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文化祭が終わり、余韻が残る夕方。

生徒たちは片付けに追われながら、徐々に日常へ戻っていく。

しかし俺たちは、これで終わりではない。


打ち上げが待っている。


場所は佐藤湊の家——大きな庭でのBBQ

パーティー。


広々としたスペースにはグリルがいくつも設置され、肉や野菜の香ばしい匂いが漂っていた。

準備を手伝った数名が炭を起こしながら、歓談している。


「さて、文化祭も終わったし、ガッツリ食って楽しむか!」

佐藤が張り切った声をあげる。


「お前、一番楽しみにしてただろ。」

九条が苦笑する。



「当然だろ?文化祭って本番もいいけど、終わった後が一番楽しいんだよ!」


彼の言葉に、俺は少し頷く。

確かに、この時間の空気はどこか特別だった。



火が灯る庭——集う仲間たち


グリルの前では、竹中六助が仕切るように指示を出していた。


「肉の焼き加減には気をつけろ。焦がすのはもったいない。」


「委員長、もっと楽しめよ!」

斎藤が笑いながら肩を叩く。



「この場を楽しむことと、料理の完成度は両立できる。」

竹中は真面目な顔で応じる。


「ああ、さすがの返し。」

佐藤がにやりとしながら肉をひっくり返す。



少し離れたテーブルでは、九条が立夏と並んでいた。

彼女は飲み物を並べながら話していた。


「ほんとにいい文化祭だったね。そうだ、今度うちの文化祭にも来てよ。」


「うん。行くよ。」

九条は自然体で応じる。


俺は遠目に二人を眺めながら、皿に盛られた肉を受け取る。

ふと、視線を感じて振り向くと——そこには山田和夫の姿があった。




「らいと!」


佐藤が笑顔で俺を呼んだ。

「あの人が、親父さんか?外国人みたいにハンサムでかっこいいな。親父さんと仲が深まるといいな!」


俺は一瞬、視線を山田に向ける。

彼は穏やかに話しながら、他の保護者たちと打ち解けていた。



俺は静かに息を吐く。


「……そうだな。」


親という存在は、俺にとって曖昧なものでしかなかった。

何を話せばいいのか——どう接すればいいのか。


しかし、湊の言葉がどこか温かく感じられた。


「とりあえず食え!肉は最高だぞ!」


俺は黙って、皿に盛られた肉を受け取る。


この時間が、俺にとって意味を持つなら——それは悪くないかもしれない。



夜は更けて、言葉が紡がれる


話題は絶えず、笑い声が庭に響いている。

竹中は文化祭の反省点を述べながらも、談笑を楽しんでいた。

九条は立夏と静かに語り合い、斎藤たちはゲームを始めて盛り上がる。


そして——山田和夫は、俺のそばに座った。


「楽しんでるか?」


俺は少し考えてから答える。


「……ああ。」


彼は静かに笑い、グラスを手に取る。

「雷翔、お前は……今の生活をどう感じている?」


俺はしばらく言葉を選ぶ。


「分からない。」


「そうか……、誘ってくれてありがとうな。」


それだけを言い、彼は夜空を見上げる。


そして、文化祭の最後を飾る打ち上げの夜は、ただ賑やかに過ぎていった。



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