黒禍朧
僕は、いじめられっ子だ。
中学三年。学校では常に標的。理由なんてない。ただ弱いから。
家も貧乏だ。クソ親父は借金を抱えたまま逃げた。母さんは朝から晩まで働いている。休む暇なんてない。そんな母さんを見ていると、胸が痛む。僕には、何もできない。
だから、僕はこの世界を憎んでいる。
河川敷に呼び出された。今日は何回殴られるんだろうか。もう慣れた。痛みに耐える術は知っている。腹筋を鍛え、衝撃を和らげる。ただ、それだけ。
一発、二発。体が揺れる。けれど、僕は無抵抗だ。息を詰め、終わるのを待つ。
そのときだった。
大柄な男が現れた。日本人ではないような顔つきだった。 髪は白銀だった。目も少し色が薄かった。(ヘーゼルアイ)
眼帯をしている。顔には深い傷。彼は僕を殴る連中を無言で見つめ、ただ一言、「去れ」と言った。
その声は重かった。命令というより、裁きのように響いた。連中は戸惑いながら立ち去り、僕はただその男を見上げていた。
「お前は、この世界を憎んでいるか?」
静かな声だった。でも、その言葉は心の奥深くに食い込んできた。
「それとも、自分の非力さを憎むか?」
僕は答えられなかった。彼は自分の話を語った。
若い頃、彼は何度も非力さに打ちのめされ、この世界の厳しさに傷つけられてきた。それでも、彼は世界を変えようと決意した。
僕はただ聞いていた。
やがて、僕は口を開いた。
「僕は……世界を憎んでる。自分の非力さも、憎んでる。」
そう言葉にしたとき、何かが崩れた気がした。
僕は彼に全てを話した。いじめ、家庭、父の失踪、母の苦しみ。
彼は静かに聞き終え、言った。
「大変だったな。」
僕はその言葉に、苛立ちを覚えた。何が分かるんだよ。そう思った。
だけど、次の言葉で世界が揺れた。
「その借金、俺が全部払ってやる。」
何を言ってるんだ、こいつは。
母さんを助けたかった。ずっと、助けたかった。
だけど、それはただの願いでしかなかった。
「俺が死んだら、俺の力を引き継いでくれ。」
また、分からない話をする。後継人?僕が?
彼は山田和夫。
僕は彼の物語を聞いた。壮絶な生き様だった。僕にはできない。到底、できるわけがない。
「君になら託せる。」
低く、確信に満ちた声だった。 そしてこう言い放った。
「この山田が、いや、???が君を認める。」
僕の物語は、ここから始まった。




