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脇役令嬢、必死で慰める

その内登場人物紹介書きますが。


殿下は主人公達の一つ上。

ヒロインは主人公達の一つ下です。




「うわぁぁぁぁあん!!」


「ろ、ローヴェ…おちつ」

「嫌われましたわぁぁ!殿下に嫌われたら生きていけませんわぁぁあ!!」



部屋でギャン泣きの親友に、たじたじな私。

横ではサルヴィアが、私お手製のお菓子をモグモグと食している。

お茶のおかわりまで所望してきたので、とりあえず一回睨んでおいた。



「ローヴェ、少し落ち着いて」


言いながら、空になったローヴェのティーカップに紅茶を注ぐ。

ついでにサルヴィアのカップにも注いでやった。



あの後。

ショックを受けて茫然自失ながらも、授業はしっかり受けたローヴェ。しかし、かなり傷ついている様子が見てとれた彼女は、寮に帰り部屋に入るなり、泣き崩れた。


ちなみに、寮とは、我が学園の寮である。

学園に上がると寮に入ることになっていて、大体、3〜4人一部屋で、家柄で分けられる。


ローヴェの家は公爵という身分で、その上次期国王のお妃候補。

だが、それでも集団生活は大事だということで、次階級の侯爵家である私達と同室なのである。


私とローヴェは幼なじみで、サルヴィアは学園に入って寮の同室になり仲良くなった。のはローヴェだけで、実は私とサルヴィアは、同じ侯爵家ということで、会う機会もあり、学園に入る前からの知り合いである。



ローヴェは、昔から努力家で。殿下の隣に立つ為だけに頑張ってきた。そのせいか、周りからは誤解されやすいが、周りが見えないことがたまにあるだけで、実は心優しい繊細な娘なのだ。


実際、先程の殿下からの冷たい叱咤に、寮に入るなりこの様子。


その内干からびるんじゃないかと思ってしまうくらい泣いている。




「あんなこと、しなければ良かったのです…」


あんなこと、とは、アティオを呼び出したことだろう。

確かに、安易に校舎裏に連れてきたのは良くなかったかもしれないが、周りに人がいるのを慮った故の判断だったのだから、仕方ないと思う。


(むしろ、その後の私の態度が悪かったよなぁ)


つい、ローヴェを庇い、何だか気に入らない後輩を糾弾する形になってしまった。

端から見れば3対1なのだから、悪役はこちらだろう。



「ローヴェ、ごめんなさい。私が、もう少し考えて話せばよかったわ」


「ま、マティの、せいじゃ、ありませんわっ」


しゃくりあげながら、庇ってくれるローヴェに、胸はキュンキュンです。

ああ、なんて可愛いの。ローヴェ。

なんて顔を緩ますと、横から胡乱気な視線が。


「何かしら、サルヴィア?」


「ひっ、な、何でもないです!」


にこりと笑みを向ければ、慌てて菓子に向かう。

てゆーか、食べ過ぎじゃね?


「サヴィったら、口許についていますわよ」


クスリ、私達の様子を見ていたローヴェが微笑みながら、サルヴィアの頬に指を伸ばす。

サルヴィアは菓子を取ってもらった頬を赤く染め、俯いた。


(この、天然たらし)

微笑みを直視したサルヴィア程ではないが、つい照れてしまう程に、ローヴェの自然な優しい微笑はとても美しく可愛らしい。

殿下の婚約者となり、隣に並んでもひけをとらない程、彼女は元々美人なのだ。


(だから、)

本来なら、あんなぽっと出ヒロインを気にしなくたって十分魅力的なのだが。


恋する乙女は些細な障害も不安になるらしい。

まぁ、彼女を呼び出したのは、実際殿下のことを慮った故のことだろうが。自分の為に、邪魔だと思っての行動をするような彼女なら、私はとっくに見限っているのだから。



「ローヴェ、これから、どうするの?」


サルヴィアが、心配そうに尋ねる。

それに、ローヴェは瞼を伏せて。


「暫く、顔を合わせないようにしますわ。見たくないと、言われてしまいましたもの」


泣きそうに笑う彼女に、私もサルヴィアも、眉を潜める。


「「ローヴェ…」」


「大丈夫です。

今までも、あの方に会えない日はありましたから」


気丈に微笑む彼女は、先程まで泣いていたのが嘘のようで。


(ほら、この娘程に相応しい者なんて、在るはずない)


気丈に、凛としたそれが、常であるように。そうやって自分を磨いてきた彼女だからこそ、私は傍にいたいと思うのだから。



「今まで通り、自分を磨くだけですわ。…殿下にまた、振り向いてもらえるように」


健気なこの娘に、どうしてあの方は気づいてあげないのか。

それが当然の形ではないと、どちらかが頑張って努力した末の結果だと。

昔から、彼女が隣に立とうと努力したから、今の形があったのに。


(あのツンデレ、ゆるさない)


本当は、幼い頃からこの婚約者が可愛くて仕方なかったくせに、素直にならないツンデレ殿下に。

傷付けるなら、こちらにも考えがあるぞ。と悪どい笑みを浮かべる。


(大切なものがいること。その存在が想ってくれること。それが続くこと。それが全て奇跡なんだと、知るといい)


幸せは、奇跡だ。

当たり前の日々なんて、ないのだから。








マティ「食べ過ぎよ、サルヴィア」


サヴィ「だってー、マティのお菓子おいしぃんだもぉん!」


マティ「言い方が気持ち悪いわ」


サヴィ「ひどい!」


マティ「…でも、ローヴェの笑顔が見れたから、今日は許す。食べていいわよ」


サヴィ「やったぁ!(本当にローヴェにメロメロよね〜。ローヴェの前では結構ちょろ)」

マティ「何か言った?」


サヴィ「ひい!何でもないです!」

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