聖夜の消失、あるいは夢の代替
クリスマス・イブ。タナハシカメラは、おもちゃを求める親たちの怒号と悲鳴が飛び交う、戦場のような大混乱に陥っていました。超人気ゲーム機「ネオ・ステーション6」が完売。長谷川店長は、空っぽの棚の前で膝をつき、真っ白に燃え尽きていました。
其の一:夢の全損
「お願い! 今日中に手に入らないと、あの子のクリスマスが台無しなの!」
泣きつく母親を前に、田所は音もなく現れ、在庫管理端末を睨みつけました。
「(……いけない。このタナハシカメラという夢の供給システムにおいて、子供たちの『期待』という名の資産が完全に**ロスト(紛失)**している。在庫ゼロという名のバグが、地域社会の幸福度を全損させようとしている。私は今すぐ、この欠損を強引にホールド(確保)しなければならない)」
其の二:代わりの品を「目下、構築中」
「お客様、ご安心ください。本物のゲーム機は現在、銀河系の彼方へロスト中ですが、私の誠実さが**『それと同じ価値を持つ資産』を、ただいま目下、構築中**でございます」
田所はそう言うと、バックヤードから「高機能な電卓」「デジタルフォトフレーム」、そして「多機能炊飯器」をリヤカーに積み込み、お客様の前に並べました。
「お兄さん、これ何? 私はゲーム機が欲しいんだけど……」
「お客様、静粛に。ゲームの本質とは『計算』と『映像』、そして『熱意』です。この電卓でスコアを登記し、フォトフレームで空想を映し、炊飯器の保温機能でユーザーの熱狂をホールドする。これこそが、私が提唱する新型ゲーム体験**『タドコロ・ステーション』**です。今なら私のサイン入り保証書を付帯します」
「ただの家電の寄せ集めじゃない!! 息子が泣いちゃうわよ!!」
其 三:空想の「強制ホールド」
田所は納得しないお客様を前に、自らマウスを握り、驚異的な速さで電卓を叩き始めました。
「……ご覧ください。今、私の脳内では最新のアクションゲームが秒間60フレームで描写されています。現在、主人公が敵の城に侵入中ですが、計算結果に0.1秒の遅延もありません。お客様も、このフォトフレームの黒い画面をじっと見つめ、私の電卓の音をBGMとして同期してください。ほら、夢のグラフィックが目下、ロード中でございます」
「怖いよ! この店員さん、何もない空間を売ろうとしてるわ!!」
其 四:貴島の「物理的強制終了」
「虚無を売るんじゃねえよバカ野郎!!」
絶叫と共に、貴島のフライングクロスチョップが田所の首筋に食い込みました。
「お客様、本当にすみません! こいつ、連日の残業で脳内の在庫が全損してるんです! ゲーム機は明日、他店から必死にホールドしてきますから、今日はこの『お詫びの高級チョコ』で勘弁してください!」
「貴島さん……。チョコという名の糖分では、彼らの『遊びへの渇き』を管理できません。私はただ、ハードウェアに依存しない純粋な『夢の登記』を――」
「お前の夢を今すぐ永久にデリート(消去)してやろうか!!」
今回のリザルト:店舗の信用および子供の期待資産の全損
結局、田所は「炊飯器をゲーム機だと言い張った不審者」としてサンタ業界(PTA)のブラックリストに登記され、長谷川店長は「お前にクリスマスを名乗る資格はない」と、田所を巨大なクリスマスツリーの飾りにホールド(拘束)しました。
「長谷川店長……。再発防止のために、全人類の脳に直接ゲームデータを流し込み、物理的な在庫という概念をロストさせる『全人類データ化計画』を――」
「お前を今すぐ北極に発送してやろうか!!」




