状の二枚の平たいパンを作って再現した。
其の間にペースト状の栗のクリームを敷いて半身にした栗を幾つか詰めて、合わせた其れ等の周りを栗金団ように他より余裕のあったペースト状の薩摩芋を塗りたくって、上に細かく潰した栗を振り掛ける。
最後に、真ん中に中に敷き詰めずに残したほんのちょっとの栗のクリームを乗せ、其れを台座に更に甘く煮詰めた甘い甘いまるまる一個の栗をイチゴ代わりにぽん、と置いて、御祝いケーキの完成だ、そうだ。
「あたしがさつまいもを周りに塗ったの!綺麗に塗れたでしょ?」
「くりをくだいてーうえからちらかしたよ!」
「くりおいた!!」
チビッ子達が自分のやった事を口々に言う。
売られている、完成したケーキが溢れる現代でも、材料を買って自分達で作るケーキも廃れていない。プロが作るものに比べて其の出来に大きな差があっても、其れより作る過程と出来た達成感が何よりも勝るからなんだろう。
子供が手伝えるのも大きい。世界の壁を越えて、初めてケーキ(擬き)を作った子供達も楽しかった事が窺えた。
「御陰で、元々の夕食の栗金団が存分に減ったけどな」
「いやはや、栗金団を此のように化けさせるとは驚いたものだ。もう我慢出来ぬよ。戴かせてもらおう」
目の前で白夜がさっくり分けた一切れを二股に分かれた串で刺し、口に運ぶ。ケーキを口に入れた金さんは、其の途端にびしゃんと、稲妻に撃たれたような顔をしてから、口を全く開かず顎を動かして、ごくんと音を立てて飲み込み、
「此れが…けえきと云うものなのか…っ!」
凄く感動した声でそう言った。
普通の栗金団にちょっと手を加えただけなんだよね?、と白夜を見るも、彼自身も首を傾げていた。
栗金団の量も多いと言えなかったから、ケーキは一人前だ。
けど、其のケーキを一口よりも小さく更に切り分けた金さんはちらちらケーキを見ていた自らの子供の前に其の一つを運んでいった。
おずおず開けられた其の口にケーキを放り込むと、彼女は親にそっくりな輝いた顔で両頬に手を当てた。見ていた子達も巣で待つ赤ちゃん鳥のようにせがんで口を開け、其の一口ずつに放り込んでいった。
僕達もまさか全員で分け合えるとは思ってなくて、自分の為のケーキ減ってでも子供達と幸せを共有した金さんには真に父性を感じられた。
白夜も頭を捻りに捻って作ったケーキで沢山喜んでもらえて、顔を綻ばせた。
※ ※
ケーキも食べ終わり、舞にも疲れて眠くなった子供三人衆を部屋に寝かせに行った栗助さん達、皿を片付ける優さん達が部屋を出て、僕達三人と金さん、瓜助さんだけが部屋に残った。
「夜明君、白夜君、友君。本日はありがとう」
「い、いえ…僕達、も、す…すみません。部外者なのに、さっ参加してしまっ…て」
「何を言っている。君達がいなければ、私だけの為の花火も、けえきとやらも、私は戴けなかったのだろう。
瓜助からよく聞いていたが、今日迄夜明君以外の顔を知らなかったとしても、今日知り合えて良かった。…其れで瓜助、何時まで白夜君の後ろにいるのかな?」
指摘された瓜助さんの体が大きく揺れる。
「あとは瓜助だけだよ。さて、瓜助は何を用意してくれたのかな」
あとは、というのはプレゼントの事。
チビッ子達が舞を、実は其の後栗助さんが大工の友達に手伝ってもらって作ったっていう小さな戸棚を、寝ている事の多いという稜恭さんが起きている間に少しずつ作ったそうな羽織りを貰い、瓜助さんだけなのだ。
こうもなれば、瓜助さんも何か用意してると察せされるだろう。
「ほら、瓜助」
さっき聞いた時は心の準備が出来たと言っていたが、一向に金さんに手渡せる一歩が出てこない。夜明が呆れて息を吐いた。
「まったく…折角一ヶ月も考えて、悩んで書いた、普段は口に出せないお父さんへの感謝の気持ちを認めた手紙を此処で渡さないで如何するのさ」
「ばっ…なんで言っちまうんだよ!!?」
「内容は言ってないよう」
「へぇ…」
情報源は蝉さんだったりする。
言っていないという割には、大体を把握出来るように言われて、金さんも納得したようにやにや微笑むから、瓜助さんは諦めてのしのし前に出て持っていた金さんへの手紙を其の胸に押し付けた。
「っ夜明が言った通りの内容だ!ったく、弟達が皆懸命に凄いもん作るから、こんなちゃちぃもん出すのが恥ずかしいんだよ!…でも、読んでくれたら…嬉しい………と、思ぅ…」
赤い顔で金さんの顔を見ずに言う瓜助さんを金さんは優しく見て、其の場で手紙を広げた。
黙読で、紙の掠れる音が聞こえる。未だ顔の赤さの引かない瓜助さんは其の間何度か廊下の方の襖を見ては、足を其方に向けて、でもまた戻すを繰り返して、落ち着かない様子だった。
「…御手紙、全部読ませて頂いたよ」
全てに目を通した手紙を折り畳み、金さんは一歩瓜助さんに近付いた。
「瓜助は私の子供達の一番のお兄さんで、しっかりしていて、昔っから元気で、でもちょっと恥ずかしがりやで、あまり私や妻に心の内を明かしてはくれなかったね。
そんな瓜助が、其の心の内を私に見せてくれた事、手紙をくれた事、其れは素晴らしい贈り物だ。
ありがとう。手紙を読んで分かったよ。
瓜助は私が思っていたよりもずっと、大人になっていたみたいだね」
肩を腕が通ったのを感じて前を見ようとした瓜助さんを少し高いだけの背丈で抱きしめて、其の背中を優しく二回叩いて、もう一度「ありがとう」と。
瓜助さんは安心しきった顔で、自身の父親を抱きしめ返した。
其れを見届けて、僕達は部屋を出た。
後は二人だけにした方が良いだろう。
部屋の外で、にっこり笑った夜明が握り拳を胸の前に突き出した。
其の拳へ僕達は、にっと笑って、
大 成 功
の意味を込めて、こつんと拳をぶつけた。
私は料理が出来ません。火薬も持ってません。
なので、文章中のケーキもクラッカーも想像の上で制作しています。
ケーキも多分美味しくないと思います。
クラッカーも自己流で作ってみようとは思わないでください。
誤字脱字、文章的におかしな点はないでしょうか?




