脇役令嬢、お茶会を計画する
どんどん登場人物増えて行く。。
「殿下…」
「シグナゼル殿下…」
「今日も輝いておりますわ、わたくしの愛しきひと…」
はあ、と息を吐く様子がとても色っぽく見えるのは何故だ。
ほら、周りの男子にまで飛び火しているじゃないか。
頬を赤らめ、窓際に座る魅惑の美少女、ローヴェを横目でチラチラ見ているクラスメイトを、これまた横目で見やる私です。
「あーあ、ローヴェったら、会えないとフェロモン撒き散らす癖、相変わらずだね」
「癖というか体質?」
「あ、また被害者が」
トイレに向かって走っていった男子に、溜め息。
その間も、絶えずフェロモンを撒き散らしている親友に、漸く重い腰を上げる。
「──ローヴェ、」
「マティ?」
「…次のお休みに、うちへいらして?美味しいお茶とお菓子を用意するわ」
「え!私もいきたーい」
「サルヴィアも、勿論招待するわ」
「やったぁ!ローヴェ、行きましょう!」
「……わかりましたわ。ありがとう…マティ」
「あら、私は久しぶりにお茶会を開きたいだけですわ」
儚げに笑うローヴェの、直前まで見つめていた先にいた存在に、にこり、笑う。
ローヴェが目を背けた途端にこちらを見上げた彼に、宣戦布告の笑みを。
(逃がした魚は大きいぞ、)
まだ逃がしたわけではないだろうけど、彼女が、どれだけ魅力的か知るといい。
「お茶会にはね、久しぶりにお兄様もいらっしゃるのよ」
「あら、ジェイス様が?久しぶりにお会いしますわ」
「ええ、ローヴェに会えるのを楽しみにしてましたわ。ぜひ、おめかししていらしてね」
にっこり、そう伝えれば、幾分明るい笑みを浮かべて、ローヴェは頷いた。
(次の休みが楽しみだ)
ニヤリ、悪どい笑みを浮かべる私に、サルヴィアが震え上がった。
自分で言うのもなんだが、我が兄、ジェイスはイケメンだ。
それも、心身ともにだ。
見た目はヘリオトロープのような淡い青紫がかった銀髪に、夜空のようなダークバイオレットの瞳を持つ、細マッチョ。
身体を鍛え、知性に溢れたその姿は、正にヘリオトロープの花言葉が合っている。
要するに、非のうちどころないイケメンである。
ブラコンですが、なにか。
言っておくが、私も兄と同じくダークバイオレットの瞳を持っている。
しかし、あの美しい色彩のお髪は彼だけだ。
覚醒遺伝というやつらしい。
私は、母に似たのか、普通の茶髪だ。
ちなみに父は銀髪。兄は父に似たらしい。
あれだけイケメンの兄がいれば、さぞ美しい妹だろうと期待するな。
私は普通だ。平凡だ。
何故か、東洋の血なんてないはずなのに、真知の顔に似ているとさえ思ってしまう。
瞳の色が黒かったら、真知だ。
周りがかわいいかわいいと言うがままに育ち、真知の記憶すらなかったら、私はなんて勘違い令嬢になっていたかと思うと、とてつもなく怖くなる。
こんなに平凡なのに、私って可愛いでしょう。と自信満々に歩くのだ。
こわい。いたい。むり。
想像しただけで痛々しいぞ、私。
そんなときも、真知の記憶があって良かったと思う。
前世の記憶なんて、ない方がいいに決まっているのに。
(それでも、わたしは)
真知、をなかったことにはしたくないのだ。
「ジェイス兄様に、協力を仰ごうかな」
今は城に出向き、次期侯爵として仕事をしている年の離れた兄。
そして、もう一人。
協力者が必要だ。
(本当は貸しを作りたくはないのだけど、)
面倒だからな、あの人は。
嘆息しつつ、しかし彼が協力しないときっと上手く事は運ばない。
「仕方ない、今度はどんな要望だろう」
呟いて、いつも嫌がらせに近いスキンシップをしてくる男を思い浮かべ、げんなりしつつ腹を括ることにした。
マティ「ジェイス兄様、次のお休み、お暇な時間があれば一緒にお茶はいかがですか?」
ジェイ「私の可愛いマティからのお誘いに、首を振ったらこの家に帰れなくなってしまうね」
マティ「そ、そんな。無理しないでくださいね」
ジェイ「可愛いマティからのせっかくのお誘いだ。絶対に帰ってくるよ」
マティ「…あの、可愛いって言わないでくださいまし」
ジェイ「何故だい?ああ、そろそろ可愛いは卒業かい?ならば、美しい妖精のようなマティ」
マティ「悪化!悪化してます!前のままでいいですぅぅう!」
ジェイ「ふふふ。可愛いなぁ」




