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文化祭当日。
朝から学校は活気に満ちていた。
廊下を歩けば、クラスの出し物の呼び込みやポスターが並び、生徒たちの笑い声があちこちから響く。 体育館ではダンスや歌のパフォーマンスが繰り広げられ、観客たちは歓声を上げていた。
「さっそく回るか?」
佐藤が腕を組みながら俺に問いかける。
「まあ、適当に見てみるか。」
九条はすでにどこかへ行こうとしていた。
「悪い、俺は立夏とちょっと回るわ。」
「さすがリア充。」
佐藤がニヤつきながら茶化す。
「お前らも楽しめよ。」
九条は軽く手を振って、長沢立夏と合流していった。
俺と佐藤はまず模擬店を見て回る。
「なあ、屋台系はやっぱ食べないとだろ。」
教室ではクレープ、タピオカ、焼きそばなどが売られていて、買いに来た生徒たちで賑わっていた。
試しにクレープを買うと、意外にも味が良かった。
「誰が作ったんだ?」
「たぶん白石奈々たちの班だな。」
佐藤が言う。
「割と本格的だな。」
そんな会話をしながら校庭へ出ると、石井たちが賑やかに騒いでいた。
「おーい、赤瀬!お前もこっち来いよ!」
「何をやってる?」
「バスケ部が3on3の即席試合やってる。勝ったらジュース一本な!」
「……面白そうだな。」
試合は盛り上がり、結局俺たちはバスケに巻き込まれた。
こうして、文化祭の1日目は活気に満ちたまま終わった。
朝から校内は活気に満ちていた。文化祭の2日目は、部活動とクラス企画の見せ場の日だ。
体育館、特設会場、各教室——いたるところで展示やパフォーマンスが行われている。
「さて、今日は部活の企画が多いからな。」
九条が腕を組みながら言った。
「お前、立夏と回るんじゃないのか?」
佐藤がニヤつきながら聞くと、九条は肩をすくめる。
「いや、昼前にちょっと合流するだけだ。」
「さすがリア充。」
俺たちはまず体育館へ向かった。剣道部の試合やバスケットボールのエキシビジョンマッチが行われている。 目に入った新聞部の掲示では「鏡に映らないヤンキー!映らないのはなぜ?」との、掲示が。世にも奇妙なことはあるんだなと視線を戻す。
剣道部の試合
「おーい赤瀬、お前もやれ!」
佐藤が笑いながら言う。
「やらない。」
「やれば確実に勝つのに……」
九条がぼそっと呟く。
俺は竹刀を持つ選手たちの動きを見つめる。
流れるような剣さばき、鋭い掛け声——まるで戦場のような緊張感があった。
「こういうのは、競技として見るのが面白い。」
九条は俺の横で頷く。
バスケットボール
石井がコートの中央に立っていた。
「おい赤瀬、バスケもできるんだろ?」
九条が俺に振る。
「興味はない。」
「まあまあ、見ていこうぜ。」
佐藤はスナックを食べながら観戦モードに入る。
試合は白熱していた。速いパス回し、鋭いドリブル、鮮やかなシュート——体育館の観客が歓声を上げる。
「いいプレーだな。」
「お前がやったらもっとヤバいことになりそうだけどな。」
佐藤は笑う。
美術部の展示
午後は校舎に戻り、美術部の展示を見ることになった。
「こういうのは落ち着いてていいよな。」
九条が作品を見ながら言う。
「技術の積み重ねを感じるな。」
竹中も静かに作品を眺めていた。
「表現力というのは、数式にはない要素だな。」
「委員長が言うと、なんか納得させられるな。」
佐藤が笑う。
最終日。文化祭はフィナーレに向かって加速していく。
模擬店も最後の営業。ダンスのフィナーレ。校庭では自由参加のゲーム大会が開かれている。
「よし、今日は食い倒れるぞ!」
佐藤は意気込んでいた。
「お前、昨日もそう言ってたよな?」
九条が苦笑する。
俺たちは模擬店を巡りながら、最後の雰囲気を楽しんでいた。
白石奈々たちが店の前で呼び込みをしていた。
「赤瀬くん、クレープ食べていかない?」
「……買っていくか。」
クレープを受け取りながら、俺は周囲を見渡す。
文化祭が終わる——その空気が徐々に広がっていた。
体育館ではダンスのフィナーレが始まる。
「最後くらい見ていこうぜ。」
佐藤が言い、俺たちは会場へ向かった。
ステージの上ではダンサーたちが華やかに動き、音楽に乗せて演技を見せる。
歓声と拍手が響き渡る。その雷轟のような爆音をきいて脳裏にチリと電気が走るのを感じた。
「この盛り上がりで締めるのは悪くないな。」
俺はそう呟いた。
そして——文化祭は幕を閉じる。