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大阪はすでに異世界  作者: タニコロ
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異世界人の探知魔法

新幹線の中でシャリアは怒って大きな声を出した。

「なんやねん、この女。はよ言えや」

「どしたん、シャリア。完全に大阪弁やで」

「聞いて、ウエオ。こいつ、魔法が来るってわかっててんて」

「えっ、何で」

「こっちで言う探知機みたいな力を持ってるねんて。ちょっとした魔法や」

「えっ探知機魔法?」

「そうや。エルフ独特の魔法や、隠れるために魔法使える人を見つけ出すんやって」

「え、ほなら本町の爆発も爆発前から分かってたってこと」

「そうや。オグリがおった時もや」

「マンダイ。何でゆうてくれへんの」

マンダイがうつ向きながら答えた。

「だって、聞かれなかったから」

「しゃーないわ。これがエルフや」

シャリアがジュースのストローを振り回しながら言うと、

寝ていた誠がのそっと起きた。

「あっ、店、もう売るから」

と言ってすぐに寝た。

おとといからほとんど寝てなかったのだ。

「しゃーない。寝さしといたろ。ほれ、上着」

といって、愛は上着を誠にかけた。

「やっぱりお姉ちゃんやね」

「ちゃうわ。双子や。書類上だけや」

と、恥ずかしがる愛。

ちなみに森山家にはもう一人、兄弟がいるのだ。

しかも愛と誠と同級生の姉が。姉は4月4日生まれで双子が3月30日生まれという年子なのである。

新幹線が大阪に着くのが23時20分。帰りの電車がちょっと面倒なので愛は美々に迎えに来るように電話していた。美々はさっき述べた双子の姉だ。京都を過ぎ、阪急と並走する線路を走る。マンダイが言った。

「大阪の真ん中あたりにいるわ」

「何よ今さら」

シャリアはマンダイの頭をぽんとはたく。軽いツッコミだ。

「痛っ。何するの」

と怒りだすマンダイ。

「何で今ので怒るん? ほとんど触っただけじゃない。エルフはあかんわ。お笑いできへんわ」

シャリアがブツブツ怒っているうちに新大阪に着いた。

「ごめん、美々」

「しゃあないわ。無事でよかったわ。どうするん。一応、ウチ、掃除しといたで」

「ほな、ウチへ」

美々の車に四人が乗った。外車なので余裕の広さである。美々も会社をやっているのだ。

美々が

「誠、話進めといたで。3店舗と権利料で11億や。店増やしたいねんて。従業員もそのまま社員にするって」

「わ、11億。シャリア、そんでいい」

「私はいくらでもいいよ。不自由なく贅沢に暮らせたら」

「贅沢が一番難しいんや。あんたも府警で働いてみ」

と軽くわめく愛。

ちなみに美々と愛は亡くなった叔母さんのマンションをそのまま引き継いでいる。心斎橋のタワーマンションだ。4LDKというメゾネットの広いマンションだ。そこに独身女性二人が暮らしているのである。

「ほなら、明日、マンダイと魔法が使える犯人探して、明後日、お店の話するわ。美々、車貸して」

と誠。

「ぶつけたら、頭坊主にするからな」

「ひええ」

以前、愛がぶつけた時があって、愛はそれ以来、ショートカットになっている。年齢はほぼ一緒でも美々は怖い姉なのだ。

心斎橋のマンションに着く。心斎橋とは言うものの地下鉄の駅なら長堀橋に近いタワーマンションだ。

「ねぇ、愛様。私、ここに住みたい」

愛に甘え始めるシャリア。

「えーどうしようかなー。美々姉、どう思う」

「シャリアちゃんならいいんじゃない。でたらめ社長秘書する?」

「なんだ、そのでたらめ秘書って」

と誠。

「いやね、いなくてもいいんだけど、ビジネス的にいた方がなんとなくごまかせるのよ。大手なら特に。あ、秘書いるんだ。忙しそうに動いてるって」

と美々。

「ふーん、そうなんだ。そういう風に見せて儲かるんだ。警察とは違うんだ」

と嘆く愛。この3姉弟はビジュアル的にはやや優れているが30半ばでも誰も結婚の気配がない親不孝姉弟だ。ただし、長女はビジネスソフトやゲームアプリを当てた億万長者である。

「でだ、マンダイ。明日、その魔法で敵がどこにいるか探ってくれ」

と誠がシャリアの頭を押さえながら言った。

「はい」

とマンダイ。

「本当かなぁ。あっ、私秘書になるわよ。明日、大丸でスーツ買う」

とシャリアが身を乗り出して言った。

「この物欲野郎め」

「ひとりで行けるから大丈夫だよ。ここの住所メモっといて。明日は森山明日香になる」

シャリアは2つの名前で区役所に登録しているのだ。森山の名前を使う時は森山家の末っ子になる。


翌日、誠とマンダイは車で心斎橋のマンションを出た。

「この辺、一方通行が多いねん。鬱陶しいな」

「一方通行って何?」

「そっからか」

「すみません」

「で、阿倍野の方向やねんな」

「はい。あっち側です。細かいところまでわかります。うん、あっちの方です」

マンダイが検索した犯人は阿倍野の方向にいるらしい。天王寺を越えて松虫通を越えて

「え、ウチ向かってるの」

「いえ、誠の家はよくわからないです。あっ、こっち」

ポワールという有名なケーキ屋さんを越えて万代池の方に行った。

「こっち、こっち。あそこです」

とマンダイは池に向かって立つやや古い小さな家を指さした。

「えっ、ここ。ほな、勇気出していくぞ」

と、誠は玄関のベルを押した。

「はい、はい」

と20代後半の美しい女性が出てくる。

「あっ、この人」

とマンダイが言った。

「すみません、あっちの方ですか」

「うぇ、ひっ」

女性は言葉に詰まる。

「やっぱり、向こうの人でしょう」

「うっ、はっ」

こういう時、シャリアなら助けになる言葉を発してくれるが、マンダイはだまったままだ。シャリアが怒る理由が誠にもわかった。

「すみません、あなたが爆発させたんですよね、車」

「はい、え、うぐ、ぐす」

女性は泣き始めた。

「すみません、一人だけ殺すつもりだったのに。4人も殺すなんて。すみません、すみません」

「ちょっと、公園のベンチに行って話を聞きましょう」

誠は女性が落ち着くのを待って公園で話を聞くことにした。

「私はポン・セーと言います。年齢は28です。実は妹たちが男に子供を作られて、そのまま逃げてしまわれました。二人の妹は泣くばかりで、私に男を殺ってと頼んできたのです。私は男を殺そうと探しまくった結果、こっちに来てしまったのです。でも、一昨日、男を発見しました。ロンド、ロンドだったのです」

「えっ、ロンチがそんなことしてたん?」

「私は自転車で必死に走って、予測魔法で来る場所を突き止めました。そして爆発させたんです。でも、彼だけ爆発させるつもりが、こちらの車のことあまり知らなくて、あんな爆発になってしまいました」

「まぁ、車にはエンジンもあるし、それを動かすのはガソリンだし。爆発するわ。で、あそこの家は?」

「偶然、花屋の女の人と仲良くなって。一緒にお酒を飲まされて、なんとなく私の話をしたら、ええやん、ここに住んどきって」

「うわ。また良い人。オグリもポンさんも日本人って優しすぎるわ。あっ僕もか」

「すみません。すみません。私、死罪ですよね」

「もうしないんでしょ。ロンチも悪かったし。後は不運ってことで。うーん、とりあえず、粉浜の花屋さん教えて。あ、マンダイ、ここが名前と同じの万代池やで。よく見とき」

「あまり、水が美しくないですね」

「また、ストレートに。素直やな」

誠はポンを車の乗せ、粉浜商店街に向かった。商店街の真ん中あたりにポンを受け入れた女性の花屋があるらしい。

「あれ、粉浜の花屋と言えば三原?」

ポンが小走りで花屋に向かっていく。

「桂子さーん、すみません」

「あっやっぱり三原や」

「森山君やん、どうしたん」

森山と三原は小学校から中学までの同級生で、中学時代は姉たちと仲が良く、家にも遊びに来ていた。姉たちとはたまにあってるみたいだ。

「なぁ、三原、ウチも異世界人の面倒見てるねん」

「えっ、やっぱりあれ、森山君やったん」

「うん、ポンさんのやったことわかる」

「ううん、知らん。一昨日からおかしかったけど、異世界人見ておかしなってると思ってた」

誠はことのいきさつを三原に話した。ついでに姉二人は好き勝手やってると言うことも。

「あの子ら心斎橋のタワーマンション住んでるんやろ。この間、心斎橋でお茶した時、歩いて帰ったわ。セレブ姉妹って言ったら笑っとったわ。でも、美々は本当のセレブやもんな。一緒に安い喫茶店行かれへんもん」

「うんにゃ、まだ、安いカップ麺食べてる庶民やで。ほなポンさん借りるわ」

「わかった。ふたりによろしく。晩御飯、よばれといで」

と三原は手を振ってポンを見送った。


誠は車の中で美々に電話する。美々は大阪城ビジネスパークにある自分の会社の本社だ。自社ビルでテナントで中部階に大手電機会社を入れている。

「じゃぁ今から行くわ。5時過ぎたら、愛も来れるんやな。府警、そこから近いし」

「誠さん、三原さんと知り合いだったんですか」

「うん、学校でずっと一緒」

「ということは、同い年ですか。誠さんも28ですか」

「いや、34」

「三原さんは28って言ってましたよ」

「また、あいつは」

「えっ、ウソなんですか」

「うん、ちょっとごまかしてる」

「なんだ、同い年じゃなかったんだ」

「完全にだまされてるな」

「でも、一番の年上はマンダイだ」

「えっ、私よりも若そうなのに年上なの」

「よし、マンダイ、言ったれ」

「245」

「えっ、エルフなの? なんだそうなのか」

とガッカリするポン。どうやらエルフは嫌われ種族らしい。付きあいにくそうだもんなと、誠は心の中でつぶやいた。


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